被害にあった建物の多くは「旧耐震基準」 無防備になる場所を補強する方法も【暮らしの防災】

地震への防災対策は、自分や家族の命を守ること、1日の中で滞在時間が長い「家」を
安全にするところから始まります。能登半島地震の被災地では、能登の文化と言える「古民家」がぐしゃっと崩れている姿が印象に残りました。

能登の古民家の多くは太い柱がない

震度7に耐えた古民家もたくさんありました。しかし、風情ある街並みの中、ぐしゃっと崩れた古民家は、能登の文化が破壊されたようにも感じられました。 能登の古民家の多くは1階南側が全面窓で、太い柱がありません。 その中は大広間。冠婚葬祭やお祭りの時は窓を開け放ち、親族や近所の人が大集合する「交流の場」だそうです。 屋根には風や雪に強いが重い「能登瓦」。おそらく現在の「耐震基準」を満たしていません。

耐震補強には数百万円かかることも

耐震補強すればいいのですが、高齢化で大きな家に高齢者がひっそり住んでいる状況で、数百万円かかる工事をする余裕はありません。 街道沿いに古民家が並んでいる風景に出会うと「風情があるなぁ」と感じますが、実は災害に弱いという側面もあったのです。

耐震工事では行政から補助金が出るケースも

耐震基準には、 ■旧耐震基準(1950年に定められる) 震度5程度の地震に耐えられる ■新耐震基準(1981年に定められる) 震度6~7程度の地震では崩壊・倒壊しない耐震性 ■2000年耐震基準 地盤に合わせて基礎を作る、接合部を金具で固定する、壁をバランスよく配置し、家全体の耐震性を高める 以上の3つがあります。能登半島地震で大きな被害にあった建物の多くは「旧耐震」の建物でした。 「古民家」だけでなく「昭和の文化住宅」も壊れていました。「2000年耐震基準(改正)」を満たした建物は大丈夫だったと言います。 古い建物は耐震工事をすればいいのですが、家全体を行うとそれなりの金額になります。 そのような余裕が無い場合は、滞在時間の長い居間・リビングだけ、無防備になる寝室だけを耐震補強する方法もあります。 行政から補助金が出るケースもあります。市役所、町村役場に相談してみて下さい。 耐震不足で壊れた家の修理費と、事前の耐震対策費は、事前のほうが相対的に安くあがります。 また命も守られます。家へのダメージが小さければ避難所に行かずに済むかもしれません。 耐震診断で自分の家の災害リスクを把握し、対策を施すのが賢明です。 ◇ 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。 ■五十嵐 信裕 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。NPO法人環境防災総合政策研究機構の特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。

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