【県産コットン】遊休地活用し普及へ(4月10日)

 綿花を栽培し、コットン製品を生み出す動きが県内で広がっている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、津波による塩害で稲作ができなくなった農地に植えたり、風評にさらされた野菜に替わって生産されたりしてきた。新たな県産特産物として産地化を進めれば、遊休農地の解消にもつながる。

 生産や商品化、栽培の体験ツアーなどを通じて、交流人口の拡大を後押しする団体が県内で活動している。福島市の「コットンプロジェクト福島」は震災前から市内で栽培し、震災発生後は県北地区の有機農家らと共に規模を広げた。現在の作付面積は会津地区を含め計0.4ヘクタールほどで、県産コットンを10%使用した靴下などを店舗やイベント、通販で販売している。

 いわき市の「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」は震災発生の翌年、風評被害に苦しむ農家を支援しようと発足した。現在の作付面積は1.9ヘクタールに及ぶ。2023(令和5)年度は300キロ以上を収穫した。市内の小中高生326人が学校の花壇やプランターで栽培を体験した。研修や体験で地域外から319人を受け入れるなど熱心に活動している。

 2022年度の県内の遊休農地は8541ヘクタールで全国で最も多い。時間の経過に比例して雑草が増え、再生困難となるため早急な対策が必要だ。

 鳥取県境港市は、伝統の和綿「伯州(はくしゅう)綿」の復活に15年ほど前から取り組み、遊休農地の活用に成果を上げている。定年退職後の世代を中心にした有志が栽培、収穫した綿を市の外郭団体が買い取って加工、販売している。市は新生児に「おくるみ」を贈り、受け取った親子が栽培体験するといった普及策にも力を注いでいる。

 綿花は、かつて国内の主要作物だった。明治時代以降は安価な外国産に押されて衰退した。近年は農薬の使用を抑え、環境や人に優しい国産綿が改めて注目されている。

 ただ、実績の少なさもあり、野菜のような有機認証や支援制度が整っていない。品質を証明する基準が設定されれば、行政として認証取得を支援しやすくなり、普及を後押しできるのではないか。本県ならではの仕組みを構築して浸透させ、全国に発信するよう提案したい。(三神尚子)

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