実は重要なキーパーソン? あの人はいったい…『銀河鉄道999』に登場する不思議な面々の謎シーン

『さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅』4Kリマスター版(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

松本零士さんの『銀河鉄道999』は、1977年に『週刊少年キング』(少年画報社)にて連載がスタートした作品だ。連載開始から45年以上経過しているのに、その人気は未だ衰えることがない。

そんな『銀河鉄道999』は、主人公の少年・星野鉄郎が謎の美女メーテルとともに、さまざまな惑星を旅していく物語だ。機械の身体をくれる星を目指して多くの惑星に立ち寄るのだが、物語の途中には重要なキーパーソンも登場する。しかしその人物の背景は基本的に明かされず「あの人はいったいなんだったのだろう?」と、あとになって思うシーンも多い。今回は『銀河鉄道999』に登場する、不思議な面々の謎シーンを紹介したい。

■鉄郎が生きるための道具すべてを与えてくれたおばさん「タイタンの眠れる戦士」

主人公・星野鉄郎の旅のスタイルといえば、大きな帽子とマントを被り、敵と戦うときは瞬時に銃を構えるイメージがあるだろう。その帽子と銃をくれたのがコミックス第1巻「タイタンの眠れる戦士」に登場する謎の“おばさん”である。

土星の衛星タイタンに到着した鉄郎とメーテルだったが、メーテルはいきなり何者かにさらわれてしまい、鉄郎は銃で攻撃されてしまう。鉄郎は気を失ったところをそのおばさんに助けられ、その後メーテルを助けに行こうとする。

するとおばさんは小舟を提供してくれたうえ、その後の鉄郎にとってマストアイテムになるつばのついた大きな帽子と、宇宙戦士の銃・“コスモガン”を渡すのであった。これにより鉄郎は敵を見事打ち抜き、メーテルを助けることができた。

無事に帰ってきてお礼をいう鉄郎に対し、おばさんは“それは宇宙戦士だった私の息子の形見さ!あんたが持っててくれれば…息子も喜ぶだろうさ”と、大切な帽子と銃を哲郎にあげるのであった。

のちに鉄郎はこの“コスモガン”によって、何度も命を救われることになる。このおばさんとの出会いがなければ、その後待ち受ける過酷な旅を続けることはできなかっただろう。

実はこのおばさんは、同じ松本零士さんの作品である『宇宙海賊キャプテンハーロック』に登場する「大山トチロー」の母という設定らしい。トチローはメガネをかけているものの、そのずんぐりむっくりした体型は鉄郎そっくり。おそらくおばさんは、亡き息子の姿を鉄郎に見たのだろう。

鉄郎とおばさんを結びつけてくれたトチローは、『宇宙海賊キャプテンハーロック』ではハーロックの親友として活躍した人物だ。『銀河鉄道999』のアニメ版にも重要人物として登場するシーンがあるので、気になる人はチェックしてみてほしい。

■車掌さんを激高させた唯一の女性「フィメールの思い出」

第7巻に登場する「フィメールの思い出」では、鉄郎・メーテルに次いで出番の多い999号の車掌を激高させた女性が登場する。

ある日、車掌は機嫌良く「フィメール」という女性客をもてなしていた。しかしフィメールは見た目も意地悪そうで、常に車掌や鉄郎に対し横柄な態度を取り続ける。

その後999号は脱線事故を起こしてしまうのだが、鉄郎とメーテルはフィメールが腰につけたコントロール装置でわざと脱線事故を起こしたことを知る。詰め寄る鉄郎だったが逆に攻撃され、さらにそれを助けたメーテルに対し、フィメールは思い切りビンタをする。

一部始終を見ていた車掌は、「もういい!! やめろ、フィメール!!」と激怒し、フィメールを殴る。そしてコントロール装置を取り上げ、“これ以上何かするなら規則通り宇宙へ放り出す”と、毅然とした態度で迫るのであった。

傍若無人なフィメールに対し車掌が怒っただけのエピソードに見えるが、実は2人には秘密があった。「思い出の顔」駅に降りたフィメールは、それまで付けていた醜いマスクをはがし、美女になって車掌に詰め寄る。

“あなたは昔から何も変わっていない!昔私に話してくれたあなたの夢や希望はいったいいつになったら実現するの!?”と、そう言って、さらにひどい罵詈雑言を浴びせて去っていく。その姿を車掌は寂しそうに見つめ、“あれは昔の私の恋人です…”と鉄郎に打ち明けるのであった。

昔は愛し合っていた車掌とフィメールだが、大人になるにつれ相手の望む生き方はできなくなっていったのだろう。“私は青春をすべてあの人に捧げました…そのことを私は後悔していません。思い出はいつまでもこの胸にあります…”そう1人つぶやく車掌のセリフがなんとも切ない。

フィメールは車掌にとって唯一無二の大切な過去を作り上げ、唯一本気で怒らせたたった1人の女性と言えるだろう。

■突如登場した999号のウエイトレス「クレア&メタルメナ」

銀河鉄道999号には、車掌のほかにウエイトレスが2人存在していたのをご存じだろうか。それがストーリー序盤「透明の女 ガラスのクレア」(第1巻)と、後半の「震動駅(12巻)」に登場する「機械人S・Fメタルメナ」である。

序盤に登場するクレアは、全身がクリスタルガラスでできた美しく優しいウェイトレスだ。999号が異次元空間のような場所を通る際、クレアは幻覚を見てしまった鉄郎を全身で助け、最後はガラスの破片となってしまう。

一方、後半に出てくるメタルナは食事をする車掌と鉄郎に対し、「うるさいっ!!」と一喝。驚いた鉄郎がモチをのどに詰まらせ危うく死にかけると「死ねばいいのよ、そんなガキ」なんて言う恐ろしい女性だ。

鉄郎がメタルメナと一緒にホテルに泊まった際には、メタルメナのいびきがうるさすぎて鉄郎が眠れないシーンもある。メタルメナ機械人間でありながらも豪快で、人間らしい一面を持っている。

メタルメナは登場当時、敵か味方か分からないような存在だった。しかし鉄郎がピンチに陥ったときには、メーテルの代わりにさりげなく鉄郎を助けている。そんなメタルメナは今後も999号で大いに活躍してくれそうだったが、登場シーンはたったの2話だけ。

クレアもメタルメナも999号のウエイトレスという重要な役割を担いながら、あっという間に活躍シーンが終わってしまうのは少々残念だ。ただし序盤に登場した鉄郎を助けたクレアのガラス破片は、物語終盤に大きな役割を担って再登場することとなる。

『銀河鉄道999』では、鉄郎たちが惑星に到着するたびに多くの登場人物が出てくる。その人物たちと出会うたび、鉄郎の成長はもちろん、メーテルの心情や車掌の考え方の変化が見られるのにも注目だ。

『銀河鉄道999』に登場する人物は、今回紹介したエピソード以外にも、読者の心を揺さぶる不思議な面々を持っている。自分にとってもっとも印象に残る人物は誰なのか、今一度作品を読み直してほしい。

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