フェーン現象とは?原理と起こりやすい地域をわかりやすく解説

皆さんは、フェーン現象という言葉を聞いたことがありますか?テレビなどの天気予報で聞いたことがある人や学校の理科の授業で習った記憶のある方も多いと思いますが、メカニズムを詳しく説明できるでしょうか?そこで、この記事ではフェーン現象について解説していきます。

フェーン現象って何?

まず、フェーン現象を解説する前に「フェーン」という言葉を理解する必要があります。フェーンとは、湿った空気が山を越えて反対側に吹き下りたとき、その風の吹き下りた側(風下側)の地域で、乾燥した高温の風が吹くことをいいます。このフェーンにより、気温が上昇することを「フェーン現象」と呼びます。

フェーン現象のメカニズム

フェーン現象によって風上側と風下側で気温が変化する理由は、湿った空気と乾いた空気で、気温の下がる温度が異なるためです。以下の図を用いて解説していきます。

例えば、25℃の湿った空気が2000mの山を越えるとします。25℃の湿った空気は山に沿って上昇する際に100m上るにつれて約0.5℃ずつ下降します。2000mの頂上に達するときには10℃(0.5℃×2000m÷100m=10℃)下がって15℃になります。この15℃の空気が、今度は山を下りる際は乾いた空気となって下降し、100m下がるにつれて約1.0℃上昇します。15℃だった空気は、地上付近に達するときは20℃(1.0℃×2000m÷100m=20℃)上がって35℃になります。つまり、最初に25℃だった湿った空気が、山を越えると35℃の乾燥した空気に変化し、気温が10℃も上がってしまうのです。

どんな日に起きやすい?

フェーン現象はどんな日に起きやすいのでしょうか?代表的なのは、日本海に低気圧が進んだときです。日本海に低気圧が進むと、その低気圧に向かって南風が吹き込みます。この南風は、日本の本州の真ん中にある脊梁(せきりょう)山脈を越えて、日本海側へ吹き下ろします。吹き下ろした風は、乾燥した高温の風となっているため、日本海側は気温が上昇します。このため、日本海に低気圧が進むと、日本海側でフェーン現象が発生するのです。

フェーン現象が起こった過去の事例

ここで、フェーン現象が起こった過去の事例を解説していきます。
・新潟県糸魚川(2016年)
2016年12月22日、発達中の低気圧が日本海を進み、全国的に南よりの風が強まりました。この南よりの風が、日本の本州の真ん中にある脊梁山脈を越えて、日本海側に吹きおろし、北陸を中心にフェーン現象が発生しました。そのため、気温が上昇し、空気の乾燥も進みました。また、この日は新潟県の糸魚川市で火災が発生しましたが、フェーン現象による空気の乾燥や強風も重なって、火災のエリアが拡大し、大規模火災に見舞われました。

・北海道の記録的高温(2019年)
2019年5月26日、日本の南には高気圧があり、北海道付近は暖かな南西風が吹いていました。この南西風が石狩山地や日高山脈を越えて、風下となる北海道のオホーツク海側や太平洋側東部はフェーン現象が発生し、日中も晴れて日差しが届いたことから気温が上昇しました。佐呂間では日最高気温が39.5℃まで上がり、その他の地点でも記録的な高温となりました。

上の表は、2019年5月26日の日最高気温の上位10地点になりますが、すべて北海道という結果になりました。また、5月の最高気温としても観測史上最も高く、北海道の最高気温も歴代1位の高温となりました(2024年4月現在)。

・北陸・福島県の高温(2023年)
2023年8月上旬~中旬、台風6号が沖縄付近を迷走し、北海道には前線が停滞している状態が続きました。この台風6号の東側では暖かな南よりの風が吹き込み、山地を越え、風下となった北陸や東北ではフェーン現象が発生し、高温となりました。8月5日は福島県梁川で、8月10日には石川県小松で、いずれも最高気温が40.0℃に達し、危険な暑さとなりました。

フェーン現象が発生したときに注意してほしいこと

フェーン現象が発生したときに注意してほしいことが2つあります。1つ目は空気乾燥による火災です。フェーン現象が発生すると、山を越えた風下側では、気温が上昇し、湿度が下がります。湿度が下がるということは、空気が乾燥しますので、火は燃えやすくなります。また、フェーン現象が発生すると、風も強まることが多々あり、火災が発生すると、延焼しやすいです。フェーン現象という言葉を耳にしたら、屋内外を問わず火の取り扱いに十分注意してください。
2つ目に注意したいことは、熱中症です。フェーン現象が発生すると、気温がグングンと上昇します。特に、気を付けてほしいのは春です。春は、低気圧が日本海を進みやすく、南よりの風が吹いて、日本海側を中心にフェーン現象がしばしば起こります。なぜ、春に注意が必要かというと、まだ身体が暑さに慣れておらず、気温が急上昇すると熱中症になる可能性が高くなるからです。フェーン現象が発生すると、春にもかかわらず最高気温が30℃を超えることがあり、熱中症になるおそれがありますので、こまめな水分補給や過度な運動を控えるといった対策を行いましょう。熱中症の対策についてはこちらで紹介していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

以上、フェーン現象について解説しました。これからの季節はフェーン現象が発生しやすくなりますので、火の取り扱いや熱中症に気を付けましょう。

参考
気象庁 顕著な天候事例 道内歴代1位の高温(2019年5月26日)
https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/hokkaido/kencho_spring2019.html

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