【子育て支援金】2026年度は国民1人あたり月250円程度を上乗せ徴収…どうなる、異次元の少子化対策

中学校3年間の学費を公立&私立で比較:2024年12月に前倒しの児童手当&援助制度

春休みも終わりを迎え、子どもたちが進学や進級を迎える季節になりました。

進学や進級は明るい話題である一方、何かとお金がかかる時期なので頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。

2024年3月28日、新年度予算成立を受けて岸田総理が記者会見を行いました。「物価上昇を上回る賃上げを定着させる」という内容のものもあり、本当に賃上げがされるのか?と興味を持った方も多いかもしれません。

物価上昇を受け、今後の教育費への不安を感じる親が多いようです。また、具体的に教育資金がどのくらい必要となるかわからないことも不安材料となることでしょう。

そこで今回は、文部科学省のデータから、中学校3年間でかかる学費の総額について解説します。また、教育資金の確保をサポートする支援制度についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

【最新】加速化プラン「若い世代の所得向上」に向けた概要をチェック

まずは、こども家庭庁のこども未来戦略 「加速化プラン」 施策から、若い世代の所得向上に向けた取り組みに絞って見ていきましょう。

こども未来戦略 「加速化プラン」 施策のポイント(一例)

児童手当の拡充:拡充後、初回の支給は2024年12月

2024年12月(2024年10月分)から児童手当の拡充が行われます。

所得制限が撤廃されたことに加え、第1子・第2子は高校生年代までと受け取れる時期が変更になりました。さらに、第3子以降は月額3万円を受け取れるようになります。

3人以上子供がいる家庭では、児童手当受給の総額が大きく増額することになりますね。児童手当については、記事の後半でさらにまとめています。

妊娠・出産時の支援を強化:2025年度から制度化

2022年度から出産・子育て応援交付金として、10万円相当の経済的支援が行われてきましたが、2025年度からは制度化されることになりました。

また、2023年度から実施中である「出産育児一時金の引き上げ」をパワーアップさせ、費用の見える化・環境整備を進め支援の一環とする方向性で話が進んでいます。ちなみに以前は42万円でしたが、現在50万円の支給があります。

さらに、2026年度を目処に出産費用の保険適用を検討するとのことです。

住宅支援・高等教育への負担軽減

子育て世帯への住宅支援として、公営住宅等への優先入居や、2024年2月から実施されているフラット35の金利引き上げが行われています。

また、大学等の高等教育費の負担軽減のための施策として、2024年度以降から以下のような内容が実施されます。

  • 2024年度~:給付型奨学金等を世帯年収約600万円までの多子世帯、理工農系に拡充
  • 2024年度~:貸与型奨学金の月々返還額を減額できる制度の「収入要件」等を緩和
  • 2025年度~:多子世帯の学生について、授業料等を無償化

こども家庭庁の施策から、子育て世帯への支援が手厚くなってきていることがわかりました。

次の章からは、実際に我々が納める「支援金」制度の負担額をみていきましょう。

【子育て支援金】どうやって納めるの?実際の負担額はいくらなの?

この章では、実際に我々が納める「支援金」制度のお金の仕組みをご紹介します。

【徴収の方法】公的医療保険に上乗せして納める

「子ども・子育て支援金」は社会全体で子育てを支える理念のもと、個人や企業などから公的医療保険料に上乗せして集めるもの。

2028年度には、新たな少子化対策の財源3.6兆円のうち総額1兆円の「支援金」を個人と企業から集める予定です。

実際に納める支援金の負担額は所得に連動し、医療保険料の5%ほどになる見込みとのこと。会社員と自営業者など加入する医療保険の種類によっても異なるため、注視する必要があるでしょう。

【政府の試算】国民1人あたりの平均:2026年度は月250円程度

子ども・子育て支援金に関する試算(医療保険加入者一人当たり平均月額)

それでは、一人当たりいくら負担する形となるのでしょうか。政府の試算で詳しく見ていきます。

政府は資料のなかで、徴収開始される2026年度には全制度平均で月250円程度、満額となる2028年度は、ひと月450円程度になるという試算を発表しました。

具体的な制度名で分けて考えられたシミュレーション結果は以下の通りです。

【2026年度:上乗せ見込みの保険料額】※平均的な所得の場合

  • 中小企業の協会けんぽ:被保険者一人当たり400円
  • 大企業の健保組合:被保険者一人当たり500円
  • 公務員などの共済組合:被保険者一人当たり550円
  • 国民健康保険(市町村国保):一世帯あたり350円
  • 後期高齢者医療制度:200円(※低所得者の軽減措置あり)

子育てへの支援が拡充されているなかで、実際にかかる費用が気になるところ。

次の章では、子供が多くの時間を過ごす学校にかかる費用がどれくらいなのかについて見ていきましょう。

中学は小学校より学費負担が「約1万5000円」も増える?

公立の小学校に通う場合の学費は毎月約3万円ですが、公立中学になると毎月約4万5000円となり、約1万5000円の負担増となります。

最近では、物価上昇のあおりを受けて習い事の料金も上がっています。このことから学費の負担を実感しているご家庭も多いことでしょう。

文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、中学校に通う子ども1人当たりの学習費総額(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、公立では年間53万8799円、私立では年間143万6353円でした。

これを1ヶ月当たりに換算すると、公立は月約4万5000円、私立は月約12万円の学費がかかります。また、中学校生活3年間では、公立は161万6397円、私立は430万9059円となります。

公立に比べて私立の学費が高くなっており、公立中学に比べると約2.7倍もかかります。

では、具体的にどういったところで学費に差がつくのでしょうか。ここからは同調査から、公立と私立の費用について解説し、学費をサポートする制度についてもご紹介していきます。

【学費一覧表】中学校3年間でかかる学費の総額は?

同調査から、中学校の学習費を公立と私立に分けて一覧表にしました。

<中学校でかかる年間の費用>

令和3年度子供の学習費調査(中学校)
  • 公立…53万8799円(13万2349円、3万7670円、36万8780円)
  • 私立…143万6353円(106万1350円、7227円、36万7776円)

※()内は学校教育費、学校給食費、学校外活動費の順

公立中学は、学習費総額53万8799円のうち、学校教育費が13万2349円、学校給食費が3万7670円、習い事などの学校外活動費が36万8780円かかっています。

私立中学は、学習費総額143万6353円のうち、学校教育費が106万1350円、給食費が7227円、学校外活動費が36万7776円かかっています。

さらに、私立中学や中高一貫校を受験する場合には受験対策が必要になります。「中学から先はずっと私立」というケースでは、小学校中学年頃から学費負担が増える可能性は捨てきれません。

私立への進学を予定しているなら、これらの費用をどのように捻出するのかご家庭で話し合っておくとよいでしょう。

次の章からは、2024年12月に前倒しが決定した「児童手当」の内容をおさらいしていきます。

2024年12月に前倒し「児童手当」拡充、変更点をおさらい

子育て世帯を支える制度のひとつが「児童手当制度」。2023年10月末の政府与党政策懇談会では、児童手当の拡充開始を当初の2025年2月から2ヶ月前倒しすることが表明されました。

拡充された制度を反映した児童手当は2024年12月に初支給が行われるとされ、今後の動向が注目されています。

2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」を踏まえ、若年層の人口が急激に減少する2030年代に入るまでに現実的で具体的な対策を実施する姿勢を見せる日本政府。

改めて「児童手当」制度の主な変更点をおさらいしていきましょう。

「児童手当」における所得制限の撤廃

2023年8月末に公表された、こども家庭庁「令和6年度予算概算要求の概要」においても「児童手当の所得制限の撤廃」が明記されています。

結果、所得を問わず多くの家庭で子どもために使えるお金が増える可能性があるでしょう。

第3子以降に支給される月3万の「児童手当」

現行の児童手当の支給額は「3歳未満が一律1万5000円」「3歳以上〜中学卒業まで1万円、ただし、第3子以降は1万5000円」と定められていました。

今後、第3子以降は3万円と倍増で支給される予定です。多子家庭にとって、かなり大きな変更点といえるでしょう。

【子育て】子どもの教育資金をサポートする施策

ここからは、子どもにかかる教育資金をサポートする施策をご紹介していきます。

就学援助制度

就学援助制度は、経済的な理由で学校に通うことが難しい児童や生徒の保護者に、授業料以外の教育費を支援する市区町村の制度です。具体的には、学用品費や給食費、修学旅行費などが援助されます。

対象は経済的に困窮している家庭で、各自治体が定める基準に該当する家庭が対象です。

ただし、自治体ごとに基準が異なるため、詳細は自治体のウェブサイトをチェックするか、学校から配布される資料を確認することが重要です。

受験生チャレンジ支援貸付事業

「受験生チャレンジ支援貸付事業」とは、東京都内の中学3年生や高校3年生などの受験生向けの制度です。この制度では、学習塾や受験対策講座、通信講座などの受講料や、高校や大学の受験料などが負担できない家庭に、無利子で必要な資金を貸し付けます。

学習塾などの受講料については最大20万円まで、高校受験料は2万7400円まで、大学などの受験料は8万円までの貸し付けが可能です。

対象となるのは、一定の所得以下の世帯で、対象の高校や大学に入学した場合には、返済が免除される手続きがあります。

公営塾・貧困世帯向け無料塾

「公営塾」とは、地方自治体が運営する学習塾のことです。経済的な理由で民間の学習塾に通えない子どもたちが、無償または破格の料金で通える場所です。全国の約1割の自治体に設置されています。

例えば、東京都足立区では、「足立はばたき塾」という公営塾が中学3年生を対象に開催されています。これは、成績上位で学習意欲も高いが、家庭の事情などにより塾等の学習機会の少ない生徒を中心として、難関校への進学を目指す塾です。

なお、貧困世帯向けの無料塾は自治体だけでなく、民間の法人が運営している場合もあります。

まとめにかえて

今回は政府から試算結果が発表された「子育て支援金」や中学校3年間にかかる学費とあわせて、2024年12月に前倒しされた「児童手当」など、子どもたちの生活を支援する施策について紹介してきました。

物価上昇が加速している日本では、教育費以外にも住宅購入資金や老後の資金など、現役世代から備えておかなければならないお金が数多く存在します。

公立と私立、どちらの中学校に通うとしても、どのくらいの費用がかかるのか事前に把握しておくことは大切です。

子育て支援については自治体ごとに異なる点もあるため、お住まいの自治体がどのようなサポートを実施しているのかも知っておくと安心ですね。

参考資料

  • ソニー生命保険株式会社「子どもの教育資金に関する調査2024」
  • 内閣府「児童手当制度の概要」
  • 内閣府「子ども未来戦略方針」
  • こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について」
  • こども家庭庁「令和6年度予算概算要求の概要」
  • こども家庭庁「こども未来戦略方針(リーフレット等)」
  • 文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
  • 東京都福祉局「受験生チャレンジ支援貸付事業」
  • 足立区「足立はばたき塾」
  • 文部科学省「就学援助制度について」

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