両腕がつるアクシデントに耐えきった瞬間 滲み出た王者の精神力、耐える体操・橋本大輝の表情

鉄棒の着地で、歯を食いしばって苦悶の表情をみせた橋本大輝【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム

体操の個人総合全日本選手男子決勝が14日、パリ五輪代表2次選考会を兼ねて群馬・高崎アリーナで行われた。すでに同代表に内定している橋本大輝(セントラルスポーツ)が、合計176.164で10連覇の内村航平以来となる4連覇。両腕がつるアクシデントも2位に4点近い差をつけた圧勝だった。演技最後のシーンに見えたのは絶対王者の精神力。着地直後に見せた苦悶の表情に王者のプライドがにじみ出ていた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

最後は痛みを堪え、歯を食いしばった。最終種目の鉄棒。橋本は着地で少しバランスを崩した。両足を揃え、苦悶の表情。演技終了後は腕を押さえながら、観客席へお辞儀した。

実は演技の途中で両腕がつっていた。終盤の大車輪でバランスを崩したものの、落下はなく全種目を完遂。1つ前の平行棒でも同じ症状が出ていた。トレーナーに腕の張りを伸ばしてもらうなどして対応。演技直後に漏らした。「種目を最後までやり遂げるのがしんどかった」

会見では最近の課題に試合での“つり癖”を挙げたが、「鉄棒の着地が乱れたことをそのせいにするのは言い訳ですね」と笑顔で否定。「つっても出来るようにすれば良い」とアクシデントすら自分のものにするエースの強気な姿勢を見せた。

2位の岡慎之助(徳洲会)の172.264と4点近い大差をつけて優勝しても、本人は「鉄棒さえ出来ていれば89点に行ったと思うんですよね」とさらり。目標に届かなかった決勝の87.965点を悔しがった。

大きなミスをしてもおかしくない場面でやりきった。王者の「やるしかない」という上を向く強い精神力、プライドが宿った着地だった。

THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa

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