乃木坂46 筒井あやめの覚醒、青春濃度120%のMV……35thシングルアンダー曲「車道側」で更新する“最高”

乃木坂46の35thシングル『チャンスは平等』が4月10日にリリースとなった。80'sディスコの表題曲「チャンスは平等」を筆頭に、ジャジーHIPHOPの「あと7曲」、フォークソングの「サルビアの花を覚えているかい?」など、バリエーション豊かな収録楽曲のなかで、本記事で取り上げたいのはアンダー楽曲の「車道側」だ。

青春濃度120%の「車道側」MV

AKB48「前しか向かねえ」を代表曲に持つ古城康行が作曲を、最近では「おひとりさま天国」など乃木坂46の数多くの楽曲を手がけてきたAPAZZIが編曲を担当。先述した楽曲のほかにも童話を歌詞の下地にしたメルヘンチックかつ摩訶不思議な「ぶんぶくちゃがま」を例に、ある種の変わり種の多い攻めた印象のある今作において、「車道側」はどこか古きよき乃木坂46を思い起こさせる楽曲だ。全体的に懐かしいと思わせるその正体はボーカルエフェクトやイントロのシンセにあると踏んでいるが、ありもしない記憶を追想させるのが楽曲MVである。

監督は「アナスターシャ」をはじめとした2期生楽曲やシングル曲では「おひとりさま天国」など、ファンにはお馴染みの伊藤衆人。彼の特徴はメンバーのパーソナルを映像に色濃く反映すること。そのわかりやすい例が「おひとりさま天国」であるが、「車道側」では一人ひとりに細かい裏設定があることが明かされている。メンバーそれぞれがバスケットボール部、ダンス部、吹奏楽部、軽音楽部、帰宅部に分かれて学校生活を送る内容となっており、筒井あやめと小川彩が姉妹、松尾美佑がクラスのヒエラルキーのテッペンなど、ファン目線に立ったニヤリとする内容ばかりだ。メンバー自らが撮影したフィルムカメラでの写真も効果的にインサートされており、フォトジェニックかつ情報量の多い、そして大サビのダンスシーンへと結実していく青春濃度120%といったMVとなっている。

■筒井あやめ、覚醒の時

今回のMVとフォーメーションは、YouTubeチャンネルで配信された「乃木坂46分TV」にて初解禁となった。センターを務めるのは筒井。その両翼を菅原咲月、冨里奈央が担い、2列目は中西アルノ、小川、3列目は岡本姫奈、奥田いろはがそれぞれ4期生を囲う形で配置されている。卒業を控えた山下美月を送り出す表題曲の「チャンスは平等」に3期生全メンバーが参加していることはつまりアンダー楽曲は、4期生、5期生のみの体制ということを示してもいた。

番組では『乃木坂46 35thSGアンダーライブ』の開催がアナウンスされた。場所は乃木坂46単独としては初めての会場となる有明アリーナで、日程は6月7日、8日、9日。現在、乃木坂46は5月11日、12日の山下の卒業コンサートを筆頭に、6月28日には初となる香港での単独ライブ公演など、多くのライブを控えており、そのなかのひとつに『35thSGアンダーライブ』がある。

いずれ加入する6期生の存在を考えれば、4期生、5期生だけの『アンダーライブ』というのはこの期間だけという可能性も十分にあり得る。メンバーもそれを知ってか知らずか、今回のアンダーチームが楽しく、雰囲気も違うと口々に話している。それは「車道側」のMVが物語っており、『35thSGアンダーライブ』への期待に直結していくことでもある。

筒井は『アンダーライブ』初参加にして、ライブの座長を務める。これまでも毎回会場に足を運び、涙を流していたからこそ、「『アンダーライブ』のステージに立てるのが楽しみ」と筒井は意気込み、配信に参加していた4期生メンバーとの円陣の音頭を取っていた。4期生の最年少メンバーとしておっとりかつドライな性格が浸透している筒井。感情が表情に表れにくいタイプであるが、内に秘めた思いは熱い。

思い出すのは、かつて齋藤飛鳥が『乃木坂工事中』(テレビ東京系)のヒット祈願企画で筒井に送った言葉だ。かねてより筒井を「革命児」だと人一倍気にかけていた齋藤。齋藤がセンターを務めた卒業シングル曲「ここにはないもの」では筒井が裏センターに立っており、その期待の表れ、継承するポジションとも捉えられる。齋藤がヒット祈願で筒井に命名したのは「革命児のウォーミングアップ」であり、「いろんなことがうまくいった時、覚醒の日が訪れるはずです」と記していた。“アンダーセンター”ということをどのように捉えるかは人それぞれであるが、筆者は筒井がそれを前向きに受け止めているように思える。『34thSGアンダーライブ』での中西、『33rdSGアンダーライブ』での松尾といった後輩や同期が大きく成長してきたことを目の当たりにしてきたからこそ、自身も変わる時――覚醒の時であることをきっと予感しているのではないだろうか。

筒井のほかにも、28thシングル『君に叱られた』以来の『アンダーライブ』参加となる柴田柚菜、活動復帰後の久々のライブ参加となる金川紗耶、5期生では『アンダーライブ』初参加の菅原とそれぞれにとっても特別な思いのこもった期間になるだろう。およそ2カ月後、“史上最強”を更新する『35thSGアンダーライブ』が幕を開ける。

(文=渡辺彰浩)

© 株式会社blueprint