盗んだ救急車で入院先から11kmの脱走劇…69歳“両足骨折ジイさん”の呆れた言い訳

救急車を盗み大脱走(写真はイメージ)

「病院から逃げ出したくて盗んだ」

両足を手術したジイさんはこんな理由で入院先の病院から救急車を盗み、「脱走」した。

救急搬送のため、病院の前に止まっていた救急車(時価約2900万円)を盗んだとして、大阪市淀川区の屋根ふき工、亀井始明容疑者(69)が10日、窃盗の疑いで奈良県吉野署に逮捕された。

10日午前6時半、奈良県広域消防組合五條消防署の救急車が「南奈良総合医療センター」(大淀町)の専用出入り口に到着。救急隊員がストレッチャーで急病人を病院内に搬送した。救急車が止まっているのを見つけた亀井容疑者、車イスから下り、外に出て救急車に近寄った。エンジンはかけっ放しで車内には誰もいない。ロックもされておらず、キーはささったままで、ハッチバックの後部ドアも開いていた。

午前7時ごろ、亀井容疑者はそばを通りかかった女性に「後ろの扉を閉めてくれへんか」と頼み、運転席に乗り込んだ。女性が不審に思いながらドアをバタンと閉めると、亀井容疑者はアクセルを踏み込み、救急車は勢いよくその場から走り去った。

女性は慌ててその場から「隊員ではない男が救急車に乗り込み走り去った」と110番。患者の搬送を終えた救急隊員が帰ろうとして出入り口のドアを開けると、救急車はなくなっていた。

「犯人は5日から入院しとって、両足の手術を受けたばかりやった。ギプスはつけておらず、両足は包帯でぐるぐる巻きで、まともに歩くこともできず、院内も車イスで移動しとった。よっぽど逃げ出したかったんか、救急車に乗り込む時だけパワーが出てんやろうな。署に連行する際は、署員が体をかかえんと移動できひん状態やったからな」(捜査事情通)

救急車は京都府と和歌山県を結ぶ「京奈和自動車道」(無料区間)を走行。途中の橿原高田ICから先は未開通で一般道に合流するため、橿原署と高田署のパトカー3台が先回りして新堂ランプで待ち伏せをした。前方から救急車が走ってきたため、警察官が停車を求めると、亀井容疑者は救急車をUターンさせて脇道に入り、さらに転回させて逃走を試みた。両足が不自由なこともあり、その場でもたついている間に、警察官が運転席のドアを開け、エンジンを切り、亀井容疑者を車から引きずり下ろした。病院から約11キロ、36分間の逃走劇だった。

亀井容疑者は逃走中、救急車のバックミラーを引きちぎり、そのミラーで通信機器とモニターを叩き壊し、追跡を免れようとしていた。入院していた病室には、運転免許証と財布が残されていた。

亀井容疑者は「家の近くの病院に行きたかった。骨折しているので、退院させてくれへんかった」と不平不満を漏らしていたというが、そんなささいな理由で救急車を盗んで脱走劇を繰り広げるとは、困ったジイさんだ。

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