相談件数が急増中!拡大する「トコジラミ」被害、もし刺された場合はどうすればいい?

Tharakorn/gettyimages

刺されると強い痒みや皮膚炎を引き起こす「トコジラミ」。海外での流行が注目されていましたが、国内でも被害が拡大しているとご存じですか。

トコジラミに刺されると起こる症状や国内での被害状況などについて、皮膚科専門医でつくば・土浦鶴町皮膚科クリニックの副院長、鶴町宗大氏に詳しく聞きました。

Q.トコジラミとはどのような虫ですか。刺されるとどのような症状が出ますか

トコジラミとは、南京虫(なんきんむし)とも呼ばれる、茶色の体長5mm程度の扁平な虫です。人や動物の血液をエサとしており、夜間に部屋の隅から出てきて就寝中に吸血を行います。日本国内では戦後しばしば見られた害虫でしたが、殺虫剤の普及や生活スタイルの変化などでその被害は減少していました。

しかし昨今、日本国内でのトコジラミ被害が急増しています。コロナの落ち着きによって日本を訪れる外国人が増えたこと、海外に行く日本人が増えたことが原因と考えられています。海外渡航者の荷物や衣服にトコジラミの卵や幼虫などが付着したまま、来日・帰国した結果、国内での被害が拡大しているというわけです。

トコジラミに吸血される部位は手・足・首など露出部に多く、吸血された部位にとても強い痒みと共に、赤みや腫れなどの皮膚炎を認めます。症状がひどい場合には水ぶくれ(水疱)ができることもあります。

強い痒みが寝不足につながるケースもありますが、初めて刺された人の中には症状がでない人もいます。

Q.トコジラミに気をつけたほうがいいのは、どのような場所ですか

Tero Vesalainen/gettyimages

トコジラミは比較的温暖な地域を中心に広く分布しており、日本をはじめとするアジア、北米、南米、アフリカ、ヨーロッパなど世界中に生息しています。最近では、フランスや韓国で大量発生のニュースが報道され、その注目度も上がっています。

海外渡航において宿泊施設にトコジラミが生息している場合や、海外から購入した家具及びインテリアに加えて、海外からの段ボールに付着する可能性も否定はできないので注意が必要です。

Q.日本国内でのトコジラミの被害状況について教えてください

トコジラミ駆除を担っている「東京都ペストコントロール協会」への東京都内のトコジラミ相談件数を見ると、2014年から2018年は150件前後であったのが、2022年は約250件、2023年は300件以上に増加しています。

同様に、「大阪府ペストコントロール協会」への大阪府のトコジラミ相談件数も、2022年は約270件、2023年は300件を超えて増えており、被害が国内でも拡大していることが分かります。

Q.トコジラミを自分で見つける方法はありますか

Hit Stop Media/gettyimages

トコジラミの生息場所は、暗くて狭い隙間です。具体的には、昼間はベッド、ソファ、天井、机、戸棚などの隙間や節穴などに潜伏しています。そして、夜になると吸血のためにそこから出てきます。

卵から成虫までの期間は約40日で、成虫になってからの寿命は3〜4カ月です。メスの成虫は毎日5個程度の卵を産み続け、その数は生涯で約500個にも達します。これらの卵は潜伏場所の周辺部に集まって産みつけられていることが多いです。

トコジラミの数が少ない間は発見が難しいですが、増えると多数の糞による黒っぽい染み(血糞:けっぷん)が潜伏エリアで目立つようになります。

Q.トコジラミに刺されたらどうしたらいいですか。また、予防法はありますか

トコジラミに刺されている瞬間には、痛みや痒みを感じることはほとんどありません。吸血によりトコジラミの唾液が人体に注入され、それに対するアレルギー反応が起こって、赤みなどの皮疹や痒みが生じます。症状に対しては、抗ヒスタミン剤の内服やステロイド外用剤が効果を示しますので、皮膚科などの医療機関の受診をお勧めします。

トコジラミに対する駆除方法としては、家庭用の殺虫剤に強い耐性を有している場合も多いので、専門の駆除業者に依頼するのをお勧めします。

そして、旅行などで外泊する際には、ベッドやソファなどをよく観察して、トコジラミの糞や卵などがないかを確認してください。宿泊先では、荷物は床に置かずに机やラックなどに置き、付着のリスクを軽減することも必要です。重ねて、自宅に持ち込まないのも重要ですので、旅行から帰宅した際には荷物にトコジラミが付着していないかも、よく確認してください。

教えてくれたのは・・・

鶴町宗大 副院長

医療法人 鶴町会 理事。つくば・土浦鶴町皮膚科クリニック 副院長。獨協医科大学医学部卒業後、順天堂大学浦安病院 皮膚科教室にて研鑽を積み皮膚科専門医を取得。現在、つくば・土浦鶴町皮膚科クリニックの副院長として、皮膚科・美容皮膚科を通じて、健康で美しい肌の実現を目指して、肌の悩みをトータルにサポートできるよう診療を行っている。皮膚科専門医、医学博士の資格を保有。

「つくば・土浦鶴町皮膚科クリニック」のホームページはこちら

Instagramはこちら

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

© 株式会社ベネッセコーポレーション