大谷選手の口座から24億円超を不正送金の疑い 水原元通訳を米検察が訴追

マックス・マッツァ、BBCニュース

野球の米大リーグ(MLB)のスター選手、大谷翔平氏(29)の通訳を長年務めてきた水原一平氏(39)が違法賭博に絡む窃盗に関わったとされる問題で、米捜査当局は11日、大谷選手の銀行口座から計1600万ドル(約24億円)以上を盗んだとして、水原氏を銀行詐欺容疑で訴追したと発表した。

カリフォルニア州の主任検事は、水原容疑者が大谷選手になりすまして銀行に送金を促し、賭博を行っていたと告発した。

ロサンゼルスでの記者会見で、マーティン・エストラーダ連邦検事は「大谷氏はこの事件の被害者とみなされる」と述べた。

水原容疑者は先月に窃盗疑惑が報じられた後、大谷選手が所属するロサンゼルス・ドジャースから解雇された。

「賭博への飽くなき欲求を満たすため」

検察によると、水原容疑者が大谷選手の資金を使って賭博を行い、賭博の勝ち分を自分が管理する口座に入金していた。

同容疑者は2021年11月から2024年1月にかけて、大谷選手の口座から計1600万ドル以上を不正に送金したという。

「水原氏は違法なスポーツ賭博への飽くなき欲求を満たすためにこのようなことをした」と、エストラーダ連邦検事は述べた。

訴状によると、大谷選手の事実上のマネージャーだった水原容疑者は、同選手が英語を話せないことを利用した。

水原容疑者は銀行職員に電話をかけ、「大谷氏の銀行口座から違法賭博の関係者への電信送金を承認させるため、自分が大谷氏であると偽っていた」という。

また、今年1月から3月にかけて、大谷選手の口座から引き出した資金を使って、総額32万5000ドル(約4900万円)分の野球カードを購入していたとされる。

ロサンゼルスに拠点を置く水原氏の弁護人は11日、容疑に関するコメントを避けた。

大谷選手は先週、検察の事情聴取に応じ、自身の資金へのアクセスを水原容疑者に許可した事実はないと否定した。

検察の発表によると、「大谷氏は携帯電話を法執行機関に提供した。大谷氏が水原氏の違法な賭博行為あるいは借金の支払いを認識または関与していたことを示す証拠はなかった」という。

最長30年の禁錮刑

銀行詐欺罪で有罪となれば、連邦刑務所で最長30年の禁錮刑が科される可能性がある。米紙ニューヨーク・タイムズは、水原容疑者が検察側と司法取引に向けた交渉をしていると報じている。

スポーツ賭博は全米50州のうち38州で合法だが、カリフォルニア州では現在も違法。

MLBは独自の方針として、「選手や審判、クラブ、リーグ関係者や従業員」が野球の試合に賭けたり、違法なブックメーカーで賭けをすることを禁止している。

エストラーダ連邦検事は記者団に対し、水原容疑者が野球賭博を行ったことを示す証拠はないと述べた。

大谷氏はアメリカン・リーグのMVPを2度、満票で受賞した。ドジャースとは昨年12月、10年総額7億ドル(約1015億円)の契約を結び、同チームの顔となった。

MLBでは2018年からプレーしており、常に水原氏が行動を共にしてきた。水原氏と同氏の妻は最近、大谷氏と妻の田中真美子氏と一緒に写真に写っていた。この写真により、大谷氏の妻が誰なのかという数週間の憶測にピリオドが打たれた。

大谷氏は先月、ドジャースで記者団を前に声明を発表し、「僕自身も信頼していた方の過ちというのを悲しく、というかショックです」と語った。

「結論から言うと、彼(水原容疑者)が僕の口座からお金を盗んで、なおかつみんな、僕の周りもそうですけど、(水原容疑者が)みんなにうそをついていたというのが、結論から言うとそういうことになります」と、臨時通訳の助けを借りながら述べた。

(英語記事 Ohtani interpreter charged with stealing over $16m from baseball star

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