【帰ってきた人や訪れた人に届けたい新たな名物も…】富岡町の「夜の森の桜並木」が見頃・福島

【会津の名木 石部桜も見ごろに】天気回復し桜前線広がる・福島県

福島県内も桜の開花が進み、各地で見頃を迎えています。

富岡町のシンボルの「桜並木」も、訪れた人たちの目を楽しませています。

直川貴博アナウンサーのリポートです。

道路両側から枝をアーチ状に伸ばし、桜が咲き競う「桜のトンネル」。

こちらは、富岡町の「夜の森の桜並木」です。ちょうど見ごろを迎えています。

午後6時から、ライトアップがはじまり、夜空に浮かぶ桜が富岡の春を幻想的に彩ります。

「さくら通り」と名付けられた、この町道などにおよそ2.2キロに渡って、420本ものソメイヨシノが咲く、県内有数の桜の名所です。

4月10日に撮影した、上空からの映像です。

ここは、13年前に事故を起こした福島第一原発から、わずか7キロの所にあり、一時は全町避難を余儀なくされた町です。

富岡町は、最初の避難指示解除までにも6年という時間がかかったこともあり、この町に戻って来た町民は、わずか6パーセントとなっています。

(2011年3月11日現在の人口15961人・2024年4月1日現在の帰還者971人)

しかし、この春の時期には、桜を見に故郷に戻ってくる人もいて、震災前にあった人が行き交う光景が戻ってくるんです。

夜の森に帰ってきた人や訪れた人に夜の森らしさを届けたい、そんな思いから生まれた新たな名物もあります。

6日、7日に富岡町で行われた「夜の森桜まつり」。

2日間で1万7千人が訪れた会場には、2023年に誕生した新たな町の名物も販売されていました。

作っているのは、夜の森の桜並木のそばにある「BAUM HOUSE YONOMORI」です。

名前の通り「バウムクーヘン」の専門店です。2023年8月にオープンしました。

■BAUM HOUSE YONOMORI 遠藤一善オーナー

「心のよりどころなので、ここでやるしかないなというのが一番の気持ちでした」

オーナーは、地元出身の遠藤一善さん。

1年前に避難指示が解除された夜の森地区に新たな魅力を作りたいとお店を立ち上げました。

販売するバウムクーヘンにもこだわりがあります。

■BAUM HOUSE YONOMORI 遠藤一善オーナー

「なるべく町内のものを使いたいと思っていたので」

生地には、富岡町でとれたコメを製粉した米粉を使っています。

製粉から生地作り。

そして、焼き上げまで、すべて店内で行っています。

現在は、3種類の味を用意。

一つは、町のシンボル=夜の森の桜並木をイメージしました。

■BAUM HOUSE YONOMORI 遠藤一善オーナー

「夜の森でやるからには、桜をモチーフにしたバウムクーヘンは外せないので、やっぱり夜の森っていいよね、富岡っていいよね、桜いいよねってなってもらえるのが一番の希望です」

震災と原発事故を乗り越えた夜の森の桜並木。

新たな名物とともに、多くの人を迎えています。

そのふるさとへの思いがつまった桜のバウムクーヘン。

配送もできるということで、福島を離れた大切な人に富岡の春を届けることもできそうです。

春を過ぎれば、ここ富岡町は、また静かな町に戻ります。

ただ、それぞれの場所でふるさとを思い、町民が辿った13年が、富岡を前へと進めて来ました。

その歩みを称えるように、福島復興のシンボル「夜の森の桜並木」は、2024年も凛と強く美しく咲いています。

© 株式会社福島中央テレビ