ハンセン病の歴史をアートに 2025年の瀬戸芸開幕に向け特別公開 高松市・大島

2025年に開催される瀬戸内国際芸術祭に向け、4月から各会場で作品の特別公開が行われます。このうち、高松市の大島では、ハンセン病の歴史を物語る「親子の記録」が、現代アートとして展示されます。

ハンセン病療養所「大島青松園」がある高松市の大島。入所者が暮らしていた長屋に、かつての強制隔離政策や偏見・差別の歴史を伝える現代アートが数多く並びます。

アーティストの山川冬樹さんが手掛けた「歩みきたりて」。1948年に大島青松園に入所し、歌人「政石蒙」として多くの短歌を残した政石道夫さんをテーマにした作品です。

道夫さんが10代の頃に離れ離れになってしまった母、政石コメさんの記録は、2023年11月に新たに加わった「作品」です。

道夫さんと同じハンセン病を患っていたコメさんは1940年、瀬戸内市のハンセン病療養所「長島愛生園」に強制隔離され、わずか半年後に、自ら命を絶ちました。

入所当時の病状を記したカルテや亡くなった後の解剖記録。解剖の同意書には本人の署名が残っていますが、適切な同意を得ていない可能性が高いといいます。

これらの記録は、2023年はわずか2日間しか公開されませんでしたが、来場者の心を揺さぶりました。

(作品を見た人は―)
「入所者の方が海面に浮かんでいるコメさんの遺体を発見されたということが書かれていて、コメさんがどんな思いで自ら死を選んだのかを想像した」
「ここまでの個人情報が一挙に公開されることにインパクトを感じますし、これを公開しようと踏み切った勇気もすさまじいものだと感じた」

国の強制隔離政策によって別れを余儀なくされた親子の「生きた証し」。コメさんの記録は2023年、ひ孫の三好真由美さんが開示を受けたもので、本来は限られた人しか見ることができません。

(政石コメさんのひ孫/三好真由美さん)
「こういう負の歴史はなかったことにしてはいけないと思う。確かに生きていて、そこで自ら命を断ったという、短いけれど存在の証しですよね」

三好さんは「歩みきたりて」を手掛けた山川冬樹さんに、その思いを託しました。

(アーティスト/山川冬樹さん)
「政石道夫さんのお母さんのことはずっと思っていたんです。どんな人か分からないけど何を言いたかったんだろうとか」

大島では、4月から11月までの第2土曜と日曜にこれらの作品が特別公開されます。4月は、13日と14日が公開日で、大島の食材を使ったドリンクやスイーツなどを味わえるカフェもオープンします。

アクセスなど詳しい情報は瀬戸芸のホームページでご確認ください。また、大島以外の会場でも作品を公開しています。

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