「燕は戻ってこない」主演・石橋静河、夫婦役の稲垣吾郎&内田有紀の仲のよさに「うらやましい」

NHK総合で4月30日にスタートするドラマ10「燕は戻ってこない」(火曜午後10:00。BSプレミアム4K=火曜午後6:15)の試写会・出演者会見が行われ、主演を務める石橋静河と、共演する稲垣吾郎内田有紀が出席した。

「燕は戻ってこない」は、圧倒的な実力と人気を誇る作家・桐野夏生氏による同名小説が原作。「命は誰のものか」という重要なテーマを、鮮烈なエンターテイメントに仕上げ、第57回吉川英治文学賞・第64回毎日芸術賞をダブル受賞した。ドラマは、同局の連続テレビ小説「らんまん」を手掛けた長田育恵氏が脚色し、社会的関心が高まる生殖医療の光と影を描き出すノンストップ・エンターテイメントだ。

派遣社員として暮らすリキこと大石理紀(石橋)は29歳で、職場の同僚から「卵子提供」をして金を稼ごうと誘われ悩むも、アメリカの生殖医療エージェント「プランテ」日本支社で面談を受ける。そこで持ち掛けられたのは「卵子提供」ではなく「代理出産」だった。元バレエダンサー・草桶基(稲垣)とその妻の悠子(内田)が、高額の謝礼と引き換えに2人の子を産んでくれる“代理母”を探していた。金も夢もないリキ、自らの遺伝子を継ぐ子を望む基、不妊治療を諦めた悠子、それぞれの欲望が「代理出産」を通じて交差する。

石橋は「今回かなりデリケートで複雑なテーマの作品なのですけれが、素晴らしい原作と脚本、スタッフ、キャストの皆さんのこれ以上ない座組でこの作品に挑めることを、本当に幸せに思っております。私が演じるリキは、29歳のごく普通の女の子です。彼女は日々ギリギリの生活で苦しみながらも一生懸命生きています。特別な人たちの話ではなく、一生懸命に生きている、隣にいる人たちの話としてこの作品を描けたらいいなと思っています」と、役どころの普遍性を強調。

稲垣は「僕自身、原作を読んでいて、ドラマ化されるということで、一つの挑戦だなと思いました。でもやっぱりこのドラマの中でいろいろとテーマとなっている生殖医療のことであったりとか、地方社会のちょっとした息苦しさ、若者の貧困であったりとか、本当に今深刻な問題になっているようなものがテーマとしてあって、それはやっぱ他人事ではないですし、このドラマを通じて、1人も多く届けられたらいいなって思いながら、今撮影に臨んでいます」と作品への思いを語った。

自身が演じる元世界的なバレエダンサー・基役に関しては「自分の遺伝子を受け継ぐ子を何としても生み出したいという欲望を持った人物です。その姿が滑稽に見えたり、コミカルに見えたりするかもしれませんが、このドラマでは悪人は出てきません。一人一人がキャラクターに共感できるかは異なりますが、そういう人物を夫婦役の内田さんと楽しく演じています」と、少しでもキャラクターの思いが伝わるように撮影に励んでいることを報告。

内田は「私たちの日常は時にドラマ以上にドラマチック。ドラマで描けることは少ないかもしれませんが、『燕は戻ってこない』はとても挑戦的な作品です。女性はもちろん、実は男性も生きづらさを感じていることが多いのではないかと、私は思っています。ご夫婦で、またさまざまな世代で一緒に見ていただきたいです。男女問わず多くの人々が感じる生きづらさを描いています。この作品を通じて、さまざまな世代の方々に寄り添うことができればと思います」と作品の意義を伝えつつ、「演じる悠子は、いろんな意味で突き抜けている部分がある、無邪気でちょっと鈍感なすてきな旦那さんを持ちまして。すれ違うこともありますが、愛する人の子どもを産みたいと願い、苦しみ、葛藤しています。皆さんがどう思うかはそれぞれの生き方であり、考え方ですが、私自身は、非常にフラットでナチュラルな女性だと思いながら演じています」と役柄を紹介した。

繊細なテーマを扱った作品のため、出演を決めるまでに迷いがあったと明かす石橋。「原作を読んでこの作品に参加する決心を固めましたが、読み始める前に、この中にものすごい内容が詰まっているんだと、なかなか読むことができませんでした。しかし、いざ読み終えたら、女性の貧困や差別など、普段私が感じた、普段女性が生きていく上で感じてる重要なテーマが詰まっていて、衝撃を受けました。普段そう感じても、それを話す機会や、社会に伝える方法がない人たちの思いが込められていると思うので、それを伝えるべきドラマなんだという思いで、出演を決めました」と率直な心境を告白した。

また、稲垣は「原作を読んで、目からうろこが落ちるような体験でした。知らなかったことが多く、特に女性の気持ちについて深く考えさせられました。自分の役は、自分の欲望に直面しながらも、それが相手を傷つけているかもしれないとは思えない状況を描いています。これが本能的なものだと感じつつも、自分自身にとっても考えるきっかけになりました」と、多くを学びがある作品であることを述べた。

内田は「原作を読んだ時、勇気が必要だと感じましたが、演じることで視聴者にさまざまな感情を呼び起こすのが私の仕事です。役に真摯(しんし)に向き合い、演じることで何かを伝える覚悟を決めました。特に、40代の女性としての経験を生かし、役に深みを持たせることに尽力しています」と気概を示した。

「燕は戻ってこない」では、代理出産や卵子提供について扱っているが、言葉は認識していたものの、今回の出演で、初めて深く知ったという石橋。「この作品に出合って、倫理的な問題やさまざまな立場から見た違いに動揺しました。この作品を通じて、私自身も学んでいる最中です」と、自身もまだ学びの過程であるそう。

稲垣は、ドラマで描かれる世界に対して、「言い方があっているかは分かりませんが、まるでSFの世界のよう」と表現。「社会にとっていい作用をもたらすことを願っていますが、人間である以上、多くの問題が生じるでしょう。このドラマが、さまざまな問題について考えるきっかけになると思います」と問題提起となる作品であることに言及。

石橋と同じく「このドラマに参加することで多くを学んだ」と言う内田は、「人間の生き方にはさまざまな選択肢があることを知り、それが少し勇気にもなりました。しかし、心が伴わない選択や誰かが置いていかれるような状況は違うと感じます。ドラマとしては、原作に基づきつつも、オリジナルの展開も含めていろんな気持ちで皆さんには楽しんでもらえると思います」と、作品を通して感じる複雑な思いに触れた。

その後、第1話の印象的なシーンについて3人に質問がされた。

コンビニエンスストアでのシーンを挙げた石橋は、「伊藤万理華ちゃん演じる同僚の河辺照代(テル)とのコンビニでの会話が特に印象的でした。表面的には普通の会話ですが、献血と卵子提供を同じように扱うテルに、リキがどう反応していいか分からなくなる瞬間があります。このごく普通の場所での会話が、このドラマのキーになっていて、視聴者にとっても思考を巡らせるシーンだと感じています」とコメント。

稲垣は、夫婦の関係性を表現するシーンの重要性に触れ、「夫婦が夫婦らしく自然に空気としてなじんで見えることが、視聴者をその世界に誘う上で非常に大切。そこはうまくいったかなと思います。僕が演じたバレエのジャンプシーンは、かなり大変でしたが、うまく飛べたと思いますよ。そのほかに印象に残ったのは、リキが500万円を目にした時の目の色が変わる瞬間。欲望のスイッチが入る表情がとても印象的。第2話が見たくなると思います」と説明。

「1話では悠子が厳しい状況からスタートし、夫婦間のすれ違いや日常の中での細かなズレが生じる苦しい部分を演じている」と自身が演じる悠子のキャラクターに触れ、解説した内田。そんな撮影の中でも「基を演じる稲垣くんご自身も無邪気ですてきなので、癒やされていました」と笑顔を見せ、「体か硬いから、ストレッチのシーンを筋トレにしてとお願いしていた(笑)」と暴露。すると稲垣は、「でも、あれはストレッチですよ(笑)。ストレッチと筋トレが合わさったもの。実際にちゃんとバレエの先生に指導していただいて、現場でちゃんとやっています」と慌てて解説し、「バレエのシーンは楽しみにしていほしいです」とアピールした。

さらに、基を演じる上では、特定のバレエダンサーを模範にするのではなく、自分のイメージから役柄を形成していったこという稲垣は、「バレエダンサーは一つのことにストイックに取り組んでいる」というイメージを持ちつつ、「役づくりにはバレエの先生から直接指導を受けている」と言い、「私生活の中でも、ちょっとした動きにバレエダンサーとしての癖は出ると思うので、そういう部分はもちろん役を演じる上で意識しています」と語った。

バレエ経験者である石橋は、そんな稲垣のダンスについて、「つま先が奇麗で感動しました。バレエって特殊な世界。本当にどなたが演じるんだろうと思っていたのですが、稲垣さんに決まって1話を見た時に説得力がすごいというか。こういう本当に王子様のような、私生活から王子様のようなバレエダンサーの方って見たことがあると思って。素晴らしかったです」と、劇中で見せる稲垣のバレエダンサーとしてのたたずまいを称賛。

同じくバレエ経験者である内田について、「感情的なシーンになると素の自分が出てしまうことがあるが、そんな時でも、(バレエ経験者らしく)立ち姿が奇麗」と感じたという稲垣は、「(立ち姿を)5話目の撮影時点で褒められた」という内田に、「5話でやっとですよ」とツッコまれ、苦笑する場面も。

会見中、終始軽妙なやりとりを見せ、すっかり打ち解けた様子の稲垣と内田は、長年にわたって芸能界で活動しながらも、ドラマでの共演は今回が初めて。稲垣は「同じ世代で、同じ時代に芸能界で頑張ってきた方。内田さんが『稲垣くん』と呼んでくれるのも同級生みたいでうれしいです。その空気感みたいなものが、今回の夫婦役にも出ていて、フィットして見えるのかなと2人で話していたんですよ」とコメント。内田も「最初から本当に同じ空間に暮らしているような気持ちさせてくれた」と自然体で夫婦役に臨めたと強調。名前の呼び方については、その時々で違うそうだが、「吾郎ちゃんって言っていたこともあったよね」と稲垣が明かすと、「チャーミングすぎるので」と稲垣のかわいさがそう呼ばせたと笑った。

稲垣は、2人で長い掛け合いを含むシーンを演じる際には、「舞台の劇のような感じなので、コミュニケーションが必要」と言うと、内田も「お互いに緊張を分け合って、高みを目指すような感じで楽しくやらせていただいています」と支え合いながら撮影に臨んでいる様子を見せた。

息の合った稲垣と内田に対して「お二人と一緒のシーンを撮影してからだいぶ時間がたったのですが、こんなに仲良しになっているとは。なんかほっこりしました」と笑みを浮かべた石橋は、「この役に挑むことへの不安があった中で、共演者が誰になるのかがとても気になっていました。内田有紀さんと稲垣吾郎さんがキャストに加わると聞いて、勇気が出たというか。役としては孤独なのですが、本当に頼もしい先輩方と一緒にこの作品に挑めるっていうことが、すごくうれしかったです。お芝居をした時は2人ともすごく真剣で、現場はシリアスでしたが、今は楽しそうで、うらやましいなと。私は、ずっと1人で孤独なシーンが多いので、いいなと思っています」と口にすると、稲垣と内田は「この先にまだ一緒のシーンがあるから!」と力づけていた。

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