原発事故避難アプリ配信 東海第2 茨城県、広域訓練で検証へ

県が配信を始めた原発事故などに備える原子力防災アプリ=県庁

日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村白方)で重大事故が発生したときに備え、茨城県が開発したスマートフォン用アプリの配信が始まった。事前に登録すると、居住地ごとの避難情報や避難行動が表示される。普及を目指し、同県は本年度、アプリを活用した広域避難訓練を行い、使いやすさなどを検証する。

県原子力安全対策課によると、「いばらき原子力防災アプリ」は、3月下旬にiPhone(アイフォーン)向け配信が始まった。Android(アンドロイド)向けは近日公開を予定する。無料でダウンロードできる。事前に居住地を登録し、原子力災害が発生すると、青色の画面が赤色に切り替わり、個別の避難情報が表示される。

東海第2原発では、広域避難計画の策定が義務付けられた半径30キロ圏の14市町村に約91万6千人が住む。炉心の冷却機能が喪失した場合、半径5キロ圏(PAZ)には即時避難の開始と広域避難先が案内され、バスで移動する住民は近くの「一時集合所」が示される。一方、半径5~30キロ圏(UPZ)には避難指示が出るまで屋内退避を促す案内が届く。

こうした機能を有効に活用してもらうため、30キロ圏の14市町村が今秋以降に実施する広域避難訓練でアプリを使う。訓練では、同じ市町村内でも地区によって異なる避難先や避難ルート、一時集合所などをアプリを通じて個別に示す。

県は訓練後、参加者を対象にアンケートを行う方針。使いやすさや表記の分かりやすさなどを調べ、必要に応じてアプリを見直す。端末で個別の情報発信を行う県や市町村職員の操作の習熟度アップも訓練の目的の一つとする。

災害時の情報発信はこれまで、防災行政無線や緊急避難メールなどを活用してきた。ただ、市町村単位となるため、住民から「自分の避難先が見つけづらい」との声が出ていた。

既に同様のアプリを開発した鳥取県や鹿児島県では、ダウンロード数が伸び悩んでいるという。県は普及を促進するため、訓練を機にアプリ導入を住民に促していく考え。

同課は「いざという時に備えてアプリに慣れてもらい、避難行動の精度を上げることが、広域避難訓練の実効性向上につながる」としている。

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