【公立夜間中学開校】「何か見つかるかも」不登校の学びの場に

「夜間中学で夢を見つけられたらいいな」と話す安斎さん

 「夜間中学で夢を見つけられたらいいな」。16日に開校する県内初の公立夜間中学「福島四中天神スクール」(福島市)に入学する安斎陽海(ひうみ)さん(19)は、新たな気持ちで晴れの日を迎える。

 中学2年の冬、友達と合わなくなり、学校に行きたくなくなった。春休みを終えて進級するはずだったが、中学校に安斎さんの姿はなかった。不登校となり、高校には進学しなかった。

 人と関わることが少なくなり、自分なりに家で勉強したり、パソコンを見たりしながら時間は流れた。気付けば19歳。やりたいこともない、夢もない。何かしないと―。そう思っていた時に、母親から勧められたのが同校だった。

 もともと外に出ることは嫌いではなく、「こういう機会がないと、社会と関わるチャンスがもうないかもしれない」と思った。3月中旬に気胸で入院し、体が同校への入学を拒否しているのかと思ったが、決意は揺るがなかった。「さまざまな年代の人と関わるのなら、何か見つかるものがあるかもしれない」。真っすぐな瞳には未来への希望があふれていた。

 夜間中学は、不登校だった人の学びの場としても重要な存在となっている。県教委によると、県内の公立小中学校の不登校の児童生徒は3492人(2022年度)に上る。小学生は1041人、中学生は2451人で、いずれも過去最多を更新し、県教委も「義務教育を受けられなかった人にとって重要な役割を持つ。不登校も含め、学び直しのセーフティーネット(安全網)として機能してほしい」(義務教育課)と同校に期待する。

 生徒の意欲尊重

 同校には、不登校の生徒の支援に携わってきた山田光裕教諭(60)が在籍し「こちらから教えたいではなく、学びたい意欲を尊重し、寄り添った指導に力を入れていきたい」と力を込める。

 山田さんは、福島市の信陵中で不登校の生徒らの居場所となる「スペシャルサポートルーム(SSR)」での活動に携わってきた。天神スクールでは、不登校の生徒一人一人と向き合ってきた経験を生かし、安心して学べる環境づくりを目指すという。「嫌にならずに学習してもらうことが課題だ。これまで生徒から教わることがたくさんあった。天神スクールでも、生徒から新たな学びを得られるかもしれない」と意欲を見せる。

          ◇

 スペシャルサポートルーム(SSR) 2019年に県が始めた事業で、不登校などの児童生徒が安心して過ごせるように専任の教員を配置した教室。小中学校が対象で、自分たちで決めた時間割などを基に学習を進める。県教委によると、事業を始めた19年は7校が導入していたが、今年から30校が導入している。

© 福島民友新聞株式会社