「不審者は春になると増える」は本当? 実際のデータを見てみると……

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「春になると変質者が増える」という。実際わたしも学生の頃、春の夜に露出狂に遭遇し大変な目にあったことがあるが、そうした犯罪が起きるタイミングは、季節と関係があるのだろうか(文・取材:辻ひかり)。

公然わいせつと不同意わいせつのデータは……

さっそくデータを見てみよう。露出狂は「公然わいせつ罪」、同意のない性的行為は「不同意わいせつ罪(強制わいせつ罪)」にあたる。

警視庁が発表している都内の「公然わいせつ」の2022年の認知件数は、1月と2月が8件ずつだったが、3月と4月は12件ずつ、5月と6月は21件ずつで、暖かくなるほど増えることがわかる。7、8月も多いまま推移し、最も多かったのは9月で31件だった。

「強制わいせつ」は、1月48件、2月42件に対し、3月には50件に増えた。4月はやや減少したものの5月は62件だった。こちらも最も多いのは9月で72件だった。なお、認知件数とは、被害届が出されて警察が事件として認知した数だ。

全国のデータも見てみる。法務省の「犯罪白書」(2023年)で、「強制わいせつ」の2015年から2022年の認知件数が発表されている。8年間の平均値を算出した結果、1月は315件、2月は331件、3月は385件、4月が411件と気温が上がるにつれ増え、最も多かったのは7月で533件だった。

こういった犯罪は実際、「冬に比べれば、春の方が多い傾向」にはありそうだ。

不審者情報は暖かくなると増える

卑猥な言葉をかけてきたり、あとをつけてきたりといった不審者も、やはり春になると増えるようだ。警察では事件の前兆として捉え、18歳以下の子どもに対する上記の行為を「声かけ事案」と呼び注視している。

公表されているデータを調べてみた。静岡県警では、2023年の「声かけ事案」の月別の認知状況を発表している。1月82件、2月97件、3月は減少したが、4月121件、5月136件、6月143件だった。7月以降はぐっと下がり、9月に122件を数えたものの5~6月には及ばなかった。

埼玉県警でも同年の「声かけ事案」の月別の認知状況を公表している。1月は218件、2月と3月はやや減少したものの、4月に257件に増えた。5月は289件、6月は307件となっていた。いずれも夏休み期間中は減り、秋は4月と同レベルだった。

とはいえ、不審者が春になると増える理由は明らかではない。そこで全国の不審者情報を扱っている日本不審者情報センターの代表、佐藤裕一さんに、暖かくなると不審者が増える理由を聞いた。

同社では、警察や自治体の発表する不審者情報を収集し、配信している。必要に応じて警察への補足取材も行っているそうだ。すると佐藤さんも、

「不審者情報は3月後半から増え、6、7月が一番多いです。8、9月は減り、10、11月も6、7月と同じ水準まで増えます。そうしたサイクルがずっと続いています」

やはり、暖かくなると不審者情報が増えると実感しているという。その理由については、

「気候的に外出しやすく、出歩く人が増えることが要素として大きいと思います。反対に、台風が近づいたり、天候が悪化したりすると出歩く人が減り、不審者情報も相当数減ります」

どうやら変質者・不審者は、春だから増えるというより、暖かくなり外出しやすくなるから増えるというほうが正しいようだ。

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