大堀親子...二人三脚、夢成就 バド五輪代表確実、ライバル乗り越え

パリ五輪出場を確実にした大堀。父でヘッドコーチの均さんと二人三脚で地道にポイントを積み重ね、代表入りを手中にした=昨年12月、東京都内

 親子の夢をかなえた。バドミントンの女子シングルスでパリ五輪出場を確実にした大堀彩(27)=トナミ運輸、富岡高卒。「夢は五輪です。そこにいかなくてはバドミントン人生は終われない」。高校時代から口にしてきた目標をヘッドコーチの父均さん(55)と二人三脚で実現させた。

 五輪は近いようで遠い舞台だった。富岡高2年時にアジアユース選手権で日本人初優勝を飾るなど、高校時代から注目選手だった大堀。しかし、実業団に進むと山口茜(26)と奥原希望(29)の2人が立ちはだかった。大堀はこれまで、日本一を決める全日本総合選手権で優勝できなかったように、リオデジャネイロ五輪と東京五輪の代表選考も2人に及ばず、代表入りを逃した。

 世界で戦うために大堀は変化を求めた。「自分を知り、相手を知り、自分を変える」。今年、ふたば未来高バドミントン部の文集に大堀が寄せた言葉だ。パリ五輪選考レースを戦う上で、対戦相手となるトッププレーヤーを徹底的に分析し、自分の苦手なプレーの克服に練習時間を費やしたという。

 その成果は結果となって表れた。地道に選考大会でポイントを重ねていくと今年2月のタイ・マスターズでは奥原に競り勝って優勝。3月のフランス・オープンでも奥原との直接対決を制した。昨年7月には出場を予定していた選考大会に、日本協会側の入国手続きミスで出場できないアクシデントもあったが、決して諦めなかった。

 2017年には当時富岡高の監督を務めていた父均さんが教員を退職し、トナミ運輸のコーチに就いたことも大きかった。「選手時代に五輪を目指したが諦めて教員になった。五輪への夢を人生最後の勝負としてかなえたい」。そんな父の思いも背負っていた。(佐藤智哉)

 富岡高卒業生5人目パリ切符

 富岡高バドミントン部の卒業生では、混合ダブルスの渡辺勇大(26)・東野有紗(27)組=BIPROGY=と、男子ダブルスの保木卓朗(28)・小林優吾(28)組=トナミ運輸=の4人もパリ五輪出場を確実にしており、大堀で5人目となった。富岡高の流れを受け継ぐふたば未来中・高(広野町)では、バドミントン部の恩師や後輩たちが吉報を喜び、五輪での活躍を願った。

 「挫折と苦しみを乗り越えてよくやった」。そう語った富岡一中(猪苗代中)時代を指導したふたば未来中の斎藤亘監督(52)は、結果が出ない中でも五輪の夢を諦めなかった大堀について「持ち前の負けず嫌いと我慢強さで成長を続けた」とたたえた。その上で「本県でジュニア世代から育った五輪選手の誕生は指導者としてうれしい。大舞台で思い切り挑戦してほしい」と期待した。

 富岡高時代に指導したふたば未来高の本多裕樹監督(39)は、大堀均さんの指導を受けてきた関係で幼少時から大堀と交流してきた。「実業団で苦しい時期は心配していた。いつか活躍してほしいと願っていた」と話し、「諦めない不屈の精神は後輩たちのお手本になる」とたたえた。

 ふたば未来中バドミントン部3年の佐藤心彩(こころ)さん(14)=郡山市出身=は「先輩の活躍は誇らしい。ぜひ金メダルをつかんでほしい」とエールを送った。

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