水素エネルギーの地産地消へ 福島大総合研、自治体や企業と連携

 福島大は10日、共生システム理工学類の付属機関として1日に開設した「水素エネルギー総合研究所」の研究方針を発表した。製造、貯蔵・輸送、利用、管理といったサプライチェーン(供給網)の研究と教育を柱に水素エネルギーの「地産地消モデル」をつくる。産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所とともに連携大学院を設置するなど、県内の研究機関や自治体、企業との連携を強化して取り組む。

 共生システム理工学類の長橋良隆学類長や水素研の宗像鉄雄所長らが同大で記者会見し、発表した。同大によると、水素に特化した研究所を設けている大学は九州大、山梨大に続き3番目とみられる。

 福島大の水素研のイメージは【図】の通り。水素エネの「地産」「地消」の2部門に四つの研究グループをつくり、理工学類を中心に経済経営学類、食農学類の教員計11人の体制で始動。バイオマスや水力、地熱など県内の自然資源を使った水素製造法の開発や運搬、貯蔵に関する材料の開発、産業界と連携した利活用システムの構築などの研究を進める。

 県やエネルギー・エージェンシーふくしまと連携し、トヨタ自動車など県内外の10社ほどとともに需要調査や共同研究に向けた準備を進めており、今月中にも具体的な研究に入る。福島国際研究教育機構(エフレイ)との共同研究や福島水素エネルギー研究フィールドとの連携も見据える。

 産総研との連携大学院は来年度の設置を目指し、今夏から募集を始める。産総研の研究者が教員として理工学類の学生を指導するほか、将来的には学生の研究所への参入も見据え、水素分野の若手研究者を育成していく。

 水素研の開設は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みを加速させる狙いもある。

 目標を掲げる県は「水素エネ活用の先進地の山梨県は、山梨大を含め産官学が連携して取り組みを進めている。(水素研の開設に伴い)本県でも産学官そろった連携の仕組みをつくっていきたい」(次世代産業課)としている。

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