相続税対策に活用できる場合も…〈自宅マンションの処分〉で検討すべき「売る」以外の選択肢とは【住宅のプロが助言】

自宅マンションの処分を検討する際、まずは不動産会社に売却の相談をすることが多いかもしれません。しかし、処分の方法は「売却だけとはかぎらない。むしろ、売却以外の方法が適している場合もある」と、不動産コンサルタントの高橋正典氏は言います。日下部理絵氏、高橋正典氏、畑中学氏による著書『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より、マンションを処分する際の選択肢について詳しく見ていきましょう。

売るだけじゃない!「マンション処分」の選択肢とは

不動産会社に相談すると、どうしても売却する方向に進みがちである。しかしそこは一度立ち止まり、本当に売却という選択が正しいのかどうかを考えてみることも大事だ。ここでは、家を売らないという選択肢について具体的な3つの方法について解説しよう。

①賃貸に出す

昨今ではサラリーマンの不動産投資が注目されている。利用するあてのない物件を持っているなら、賃貸に出して家賃収入を得たいと考える人は多いだろう。

賃貸需要があるかどうかは、エリアによっても異なる。また、貸す場合にはどれくらいの期間を想定するかも重要だ。なぜなら、普通の賃貸借契約にしてしまうとオーナー側から簡単には破棄できないためだ。その場合には定期借家契約という方法があり、期間を限定することも可能である[図表]。

[図表]定期借家契約と普通借家契約の違い 出所:『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より抜粋

②老後の年金代わりにして、本人死亡時に一括返済

「リバースモーゲージ」を使い、所有する物件を年金代わりにする方法もある。

リバースモーゲージとは、55歳や60歳など一定年齢以上の人を対象にした融資商品だ。自分の土地・建物を担保に入れることで、銀行が定める範囲でお金を借りることができる。月々の返済は利息のみとなる。特徴的なのは返済方法で、借りたお金は契約者が死亡した時に一括返済するか自宅の売却かのどちらかを選べる方法である。

つまり、生きている間は物件を手放すことなく、借りたお金でゆとりある生活を送り、自分が死んだら精算する、というローン商品である。ただし、現在のところこの商品は戸建てで多く利用されている。マンションの場合は融資額が少なくなる場合があるので、確認する必要がある。

相続税対策にもなる「子への引き継ぎ方」

③親がリフォームして子供に託す

いずれ子供が住むために引き継ぐというのも選択肢のひとつだ。自分たちが使ってきた中古マンションを子供に譲り渡して、メンテナンスをしながら引き続き使ってもらう。これは国の住宅政策も目指す美しい姿といえる。

もしも現金をそのまま相続させると相続税が高くつくが、親のお金で家のリフォームをすませて、その家を相続させれば、相続税を抑えながら価値の高い家を残してあげられることになる。当たり前だが、親の考え方と子の考え方は違う。親が勝手に引き継がせたいと思っているだけで、子供は欲しくないと思っているかもしれない。子供に引き継ぐことを考えている場合は、早い段階で一度子供と話し合ってみることをお勧めする。

ただし、例えば①の賃貸については賃貸を扱っている不動産会社になるし、②リバースモーゲージなどは金融機関などが取り扱っている。また③の場合には相談する具体的な相手に悩むことだろう。それぞれ相談相手の立場によって導かれる結果も違うという不安も生じる。

不動産コンサルティングマスターに相談する手もある

社会経済環境の変化に伴い、不動産に関するニーズは多種多様化しており、不動産の証券化の進展など不動産をめぐる制度も大きく変化している。

このため、不動産の有効活用や投資・相続対策等について、高い専門知識と豊富な経験に基づく不動産コンサルティング能力の必要性が高まっている。

その場合には、「公認不動産コンサルティングマスター」という資格者がいるので、こういう人たちに相談する方法がある。調べてみると良いだろう。

この資格は、不動産コンサルティング技能試験・登録制度というもので、(公財)不動産流通推進センターが国土交通大臣の登録を受けて実施する登録証明事業である。

不産コンサルティングを行うために必要な知識及び能力に関する試験を行い、試験に合格し不動産等に関する一定年数以上の実務経験を有する等の要件を満たして登録した人を「公認不動産コンサルティングマスター」として当該センターが認定し、より、一定水準の知識及び能力を有していることを証明するものとなっている。

日下部 理絵

マンショントレンド評論家、住宅ジャーナリスト

高橋 正典

不動産コンサルタント

畑中 学

不動産コンサルタント、武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役

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