[J1第8節]C大阪 1-0 川崎/4月13日/ヨドコウ桜スタジアム
J1の8節で行なわれたC大阪と川崎の一戦は、70分のレオ・セアラの決勝弾で、C大阪に軍配が上がり、ホームチームは悲願のリーグ制覇へ首位に浮上した。
勝利の立役者はL・セオラを筆頭に多くの選手を挙げられるが、今季川崎から加入し、古巣戦となった登里享平の存在感は際立っていたと言える。
左SBながら柔軟にCBやボランチの位置などにポジションを移してポゼッションの軸になりつつ、流れが悪い時間には周囲に声をかけて潤滑油としても機能。まさにチームのキーマンと呼べる仕事ぶりであった。
もっとも高卒から川崎一筋15年を貫いてきた男である。今年1月の移籍発表は驚きを持って伝えられ、本人も悩みに悩み、数えきれないほどの涙を流したうえでの決断であっただけに、初の川崎との対戦には、なんとも言えない不思議な感情があったという。
それでもC大阪サポーターからのエールを背に、自らを奮い立たせた。
「今はセレッソの選手。自分の目標を達成させるために来たので、この試合を乗り越えないとダメでした。しっかり勝点3につなげられたのは良かったですし、改めて対戦相手に限らずに勝ち続けていくチームを目指したいです」
その決意は1-0で勝利を飾った試合後にも表われていた。
勝点3獲得を素直に喜びつつ、早くも5敗目を喫し、16位に沈む川崎の選手たちには、なんと声をかければ良いか分からなかった。登里はホイッスルを聞くと、近くにいた盟友の川崎FW小林悠にそっと寄り添い、川崎の選手たちとも健闘を称え合う。
そして川崎ベンチ前で恩師の鬼木達監督と熱い抱擁を交わすと、目には光るものも見え、顔見知りも多い川崎サポーターの前に立つと、涙が溢れてきた。
「そんなキャラじゃないだろ」
ツッコまれながら、登里は感謝を胸に、C大阪で活躍するための決意をより強めたのである。試合後にはこう明かしてくれた。
「(年末年始で川崎サポーターには)直接(移籍の)挨拶をできていなかったんです。それでも温かく迎えてくれた。15年もいたら馴染みある顔、応援してくれていた人を覚えています。そのなかでも、セレッソの僕のユニホームやタオルマフラーを買ってくれている人もいた。改めて自分の築いてきたものに胸を張れると思いました。そしてそれをセレッソのためにも財産にしていきたいです」
古巣の川崎への感謝と、C大阪をクラブ悲願のリーグ制覇へ導く決意表明。涙が彩ったその光景は、実に美しいものであった。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)