「M-1決勝の前夜も介助やおむつ交換してました」メイプル超合金安藤なつさんが、介護福祉士の資格に挑戦した理由

芸人として第一線で活躍しながら昨年、人生初という猛勉強を経て介護福祉士国家試験に受かった安藤なつさん(43歳)。なぜ今、介護の資格を?そもそも安藤さんにとって、お金と仕事って?安藤さんが聞かせてくれた話の芯にあったのは、「人気者になってもブレない自分の軸」でした。

下積み時代は女友達と6年間アパートで節約生活

編集部(以下編) ブレイクされる前は、介護の仕事とお笑いの二足のわらじだったそうですね。

安藤さん(以下敬称略) はい。週3日ほど介護の仕事をしていました。当時はスタイリストのアシスタントをしていた友達と一緒に住んでいたのですが、収入は15万円ぐらい。家賃の10万円と携帯代、光熱費を払ったらカツカツ、という暮らしを約6年続けました。

編 かなり厳しい家計ですね。

安藤 余裕はなかったです。でも、実家が送ってくれた野菜を大きな鍋で煮て豚汁をつくり、そこに小麦粉こねてつくった“すいとん”を入れて満足感をだすなど、2人で工夫するのが面白くて。一度、「本当にもう小銭しかないよ、どうする?」って状況にもなりましたが、その時も2人で「よし、米と納豆で行こう」って乗り切りました(笑)。

M-1決勝の前日まで介護ヘルパーで食べてきた

編 なぜ介護のお仕事を?

安藤 子どもの頃、おじが経営していた障害者施設に遊びにいって、簡単な手伝いをしたのがきっかけです。そこは知的障害があるかた、体に障害があるかた、高齢のかたがいらしたのですが、体位交換から立ち上がり・起き上がり、食事、トイレ、入浴の介助などで文字通り体当たりで向き合っているうち、気持ちが通じ合ってくるのが嬉しくて。20歳の頃にホームヘルパー2級(現介護職員初任者研修)を取りました。そこから在宅介護の仕事を始め、M-1 決勝の前日も夜勤で、介助やおむつ交換をしてました。

編 介護は単に生活費を稼ぐ手段というだけではなかった?

安藤 そうですね。利用者さんは介助がないと生活が成り立ちません。だから、「ありがとう」の重みが違う。社交辞令や忖度みたいに“雑”なものが混じらない「ありがとう」って、普通の生活ではなかなか聞けません。そういう純粋な「ありがとう」を受け取り続けてきたことで、お金では買えない価値を知ったのかもしれないです。

収入が増えても、セレブ生活には興味がない

編 その後見事、ブレイクされましたが、お金への意識は変わりましたか?

安藤 家は少しいいところに引っ越しました。でも生活はそんなに変わらず、後輩にごちそうすることが増えたぐらい。あ、スーパーで果物を買うようにはなりました。それまでは果物なんて視界にも入ってこなかったんで、シャインマスカットを初めて食べたときは感動しましたねぇ(笑)。

収入に合わせて生活を変えればいいから将来を心配しすぎない

編 新NISA も始まり、投資が盛り上がっています。安藤さんは資産運用をしていますか?

安藤 全然。将来のことも60歳ぐらいまでしか想像してないです。その時になって後悔するかもしれないけど、先のことは誰にもわからないし、もしお金がなくなったら、以前のように生活を小さくすればいいだけ。体が動かなくなったら、それこそ国の介護保険制度もあります。今までもなんとかやってきたし、なんとかするでしょって思っているので、老後の心配はあんまりしていないですね。

介護職はキツいだけではないと伝えたくて国家資格をとった

編 お忙しい中で、介護福祉士の資格に挑戦されたのはなぜですか?

安藤 今はこうして、発信できる立場になったので、ちゃんと資格を取って正しい知識を深め、介護の仕事の広報になりたいなぁと。さっきも言ったように介護は、大変なだけじゃなく素敵な一面もある。そうした面を伝えて、興味を持ってくれる人が増えたらいいなと思っています。あと、専門職なのに給与が安いのは意味がわからないので(怒)、そういう部分を少しでも変えていく力になれたら嬉しいです。

行きつけはくら寿司

「昔からくら寿司が大好きなんですよ。昨日も昔同居していた女友達と行って、イカのお寿司と天ぷらを食べてきました。高級なお寿司ももちろんおいしいんでしょうけど、私は“回るほう”が好きです」。

唯一の「デカい買い物」は、小4の頃から夢だったバイク

「収入が増えてすぐ買ったのがハーレー。これを買うのを目標にずっと頑張ってきたので、キャッシュでバーンと。時間ができたらツーリングに行くのが最大の楽しみです。峰不二子になりたくて(笑)、ピッタピタのレザースーツもつくりました」。

母と観た映画『AKIRA』(原作/大友克洋)で主人公が乗っていたバイクに魅了され、バイクに乗るのが夢に。愛車はハーレーダビッドソンの「ファットボーイ」

お気に入りは20年着ているジャージ

「テンションが上がるのは高級なブランド品より、自分に刺さるもの。このジャージもそうですが、そうしたものに出会ってお金を払うときのアドレナリンは半端ない。最近のヒットは、大好きなロボット兵※のマグネット!」。

※『天空の城ラピュタ』のキャラクター

野菜も日用品も「本当に要る?」と自分に聞いてから買う

「基本的に買い物は今も節約モードで、店先では“これ、いるかぁ?”が口ぐせ。ちょっとでも高いと思ったらカゴには入れません。そこで買って、他のお店が安かったときの“負けた感”って、最悪ですから!」。

<プロフィール>
安藤なつさん
あんどう なつ●1981年1月31日生まれの43歳。東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成し、ツッコミを担当。立ち位置は向かって左。2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティーを中心に活躍中。ボランティアを含めると20年余り介護の現場で働き、2023年、介護福祉士国家試験に合格。特技はお尻でくるみを割ること。

参照:『サンキュ!』2024年4月号「お金のプロ&貯め達人がリアルにやってる習慣」より。掲載している情報は2024年2月現在のものです。撮影/久富健太郎 編集/サンキュ!編集部

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