【4月12日付編集日記】印象派

 「悪名は無名にまさる」。19世紀のフランス・パリで苦闘していたモネやルノアールらも、こんな心境だったかもしれない。今や世界で知らぬ者のない絵画の「印象派」だが、元々は批評家らが侮蔑を込めて呼んだ言葉だった

 ▼モネの「印象、日の出」は、光や風など自然の移ろいを表現する印象派の初期作品。作家の中野京子さんによると、この油絵を見た当時の批評家は、筆致の荒さなどを指摘し「さぞかしここにはたっぷり(印象が)詰まっているのだろうよ」と皮肉った

 ▼だがモネたちは、悪評に奮起し自らを「印象派」と名乗った。「印象、日の出」が批評家の目に触れた、彼らの初のグループ展も「印象派展」として続いた。この初の印象派展の開幕が1874年4月だった

 ▼印象派誕生150年で日本の各地でも記念展が開かれる。県内では20日に、「印象派 モネからアメリカへ」展が郡山市立美術館で開幕。モネの「睡蓮(すいれん)」や米国の印象派画家の作品などが、その国際的な影響力を伝えてくれる

 ▼県立美術館ではモネの「ジヴェルニーの草原」に出合える。こちらは常設展示。パリから遠いこの地で作品と出合えることに、悪名にひるまなかった画家たちの偉大さを思う。

© 福島民友新聞株式会社