世帯年収3,000万円の40代夫婦、品川区に買った高級マンションを巡って大モメ…離婚調停を長引かせないために「最初にやるべきだったこと」【持ち家離婚カウンセラーが助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

今回の相談者は、40代会社員のMさん。夫婦の世帯年収が3,000万円を超えるパワーカップルで、夫婦共有名義・ペアローンで高級マンションを購入しましたが、離婚後にそのマンションをどうするかで意見が割れ、長い離婚調停を経て裁判にもつれこんでいます。Mさんはなぜこのような事態に追い込まれたのか、持ち家離婚カウンセラー/夫婦問題カウンセラー・入江寿氏が解説します。

ある日、家に帰ると妻はおらず、LINEも既読スルー、話し合いの余地はなかった

持ち家離婚カウンセラー・夫婦問題カウンセラーとして数多くの相談を受けている筆者のもとに、会社員のMさん(男性・43歳)からこんな問い合わせのメールがきました。

「かなり複雑な案件なのですが、離婚調停が長期化しています。一番問題になっているのは、妻と共有名義、ペアローンで購入したのマンションのことです」

話によると、Mさんと妻のR子さんが結婚したのは約5年前。仕事関係で知り合った二人は、仕事の業種が近いということもあり、出会った当初からとても気が合いました。

何度か食事に行くと、仕事だけでなく趣味のゴルフの話も合い、自然な流れで結婚することになりました。R子さんの仕事に熱心で、自分の気持ちをストレートに伝えるところにとても惹かれていたそうです。

結婚して、最初はとてもスムーズにいっていました。休みの日は一緒にゴルフに行ったり、おいしいお酒や食事を共にしたり、笑いの絶えない理想の家庭でした。

また、MさんもR子さんも高収入で、二人の年収を合わせると3,000万円近くになる、いわゆる「パワーカップル」でした。「楽しく暮らせる家を買おう」と、品川区の高級マンションを共有名義、ペアローンで買うことにしました。

しかし、そんな日々は3年も続きませんでした。2人とも仕事では責任あるポジションにつき、ハードワークの日々。日常生活でもお互いに対するイライラが募り、頻繁に言い争いをするようになっていました。

そんなある日、Mさんが仕事から家に帰ると、R子さんの身の回りの物が忽然となくなっていました。R子さんはMさんに黙って、一人で家を出て行ってしまったのです。

MさんはすぐにLINEをしましたが、R子さんは既読スルーでまったく読んでいる気配はありません。電話ももちろん着信拒否されています。話し合いをする余地はありませんでした。

共有名義、ペアローンで買ったマンションのことで意見が分かれ、調停が長期化

それから約2ヵ月たって、Mさんのもとに裁判所から離婚調停の書類が送られてきました。「ああ、こうなってしまうのか…」絶望の淵に立たされた気持ちになったMさん。

仕事にも集中力がなくなり、寂しさと悲しさとでいっぱいになりました。離婚調停がスタートすると、そこに苛立ちという感情も加わりました。

調停の場では攻撃的な態度を取られ、Mさんにとっては理解不能なことばかりだったそうです。とくにモメてしまったのが、2人の共有名義で、ペアローンを組んで買った高級マンションのことです。R子さんは「売却して財産分与したい」、Mさんは「住み続けたい」と平行線の状態でした。

弁護士もいれての調停でしたが、あいにく弁護士は住宅ローンのことは専門外。Mさんが家に住み続けるための対策を打つことはありませんでした。

平行線で調停が進む中、Mさんは精神的に追い詰められてきていました。そして、調停は不成立になり裁判へと移行していったのです。そして、妻が出て行ってから約2年後、やっと筆者である入江を知り合いから紹介され、相談をしてきたわけです。

とにかく、もめているポイントであるマンション問題を解決しなくてはなりません。Mさんの「今の家に住み続けたい」という意思を再度確認し、必要書類を揃えてもらい、住宅ローンの事前審査をすることになりました。

Mさん・R子さんは2人とも高収入で、その収入に見合う高額なマンションを購入していました。購入して3年ほどのローンをMさんが1人で借り換えるのは、数字から見てとても厳しいものがありました。

Mさんは高収入ではあるものの、生活コストも高い上に、離婚調停での弁護士費用などにもお金を使っていたので、預貯金がふんだんにあるわけではありません。

借り入れ可能金額の上限まで借り入れをして、それでも不足する部分は両親から借りるということで、ローン返済についてはなんとか目途がつきそうなところまできました。

しかし、すべてが解決したわけではなく、Mさんが筆者のところに相談にみえてから約2年が経とうとしていますが、離婚裁判は今なお続いています。

Mさんが長期間の離婚調停から続く裁判とR子さんの理不尽さに疲れ切っているのは明らかで、最近では、「いろいろ計算をして返済の目途はついたけれど、本当にこんなにたくさん住宅ローンを払っていけるだろうか」と、不安を口にするようになってきました。

持ち家離婚カウンセラー入江のアドバイス

弁護士は、住宅ローンに関しては専門外です。争いが始まる前に、筆者のような専門家に相談してくださっていたら、こんなに長く離婚調停→離婚裁判にはならなかったと思います。

これはどなたにも言えることなのですが、「離婚=弁護士に依頼」と考える前に、まずは2人で話し合いができていたらとも考えます。なぜならば、弁護士依頼をしてしまうと、紛争性が増してしまうからです。相手の気持ちを受け止める、という思いは少なくなり、勝ち負けに焦点がいってしまいます。

そして、依頼する弁護士によっても個性が違いますし、進め方も異なります。そのため、筆者のところにくる相談者には、このようにお伝えしています。

「最初に、解決すべき問題のすり合わせを十分にしてから弁護士を選んでください。1人だけに相談するのではなく、2~3人の弁護士に相談をしてみて、自分との相性が合う人を選ぶのがおすすめです。傾聴が得意な人、クライアントに寄り添うのが得意な人、精神的な部分にまで寄り添ってくれる人、相手との交渉強い人、裁判に強い人など、弁護士といってもさまざまですから」

また、Mさんと同様に共有名義、ペアローンを組んだ家を自分が引き取って住みたいという場合には、早めに住宅ローンの事前審査をして、1本化できるかどうかを確認しましょう。

この際に、ご自身で銀行探しなどをしないことも大事なポイントです。一度審査でNGが出てしまうと、筆者のような専門家が入って後から交渉しても覆す事ができないからです。

Mさんにおいては、楽しいはずの結婚、エンジョイするはずだった人生が、3年以上も離婚調停、離婚裁判にかかってしまっているこの状況から、早く脱してほしいと願うばかりです。

入江 寿

持ち家離婚カウンセラー/夫婦問題カウンセラー

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