BEVにアドバンテージ BMW「iX1 xDrive30 M Sport」

BMWの新型「X1」が今年2月に発売された。1シリーズというとBMWの末っ子的な立ち位置だが、実際は日本の道路にはジャストサイズで、メリハリのあるスタイリングからは“末っ子っぽさ”を感じない。パワートレーンがガソリンとディーゼルMHEV、今回試乗したBEV(電気自動車「iX1 xDrive30 M Sport」)から選べるのは、パワートレーン激動の時代に「マルチパスウェイ(電動化のみに絞らず、輸出先ごとの状況により柔軟に対応する)」を標榜するBMWならではといえる。

iX1を目の前にすれば、誰もが“電気自動車っぽくない”と思うはずだ。大型のキドニーグリルは黒くツヤっとしたパネルで塞がれているが、見た目はICE(インターナル・コンバッション・エンジン=内燃機関)モデルと大差ない。ボンネット先端のBMWマークに青い縁取りがされているので、見識のある人が見れば電動化モデルと分かるのだが、それですら最新のBEVとしては控えめなものといえる。

車名のxDriveとはAWDモデルを指す。フロントとリアにそれぞれ190psを発揮するモーターを搭載しており、システム最高出力は272psとなっている。一方バッテリーの容量は66.5kWで、一充電走行距離は465km。普通充電のほか、CHAdeMO規格の急速充電ポートも用意されているので、サービスエリアなどで追加充電もできる。自宅でバッテリーを満たしておけば、週末のゴルフ旅にもしっかり対応してくれるはずだ。

外観と同じく内装からも電気自動車らしさは感じられない。2枚のモニターを横方向につなげたカーブドディスプレイやアイランドスタイルのセンターコンソール、小さめのシフトレバーもX1と同じ。リアシートは立体的なフロントに比べて幾分平たい雰囲気で、足元スペースはしっかりと確保されている。

見た目“動力源不詳”も、走り出すと非常に静かでBEVならではのアドバンテージが感じられた。モーターの作動音やボディのきしみがないのは当然として、風切り音もほとんど感じられない。路面のアスファルトの粒の荒さだけが微かに感じられる程度だ。しかも大型モデルのようにエアサスペンションに頼っているわけではないのに、乗り心地に突っ張り感がないのもいい。

クラスを超えた上質な走行フィールはICEモデルのX1を確実に凌いでいる。その理由は床下バッテリーによる重心の低下だけでなく、バッテリーを保持するためのケースやフレーム自体がフロアパネルの補強にも効いているからだろう。駆動はAWDだがモニターに映し出された作動状況を見る限り、ほぼリアモーターのみで走っていることが分かる。これはAWD化のためにセンターデフやプロペラシャフトを備えているモデルの作動と近い。普段はスポーティかつ簡潔に後輪で駆動し、必要な時だけAWDになるというスタイルだ。

価格的な面でも興味深い。ガソリンモデルが604万円、ディーゼルMHEVが620万円、そしてBEVが718万円(いずれも標準グレード)。この程度の差だとBEVに対する補助金や免税、ランニングコストを含めれば3モデルとも似たり寄ったりという見方もできる。3モデルを試乗すれば、すぐに自分に合った一台を見つけられると思う。

BMW iX1 xDrive30 M Sport 車両本体価格: 760.2万円〜(税込)

Text : Takuo Yoshida

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