ニラが「スタミナ食」といわれる理由 生で食べてもいい? 栄養士が解説

特有の匂いがあるニラ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

通年出回っているニラですが、とくに春先のニラは「春ニラ」と呼ばれ、やわらかくておいしいといわれています。加熱して食べることが多いですが、ニラは生でも食べられるのでしょうか。また、栄養豊富であるがゆえに、食べすぎに注意する必要も。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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ニラにはスタミナがつく栄養たっぷり

古くから、ニラは滋養強壮効果が注目され、漢方薬など薬草として用いられてきました。食用となったのは、明治時代になってからといわれていますが、今のようにお店で買うものではなく、各家庭で栽培するのが主だったようです。

ニラの代表的な栄養成分に、アリシン(硫化アリル)が挙げられます。ニンニクやタマネギにも含まれる特有の匂いの元で、疲労回復や高い抗酸化作用などが期待できる成分です。スタミナラーメンやスタミナ定食など、ニラに「スタミナ食」のイメージがあるのは、このアリシンの存在が大きいでしょう。

また、必要時に体内でビタミンAに変換されるβカロテンも多く、含有量は野菜のなかでトップクラスです。目の健康をはじめ皮膚や粘膜を強くするのに役立ちます。ほかにも、貧血予防などが期待される葉酸、余分なナトリウムや水分を体外へ排出するカリウム、強力な抗酸化作用があるビタミンE、腸内を整える食物繊維など、健やかな体作りに欠かせない栄養が豊富に含まれています。

生食のメリットや適量とは

ニラは独特の風味をいかし、餃子や春巻きの具材、炒め物、チヂミ、麺類のトッピングなど加熱して食べることが一般的です。しかし、調理方法によっては栄養が流出してしまいます。たとえば、疲労回復に役立つアリシンは熱に弱いため、加熱すると一部を損失することに。また、煮たりゆでたりすると、ビタミン類など水溶性の栄養成分が流出します。

もし、前述の栄養成分をできるだけ逃さずに摂りたい場合は、ニラは生でも食べられるので生食が良いでしょう。とくに春の時期のニラはやわらかいので、生でも食べやすく、シャキシャキとした食感が楽しめます。

ただし、食べすぎには注意が必要です。ニラはスタミナがつくパワフルな栄養素を持つ野菜ではありますが、アリシンや不溶性食物繊維を一度に大量摂取すると便秘の原因になったり、消化不良を起こしたりする可能性があります。適量を心がけましょう。

目安としては、1日に1束(100グラム)程度まで。一食でまとめて食べるというよりは、ニラをサラダに加えたり、タレに混ぜたり、薬味として生で食べるのがおすすめです。色の淡いそのほかの野菜を加えて、バランス良く食べましょう。

ニラ特有の匂いを軽減するコツとは

ニラは強い匂いを持つことから「香味野菜」とも言われます。生で食べるときは、とくにこの特有の匂いが気になることがあるかもしれません。細かく切ると切り口から匂いが発生しやすくなるため、軽減したいときは、細かく刻むよりもざく切りがおすすめ。また、葉先を使うと匂いが強くないので食べやすいですよ。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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