日本橋「ミデッテ」開設10年、売上額最高へ 知名度向上が課題

 東京の日本橋にある県のアンテナショップ、日本橋ふくしま館「ミデッテ」は12日、開設から10年の節目を迎える。開設以来の来館者は2022年に延べ300万人を突破。年間売上額は3億円超で推移しており、23年度は新型コロナウイルス禍前を超え、過去最高となる見通しだ。東京電力福島第1原発事故後の風評払拭に向け情報発信拠点としての期待は高まる一方、首都圏でのさらなる知名度向上は課題。県は新たな福島ファン獲得に向け、今後もPRに力を入れる考えだ。

 ミデッテは東日本大震災と原発事故から3年後の2014年、江戸川区のスーパー内に設置していたアンテナショップ「ふくしま市場」に代わる形で、各都道府県のアンテナショップが集う日本橋にオープンした。原発事故の根強い風評被害が残る中、首都圏への情報発信力を高めようと県と県商工会連合会が協力して整備し、県産品販売や観光情報などを発信してきた。

 年間来館者数の推移は【グラフ】の通り。初年度から19年度までは年間30万人台後半が続いてきたが、新型コロナウイルスの影響で延べ55日間休業した20年度は29万人に落ち込んだ。その後は回復傾向にあり、年間売上額は都道府県のアンテナショップでも上位10位以内の水準を維持する。

 店舗の特徴は品ぞろえの豊富さだ。ふくしま市場の約4倍に広がった売り場には本県を代表する菓子や豊富な日本酒、水産加工品のほか、赤べこなどの工芸品計約2500点が並ぶ。「ままどおる」が不動の人気ナンバーワンで会津の馬刺し、「家伝ゆべし」「薄皮饅頭(まんじゅう)」などが常に売り上げ上位に入るという。

 本県のイメージ向上にも大きな役割を果たしてきた。金賞受賞銘柄数が9年連続日本一を達成した全国新酒鑑評会後には、金賞受賞蔵元の日本酒を集め、県産酒の魅力を首都圏にアピール。原発からの処理水海洋放出開始以降は、県産水産物を応援する各国の大使らが訪れるなど、本県の食の安全も伝えている。

 ただ、佐々木貴史館長(45)は「(首都圏では)今もミデッテの存在を知らないという声がある」と課題を語る。首都圏での存在感や知名度をさらに高めるため、都内各地で開かれるイベントへの積極的な出店のほか、テレビで紹介された商品を迅速に入荷するなど品ぞろえの工夫で来館者を増やす取り組みを進める。さらなる発信力強化に向け、佐々木館長は「知らない人が足を運ぶきっかけをつくりたい」と話す。

 震災と原発事故から13年を経て、ミデッテには風評払拭だけでなく観光や移住・定住など、さまざまな本県の魅力発信も期待されている。県は「ミデッテは情報発信の最前線基地。今後もPRに努め、本県の交流人口拡大につなげたい」(県産品振興戦略課)としている。

 12日からフェア

 東京の日本橋ふくしま館「ミデッテ」は12~14日、「10周年フェア」を開く。本県人気店の名物や県産の野菜、果物などを販売する。

 初日は岩井屋(柳津町)のあわまんじゅう、やま鳶(とんび)(いわき市)の「祝桜の(しょう)油(ゆ)らぁ麺」などを限定販売する。ミデッテと日本橋のパン店「ボンクール」が県産イチゴを使って共同開発したロールケーキも特別販売する。

 お酒カウンターでは期間中、辰泉酒造(会津若松市)、宮泉銘醸(同)、花泉酒造(南会津町)による特別飲み比べセットを楽しむことができる。

 営業時間は午前10時半~午後7時。初日は午前10時15分からオープニングセレモニーを行い、来場者にカップ酒を贈る。問い合わせはミデッテ(電話03.6262.3977)へ。

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