だから死んだ! 優秀さが仇になるとは…知りすぎたせいで散っていった漫画やアニメのキャラたち

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「知らぬが仏」ということわざは漫画の世界にも通ずる。物語の根底を揺るがすような重要な秘密を知ったキャラが、敵の手で消されてしまう展開は定番だ。しかも、そのキャラが誰より鋭いからこそいち早く真相に気づいてしまった……なんてことも珍しくない。優秀さが仇となり退場したキャラの気持ちを思うと、なんともやるせない気持ちになってしまう。

今回は、真相に気づいたせいで散ってしまった優秀キャラを紹介しよう。彼らは知りすぎたのだ……。

■生きていればもっと早く物語が終わっていた?『鋼の錬金術師』マース・ヒューズ

まずは、荒川弘氏が手掛ける『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス)に登場するマース・ヒューズを見ていこう。

ヒューズはアメストリス軍に所属する軍人で階級は中佐。気さくな態度と家族大好きな性格で周囲の人望も厚く、頭の回転なら軍でも有数の頭脳派として知られた男だ。

そんな彼がずば抜けた優秀さを発揮したのは、コミックス第4巻のことだった。ある新聞記事でリオールの暴動を知ったヒューズはある事実に気づき、即座に壮大な陰謀にたどり着く。それは彼や大事な家族が生きるアメストリス国にはびこる黒幕に迫るものだったのだ。

だが、それが命取りだった。秘密を知ってしまったヒューズは黒幕が差し向けたホムンクルスに強襲される。なんとか戦友のロイ・マスタング大佐に真実を伝えようと電話ボックスにたどり着くも、最愛の妻に変装したホムンクルスの凶弾に倒れ、そして電話ボックスのなかでひとり殉職する最期を迎えてしまうのだ。

ちなみにヒューズがこのとき気づいた事実は『ハガレン』の核心そのものであり、作中で明かされるのは物語の終盤だ。もしも彼が生きていれば、少なくとも黒幕の目論見は大きく狂ったはず。もしかしたら『ハガレン』はもっと早く終わっていたかもしれない。

■不幸にも仇と出会ったせいで…『DEATH NOTE』南空ナオミ

次は『週刊少年ジャンプ』(集英社)におけるサスペンス漫画の金字塔『DEATH NOTE』(原作:大場つぐみ氏、作画:小畑健氏)から、元FBI捜査官の女傑・南空ナオミだ。
彼女は婚約者のレイ・ペンバーがキラに殺されたことをきっかけに、事件にかかわっていく。

ナオミは過去にキラが関与した事件を調べるなか、「キラは心臓麻痺以外でも人を殺せる」という答えを導きだす。これはまさしくデスノートの核心であり、この時点では世界一の探偵・Lですら推理できていない真実だ。元FBI、恐るべし。

ナオミは自分の考えをLに伝えるために警視庁を訪れるのだが、それが良くなかった。なんと、偶然にもキラである夜神月と出会ってしまうのだ。ナオミの危険性を察した月に言葉巧みに本名を聞き出され、デスノートに「遺体が発見されぬよう自殺する」と書かれてしまうナオミ。

デスノートに操られ「何もお話しする事はありません」とだけ言い残し去っていく彼女の背中に、無念を感じた読者は少なくないだろう。

それにしてもあと一歩のところで婚約者の仇である月と遭遇するとは……なんと皮肉な運の“ツキ”である。

■彼らがたどり着いた歴史は明かされるのか? 『ONE PIECE』オハラの考古学者たち

『ONE PIECE』(尾田栄一郎氏)の「エニエス・ロビー編」で語られた、ニコ・ロビンの悲痛すぎる過去エピソードに登場したオハラの考古学者たち。彼らも知ってはいけない真相を知ったがゆえに散っていったキャラといえる。

ロビンの故郷・オハラは“考古学の聖地”と呼ばれる土地であり、優れた考古学者が日夜歴史を研究していた。彼らの探求心は留まるところを知らず、世界政府により禁止されている「歴史の本文(ポーネグリフ)」や「空白の100年」の研究もいとわない。“過去を知りたい……”すべては純粋な気持ちからくるものだった。

だが、世界政府はそんな好奇心すら許さない。オハラの研究を察した政府は海軍とCP9を送り込み、考古学者たちを拘束。さらには島そのものを破壊して研究成果を闇に葬る「バスターコール」をも発動させる。

考古学者たちのリーダー、クローバー博士はせめてもの抵抗として、研究で導きだした仮説「空白の100年と、ある巨大な王国の存在」を語り出すも、途中でピストルに撃たれてしまう。そのまま「バスターコール」は完遂され、考古学者たちは崩壊していくオハラと運命をともにしたのだ。

本編から22年前の出来事だが、彼らが知った真実は『ONE PIECE』の核心に違いない。いつかその真実が作中で明かされ、オハラの考古学者が報われる日はくるのだろうか。

優秀なのはもちろん悪いことではない。誰が悪いかといえば真相に気づいたキャラではなく、それを揉み消すために命を奪った悪役が間違いなく悪いのだ。

不条理によって命を落とした有能キャラは読者の記憶に残りやすく、その死を惜しまれる。「彼らが生きていればどうなっていたか」そんな“もしも”を思わせるほど、彼らの散り際は強い魅力を放っている。

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