過半数の企業が2024年度に「非正規雇用の賃上げ」を予定。非正規雇用と正規雇用の賃金差はどのくらい?

非正規の賃上げ予定、業種別では「建設」が最多

国民春闘共闘委員会は、非正規雇用者の賃上げ・底上げを目的に非正規春闘で「10%以上の賃上げ」を要求しました。

総務省の「労働力調査」によると、非正規雇用の職員・従業員数は、2023年時点で2124 万人。昨年と比較して23 万人増加しており、賃上げの要求がとおれば、多くの人の給与アップに繋がります。

そこで本記事では、「非正規雇用者の2024年度の賃上げ事情」について、実際の調査データを元に紹介していきます。

最後では、非正規雇用と正規雇用の給与の違いについても紹介しているので参考にしてください。

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調査の概要《非正規雇用市場における採用・求職動向レポート》

株式会社マイナビは、全国の企業、個人それぞれを対象に実施した「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年1-2月)」の結果を発表しました。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査期間:企業2024年3月1日(金)-3月3日(日)・個人2024年3月1日(金)-3月4日(月)
  • 調査方法:WEB上のアンケートフォームより入力
  • 有効回答数:企業…スクリーニング調査1万7000名、本調査967名・個人…スクリーニング調査1万9439名、本調査1585名
  • リリース公開日:2024年3月29日

2024年度、非正規雇用の賃上げを予定している企業はどれくらいあるのでしょうか。

また業種によって違いはあるのか。次章で調査結果を詳しく見ていきましょう。

過半数以上の企業が2024年度に非正規雇用の賃上げを予定

調査の結果、56.8%と過半数以上の企業が、2024年度に「5%以上」の非正規雇用の賃上げを予定していることがわかりました。

一方で、非正規春闘での要求である「10%以上」の賃金の引き上げを予定する企業は21.5%にとどまる結果に。

【写真1枚目/全4枚】2024年度非正規雇用者への賃上げ予定率は?《2枚目以降》賃上げ予定の業種、福利厚生の導入・改正の予定などを詳しくチェック!正規・非正規の給与の「差」はどれくらい?

2024年度に賃上げを予定している企業を業種別でみると、「建設」が70.2%で最も高くなりました。

2024年度非正規雇用者への賃上げ予定

さらに、「10%以上」の賃上げを予定している業種は、「建設」が30.2%と最も高く、ついで「飲食・宿泊」が29.7%と続く結果となりました。

2024年問題により人手不足が懸念されている建設や、慢性的な人手不足が続いている飲食・宿泊業では、10%以上の賃上げをして人材を確保する動きがあることがわかります。

賃上げ方法として3割の企業が「福利厚生の導入・改定」を予定・検討中

株式会社マイナビの同調査の「2024年度に賃上げ目的として非正規雇用者の福利厚生の導入・改定を行う予定はあるか」というアンケートより、31.6%の企業が導入・改定を予定・検討していることがわかりました。

2024年度:賃上げを目的とした非正規雇用者の福利厚生の導入・改定予定

非正規雇用者への賃上げを目的とした導入・改定予定の福利厚生として「食事代の支給」が22.3%と最も多く、次いで「慶弔お見舞金」が21.3%となりました。

上記から、「昇給」や「ベースアップ」といった通常の賃上げとは異なる方法として、福利厚生の拡充をはかる企業も一定数存在することがわかります。

では、そもそも非正規雇用者と正規雇用者の給与はどれくらいあるのでしょうか。

次章で非正規雇用者・正規雇用者の平均給与の違いについて確認していきます。

非正規雇用・正規雇用の平均給与は?

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、非正規雇用者と正規雇用者の平均給与は、下記のとおりです。

  • 非正規雇用者:22万1300円
  • 正規雇用者:32万8000円

正規雇用者と比較すると、約10万円ほどの給与に差が生じており、依然として雇用形態によって大きな格差が存在していることがわかります。

では、業種別ではどうでしょうか。

厚生労働省の同調査によると、業種別における非正規雇用者と正規雇用者の平均給与は、下記のとおりです。

業種別:非正規雇用者と正規雇用者の平均給与

非正規雇用と正規雇用で最も大きく給与に差が開いている業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」となりました。

また、株式会社マイナビの調査で2024年度に賃上げを予定している企業が多かった「建築業」「宿泊・飲食サービス業」では、非正規雇用と正規雇用とで給与に約8万円〜10万円もの差が生じています。

今回の賃上げにより、非正規雇用者と正規雇用者の賃金の差がどこまで縮まるのか、注目が集まっています。

非正規雇用者に対する今後の賃上げ拡充に期待

本記事では、「非正規雇用者の2024年度の賃上げ事情」について、実際の調査データを元に紹介していきました。

近年続く物価高や最低賃金の改定などの影響もあることから、半数以上の企業が2024年度に、非正規雇用者に対する賃上げを予定していることがわかりました。

特に建設業や飲食・宿泊業では人材確保が競争化していることから、企業は賃上げ率を高くし、非正規雇用の待遇改善に積極的に取り組んでいるのでしょう。

また、近年では、通常の賃上げだけでなく「福利厚生の導入・改定」に関心がある企業が多いため、賃上げと組み合わせながら非正規社員に対する福利厚生の見直しや拡充にも期待がされています。

参考資料

  • 株式会社マイナビ「マイナビ、「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年1-2月)」を発表」
  • 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「「月額3万円以上、時給190円以上、10%以上」の引き上げを目指す/国民春闘共闘の春闘方針」
  • 総務省「労働力調査」
  • 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

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