スピッツは21年ぶり、GLAYとHYDEは初出演……2024年のフェスはキャリアアーティストに注目

桜の開花宣言が報じられたばかりだというのに、もうすっかり初夏めいた気温。春、そしてもう間もなくやってくる夏に、音楽ファンはフェスシーズンの訪れを予感しているのではないだろうか。今年も全国各地でロックフェスが数多く開催される。昨年はコロナ禍明けということもあり、まだまだその名残を感じる中での開催であったが、今年はいよいよ本格的に2019年以前のフェスの空気が戻ってくるのではないだろうか。

音楽フェスと言えば、普段はフェスにあまり出演しないキャリアアーティストの出演が大きな話題を呼ぶこともある。例えば、2017年の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』でのB’z、2018年の同フェスでの松任谷由実などはその好例だろう。今年も各地のフェスに登場するベテランのバンドやアーティストに注目が集まっている。

北海道・石狩にて毎年8月に開催される『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO』には21年ぶりにスピッツが出演する。昨年リリースの「美しい鰭」がストリーミング累計2億回再生を超える大ヒットを記録。そして同曲も収録されたアルバム『ひみつスタジオ』におけるロックバンド然としたサウンドが大きな話題を呼び、その余韻もまだ“醒めない”スピッツ。結成から37年を迎えるベテランバンドでありながら、その瑞々しさはむしろ年を追うごとに増していくばかり。自身が主催するイベント『ロックロックこんにちは!』、『ロックのほそ道』、『サンセット』シリーズでは積極的に若手ミュージシャンとも共演しており、昨年は各イベントに緑黄色社会や秋山黄色、Kroi、サバシスターといった面々が出演している。幅広いリスナーに支持されるだけでなく、若手とも積極的に交流を重ねることで生み出されるスピッツの瑞々しい演奏は、蝦夷の音楽ファンの心をガッツリと掴むだろう。

8月に千葉・幕張で開催される『SUMMER SONIC 2024』にはGLAYが初出演。GLAYにとってバンド史上初の夏フェス出演となる。普段から自身のワンマンライブを数多く開催する一方、いわゆる音楽イベントへの出演は限定的であったGLAYだが、近年ではB'zが2021年にオーガナイザーとして主催した『B'z presents UNITE #01』への出演や、今年2月のQueen + Adam Lambert来日コンサートの札幌ドーム公演へのゲスト出演、今年3月の『箭内道彦60年記念企画 風とロック さいしょでさいごのスーパーアリーナ “FURUSATO”』での怒髪天との対バンなど、これまで以上に積極的に他アーティストとの共演を果たそうする姿が印象深い。

GLAYが『SUMMER SONIC』に登場する8月17日の東京公演にはイタリア・ローマ出身のロックバンド Måneskin、アメリカ・アトランタ出身のラッパー リル・ヨッティに加え、日本からは星野源やSUPER BEAVERが出演するなど、『SUMMER SONIC』らしい実にジャンルレスで多国籍なミュージシャンが顔を揃えている。GLAYのライブが『SUMMER SONIC』にどのような爪痕を残すのか、今から楽しみだ。また『SUMMER SONIC』東京公演の開催地である幕張と言えば、25年前にGLAYが開催した『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL LIVE IN MAKUHARI』の開催地でもある。1公演で約20万人を動員したこのライブは当時の世界記録であり、今も伝説的なライブとして語り継がれている。縁深い幕張という地でGLAYの新しい歴史が生まれる。

L'Arc~en~CielのボーカルであるHYDEはこれまでもソロで積極的にロックフェスに出演しており、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『氣志團万博』、『COUNTDOWN JAPAN』などでは常連とも言えるほどに出演を重ねている。近年では上述したフェスの他にも、2022年に『SUMMER SONIC』、2023年に秋田の『OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL(男鹿ナマハゲロックフェスティバル)』や鹿児島の『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL』と、これまで出演歴のなかった各地のイベントに出演してきた。今年は一昨年、昨年以上に初出演フェスが多数アナウンス。4月には宮城県で開催される『ARABAKI ROCK FEST.24』、5月には埼玉県で開催される『VIVA LA ROCK 2024』、そして同じく5月に東京と大阪の2カ所で開催される『METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2024(METROCK 2024)』、さらに6月にはSiM主催の『DEAD POP FESTiVAL 2024』や7月の『JOIN ALIVE 2024』、そして『NUMBER SHOT2024』と例年以上に各地のロックフェスへの出演が決定している。L’Arc~en~Cielとして東京ドームや国立競技場など日本最大級の会場でライブをしているのはもちろん、ソロとしてもアリーナクラスでのワンマンライブを開催しているHYDE。自身のファンばかりではないロックフェスへ積極的に出演するチャレンジングなスタイルは、彼のミュージシャンとしての可能性を拡張する大きなカギとなっているのかもしれない。

他にも5月に横浜にて開催される『GREENROOM FESTIVAL '24』に佐野元春 & THE COYOTE BANDが出演するなど、今年は特にベテランバンドの積極的なフェス出演が印象的だ。そこに感じるのは各アーティストの守りに入らない攻めの姿勢。音楽の聴かれ方が大きく様変わりし、音楽シーンが否応なく新しい時代を迎える中で、長いキャリアを持つバンドと音楽フェスの在り方も大きな転換点を迎えているのかもしれない。

(文=ふじもと)

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