空から見るニッポン。ただいま、和歌山県串本町の上空です!

本州最南端に位置する串本町は、清冽な川と彩り豊かな海が自慢。

熊野の山々から熊野灘に注ぐ古座川は、上流側はもちろんその河口まで透明度が高く、カヤッカーにも人気だ。

海にはサンゴ礁があり、世界的にも保護すべき貴重な浅い海域としてラムサール条約にも登録されている。

本州最南端の海上に浮かぶ無人島

「最○端」といわれるような場所にはいつも興味をひかれる。和歌山県串本町は本州最南端。友人がそこでカヤックツアーをやるというので、空撮に行くことにした。

気象情報などで名前はよく聞く串本町だが、何があるのかは行くまでまったく知らなかった。カヤックツアーは古座川河口付近から出発し海上の九龍島(くろしま)へと向かう。それに合わせて河川敷よりモーターパラグライダーで離陸し追いかけて空撮をする。

古座川河口からすぐの沖にある九龍島には、小さい島ながらも亜熱帯性植物が生い茂る。

ひととおりカヤックツアーの撮影を押さえたあと、自分の作品撮りをするために高度を上げた。南西方向を見ると串本町中心部方面が見渡せた。観光地として有名な橋杭岩の奇岩群も見える。

古座川河口から1kmほど沖合には、九龍島と鯛島が浮かんでいる。海の上で万が一エンジンが停止して着水してしまうと危険なため、十分な高度を保ったまま海を渡る。撮影に集中しすぎると気づかないうちに高度が下がったり風に流されたりするため、パラグライダーのコントロールにも意識を注意しながら空撮を行う。

九龍島に近づくと、万が一のときは着陸できそうな場所も見えたので、ちょっと気が楽になり、撮影に集中する余裕ができた。

無人島である九龍島と鯛島には、上空から見る限り人工物が見当たらない。普段、人の存在を感じさせない写真を撮るのは意外と難しいため、島全体のどこをどう撮っても人工物が写らないことがうれしくて、島上空をぐるぐる回りながら撮影した。友人のカヤックツアーのこともすっかり忘れて空撮に夢中になった。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2023年7月号より

山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。

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