篠原涼子×バカリズム、“初バディ”の相性は? 「回っていない部分での息はぴったり」

4月12日よりフジテレビ系で放送がスタートする篠原涼子とバカリズムのW主演ドラマ『イップス』。本作は、小説が書けなくなったミステリー作家・黒羽ミコ(篠原涼子)と、事件が解けなくなったエリート刑事・森野徹(バカリズム)の絶不調なイップスバディが、時には助け合い、もがきながらもリスタートを目指すミステリーコメディーだ。クラインクインして間もない篠原とバカリズムに、お互いの印象、演じる役どころ、脚本などについて話を聞いた。

●「いかに効率よくやるかを2人で日々相談しています」

――初共演の現場はいかがですか?

バカリズム:和やかな空気でそんなに押すこともなく、一番いいですよね。

篠原涼子(以下、篠原):順調にいってます。バカリズムさんは外ロケなど過酷な撮影をしていますよね。

バカリズム:僕は割と過酷なんですけど、それでもなんとか(笑)。和やかなムードでやってます。

――今作ではバディを組みますが、息は合いそうですか?

バカリズム:役柄的には、今撮影してる部分ではまだギクシャクしてるんですけど。ここからどうなっていくのか、僕らもまだ先を知らないので。

篠原:どうなるんだろうと考えています。

バカリズム:カメラが回っていない部分での息はぴったりだと思います。

――篠原さんが主演を務めた映画『ウェディング・ハイ』では、バカリズムさんが脚本を務めていました。

篠原:私、バカリズムさんの作品が大好きで、たくさん観ているんです。

バカリズム:ありがとうございます。

篠原:全部面白くて。どうしたらこういった才能が持てるんだろうって不思議です。現場でも、バカリズムさんを観察しています(笑)。

バカリズム:すごい見られてるんです(笑)。少し離れたところで、ずっとニコニコしながら。

篠原:ニコニコしちゃうぐらい面白いんですよ。壁に埋まってる石をほじる姿だったり。

バカリズム:待ち時間があった時ですね。

篠原:なにやってるんだろうと思いながら。いろいろと目が離せないんです。日々楽しませていただいていて。

バカリズム:温かい目でずっと見守られています。

篠原:興味津々な方と共演できるのは幸せなことだなと思いますし、いいスパイスをいただいて頑張りたいという気持ちになります。私自身もちゃんとしたスパイスを与えられたらと思っています。

――バカリズムさんは篠原さんの印象について「高校生の頃からずっと第一線で活躍されている方」とコメントされていました。

バカリズム:そうですよ。もうずっと売れてる。

篠原:学生の頃からですか。今おいくつですか?

バカリズム:48歳です。

篠原:私と2つしか変わらないんですね。

バカリズム:ほぼ同世代なんですけど。

篠原:東京パフォーマンスドールって、知ってます?

バカリズム:知ってますよ! そこからアーティストとしても活躍されてますし、全てができる方という印象だから。

篠原:パフォーマンスドールの中で誰がよかったですか?

バカリズム:いやいや(笑)。逆にそういった話は触れちゃいけないのかなと思うじゃないですか。

篠原:触れてくださいよ!

バカリズム:それこそ『ごっつ』(『ダウンタウンのごっつええ感じ』)も観てたし、歌(「恋しさと せつなさと 心強さと」)もダブルミリオンですし、ずっとスターだから。

篠原:何も考えないで生きてきただけなので。運だけがよかったんです。

バカリズム:いやいや。ご一緒できるのが光栄です。篠原さんは柔らかい印象というか。気さくに喋りかけてくださるし。ゴマすってるみたいですけど、優しくていい方です。

篠原:よかったです!

バカリズム:ところどころで現場を和ませてくださって。セリフが多くて大変だから、2人でどうやってバレないように、こっそりとセリフを短くし、省略するかを考えています(笑)。意味さえ合ってればいいだろうと。

篠原:そっちに逃げちゃおうかって。

バカリズム:そしたら篠原さんが、ごっそりセリフ飛ばしたんです(笑)。「いくなー!」と思ってたら、そこは普通に忘れてただけでした。

篠原:しらばっくれてOKが出るまで待っていたら、会議みたいなのが始まって。

バカリズム:バレちゃった(笑)。いかに効率よくやるかを2人で日々相談しています。

●バカリズム「オークラさんはややこしい説明を大体僕に当てるんです」

――それぞれ演じるキャラクターについても聞かせてください。

篠原:黒羽ミコは、明るくて図々しい、あまり考えないで物事を発言してしまうキャラクターです。ミコの精神的な部分を大事に表現できたらいいなと思っています。

バカリズム:森野徹は、実際の自分の性格よりもだいぶ嫌な人間だなと(笑)。なんでそんな言い方するんだろうと思いながら演じてます。

――篠原さんは小説家という役どころは初めてとのことですが、どのように役作りをされているんですか?

篠原:ミステリー小説家の人って、どういう見た目をしていたり、発言の仕方をするのかいろいろと調べました。調べたニュアンスで演じてみようと考えたり、試したりもしたんですけど、結果的にそれが全部消えました。

バカリズム:え!? なんで消えたんですか(笑)。

篠原:グレーなことをやってもしょうがないですし、それは中途半端だなと思ったんです。いろいろな方々の意見もあり、結果的に全部なくしました。

――なくした結果、どういった方向性に?

篠原:それが自分の中ではまだ分かっていないんです。なので「これで大丈夫ですか?」と思いながら、探っています。

バカリズム:いろいろ見た時点で吸収はしてると思うので、調べたことは無駄にはなってないですよ。

篠原:吸収はどこかにあるんですけど、全部は出てきてないんです。

バカリズム:まだ撮影開始から2日しか撮ってないですもんね。そんなこと言いながらも、黒羽ミコという人物は篠原さんの中で、ちゃんと出来上がっています。

――バカリズムさんは脚本家としても活躍されていますが、今回は俳優として出演します。心持ちは違いますか?

バカリズム:違いますね。気が楽と言いますか。自分が書いてないという強みがあるので、のびのびやれていますし、演じることに徹することができています。もちろん演じる側としての責任はあります。ここ最近は僕が脚本を書いている時に、「脚本・バカリズム」って言われるんですよ。ものすごいプレッシャーなんです。「全部お前の責任だ」みたいに言われている気がします。でも今回の脚本はオークラさんなので(笑)。そういった意味では責任の種類が違うので、気楽に演じています。

――新たな気付きみたいなものはありますか?

バカリズム:オークラさんの作風は具体的にどこがいいと言いづらいですけど、オークラ節だなと感じます。オークラさんは僕が10代の頃から知ってる人なので、フジテレビのいい時間帯で、一緒に仕事ができることが感慨深いです。

――オークラ節を言語化するとしたらどんな言葉になりますか?

バカリズム:難しいですね。特にセリフ回しがオークラさんだなというか。昔からの付き合いなので、オークラさんが書いた台本はなんか分かるという感覚なんです。

――『イップス』が決まってからオークラさんとは会話などされましたか?

バカリズム:少し前に収録の時に会ったので、「今度一緒ですね」「あ、頼むね」みたいな軽い感じの挨拶をしました。オークラさんは締め切りでバタバタだと思うので、具体的な話はなかったですね。

――篠原さんは脚本についてどのような印象ですか?

篠原:私はオークラさんは初めましてなんですけど、言い回しが面白いなと思いました。

バカリズム:独特ですよね。なんて言ったらいいんだろうな。

篠原:日常的に使っちゃいけないような言葉を会話の中に突っ込んでくるから、それが読んでいてクスッとしてしまう部分という感じがします。

バカリズム:なんとなくですけど、昔からオークラさんはややこしい説明を大体僕に当てるんですよ。

篠原:そうだったんですね(笑)。それがここでも来ちゃったんだ。

バカリズム:いろんな共演者がいる中で、何かややこしい説明がある時は大体僕が当てられています。

篠原:それこそ、オークラ節。

バカリズム:あと昔から知っているからか、僕のことをいまだに若いと思ってるんですよ。だからなのか、走らされたり、フィジカルな面で大変なことが多いんですよ。今回も第1話は体力的に大変な撮影が多いんです。オークラさん、僕のことを30代ぐらいだと思ってるんじゃないかな。

篠原:でも、若いイメージありますよ。

バカリズム:そうですかね(笑)。僕がスポーツをやっていたことも知っちゃってるから、これだったらできるでしょみたいな。肉体的にきついことをやらせがちというのは、オークラ節かな。

――今回はオリジナルストーリーですが、オリジナル要素としてはどんな感想を持たれましたか?

バカリズム:僕は初めて読んだ時に、珍しいパターンだなと思いました。今まで自分が観てきたミステリーとは、微妙に違う、似ているようで似てないんで新鮮でした。ミステリーコメディーですから2人の掛け合いと、とにかくセリフが多いんですよ。第1話はずっと揉めてます。

篠原:本当になんとかしていただきたいです(笑)。

バカリズム:そこは2人でいつもブーブー言いながらやってるんです。自分は「森野」のセリフのところに赤い蛍光ペンで色をつけるんですけど、台本が赤だらけなんです。「またここにもある」って。自分が脚本を書いて自分でも役として出る時って、セリフをたくさん覚えるのが面倒くさいから、長ったらしいセリフとか説明は相手の人に任せるんですよ。

篠原:ズルい!(笑)。

バカリズム:初稿では必要なセリフを書いておいて、覚えるのしんどいなと思ったら、人に喋らせたりして。もし今回も自分で書いていたとしたら、ほとんどのセリフを篠原さんに言わせてますよ。

篠原:嫌だ!(笑)。

バカリズム:今回はそれができないから逃げられないですね。

――第1話と第2話の台本を読んで、これからシリーズ化、ゆくゆくは映画化もできるフォーマットなのかなと感じました。

バカリズム:なるほど。今初めて「あ、そうか」と思いました。でも、まずはこれがヒットすることですね。

篠原:そうですね。本当にいろんな人に観ていただきたい。

バカリズム:ここで「シリーズ化したいですし、映画化になったらいいですね」と言ってしまって、視聴率悪かったら恥ずかしいじゃないですか(笑)。

篠原:そうですよね。言うだけ言ってしまって。

バカリズム:僕らはこういうところで、余計なことは言いたくないなと感じてしまう。演者側と宣伝側の違いなんですけど、僕らはとにかくハードルを下げようとするんです。観てもらうまでは、あんまり上げたくないんですよ。

篠原:そうなんです。やりづらくなってしまうので。

バカリズム:宣伝側はもうとりあえず初回を放送しちゃえばいいから、ハードルを上げるんですよ。もちろん魅力的な言い方をするんですけど、僕らはそれがプレッシャーになってしまう。そこがいつも、バチバチなんですよ(笑)。
(文=渡辺彰浩)

© 株式会社blueprint