『6秒間の軌跡』高橋一生×橋爪功×本田翼が帰ってくる! 丁々発止の会話劇に光るきらめき

高橋一生、橋爪功、本田翼のトリオが約1年の時を経てお茶の間に帰ってくる。

2023年1月期に放送されたテレビ朝日系土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』の続編『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』が、4月13日よりテレビ朝日系でスタートする。しかも、初回は1時間スペシャルときた。あまりにも嬉しい知らせに、思わず飛び上がったのは筆者だけではあるまい。

本作は、地方都市で代々続く望月煙火店を舞台にした物語。幽霊になった父・航(橋爪功)と、「弟子にしてほしい」と突然家に押しかけてきた謎の女性・ひかり(本田翼)と奇妙な共同生活を送ることになった主人公・星太郎(高橋一生)の成長を、ほぼワンシチュエーションで繰り広げられる会話劇によって描き出した。

脚本を手がけたのは、『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)で向田邦子賞を受賞した橋部敦子。同作で小芝風花が演じた、感情を持たないはずのモノや植物の声が聞こえる少女や、『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)で高橋が演じたマイペースで変わり者の動物行動学者など、橋部が描く主人公の多くは繊細で、星太郎もその一人だ。望月煙火店の4代目である父・航の後を継いで花火師となったものの、コロナ禍も相まってほとんど家に引きこもりで、社会とのつながりは薄い。

そんな中、航が急逝。ひとり途方に暮れていた息子を心配し、幽霊になって現れたかと思えば、物語中盤で星太郎が生み出したイマジナリーフレンドならぬ、イマジナリーオヤジであることが明らかになる。母親が離婚に伴って家を出て行った9歳の時から、身体は成長しているのに心の成長が止まったままだった星太郎。そんな彼の時間は、たとえ幻想であっても父親と改めて本音で向き合うことで、寂しいという感情とともに置いてけぼりにしてきた幼い頃の自分を迎えに行き、少しずつ動き出していく。

その中でイマジナリーの航と10歳以上年下のひかりから時折からかわれ、思春期の子供みたいな反応を見せたりと、右往左往しながらも成長していく星太郎をおかしみを持って演じた高橋。航役の橋爪とは、2021年に上演された舞台『フェイクスピア』での共演以来、年齢やキャリアを超えて互いにリスペクトし合う仲だ。その確かな信頼関係が作り出す良い循環の中に本田が加わり、今まで見たことのないような臨場感あふれる丁々発止の会話劇が生まれた。

やがて、星太郎は「自分だけの花火をとことん極める」という一つの答えにたどり着く。そんな彼の花火が巡り巡って見知らぬ人々や、果てにはもうこの世にはいない幽霊たちの心を動かすラストで、エンターテインメントも含めた究極の自己満足の先にある他者との繋がりを描いた本作。心温まる古き良きホームドラマにファンタジーを掛け合わせた、まさに故きを温ねて新しきを知る物語だった。

続編では、タイトルにもあるように2番目の憂鬱が星太郎に訪れる。コロナ禍も明けて花火大会が復活し、仕事のモチベーションが高まっていたはずの星太郎。しかし、あることをきっかけにやる気を失い、再び自堕落な生活を送っていたところからのスタートとなる。

そこに、ひかりと幽霊の航、さらには野口ふみか(宮本茉由)が現れ、星太郎に弟子入りを志願するばかりか、いきなり結婚を申し込むという展開に。高橋とは『東京独身男子』(テレビ朝日系)や『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)で共演経験がある宮本。彼女が演じるふみかは、予告を見る限り、かなり積極的なタイプの女性に見える。ひかりにも強引さはあれど、ふみかのほうが陽気で湿っぽい星太郎とは正反対だ。そんなふみかが加わることで変化していくであろう関係性や会話のテンポにも注目しつつ、第2話以降30分という少し物足りなささえ感じるほど、花火のような一瞬のきらめきを見逃さないようにしたい。
(文=苫とり子)

© 株式会社blueprint