2023年の雑誌休刊「レコード芸術」「工業材料」……1980年に創刊した10代向けのファッション誌といえば?

新文化オンラインが報じたニュースによると、出版科学研究所が、2023年に“休刊”となった雑誌は64点になると発表したという。主なタイトルを挙げれば「レコード芸術」(音楽之友社)「工業材料」(日刊工業新聞社)など。特に専門誌の休刊が目立つと報じている。

専門誌の休刊は2020年代に入ってから加速している。休刊に伴う最大の問題は、専門誌に載っていたであろう“専門性の高い記事”を、記者が取材し、発表する場がなくなっていることである。ということは、読者もそういった記事を読む機会がなくなっている、ということにもつながる。

ネットニュースがあるじゃないか、という意見もあるかもしれない。しかし、ネットニュースもマニアックな記事が多く載るようになったとはいえ、専門誌のような究極的にマニアックな情報は載りにくいし、配信されにくい。特にアクセス数を重視するネットでは、雑誌にあったようなマニアックなコラムが作成されにくい傾向がある。

サブカルチャーの分野でも、成人向けの美少女ゲームなどのアダルトコンテンツは、ネットニュースに情報を出しにくい。暴走族や不良少年の情報が多く載っていた「チャンプロード」(笠倉出版社)などに代表される、内容に賛否両論がある雑誌も難しいだろう。こう考えると、紙の雑誌でなければ読めなかった記事は多いのである。

かつて、雑誌は極めて細分化されていた。ファッション誌も然りでさまざまに細分化が進む中、1980年に創刊した10代向けの女性雑誌「Popteen」もその一つであった。残念ながら2023年2月号を最後に休刊し、ウェブへ移行。『Popteen Media』として現在は運営されている。

他方スポーツ雑誌では、野球、柔道、剣道、登山などの専門誌が存在し、どれも専門性を競っていて、その道の専門家以上に詳しい編集者やライターがいた。こうした雑誌文化が日本の文化を豊かにしてきたのは間違いないだろう。あるスポーツ雑誌の編集者だったフリーの編集者がこう話す。

「ネットではどうしても、雑誌ほど自由に記事を書きにくい。ネットのニュースなんてすぐ消えるだろ、と思う人がいるかもしれませんが、それは誤解。ネットニュースほどスクショされたりして長く残るし、雑誌はいい意味で読者もマニアックだから、内輪的なノリで誌面を構成できたのです。ネットは不特定多数が見るから、表現一つだけでも気を使う。雑誌よりもやりにくいんですよ」

こう編集者が話すように、不特定多数が目にするネットであるがゆえに、マニアックすぎる記事を作りにくいという事情があるようだ。人々が情報を手にする場はネットが主体となったが、今後、専門性の高い情報の発信はどのようにあるべきなのか。編集者、ライターだけでなく、読者の問題としても考えていく必要があるだろう。

(文=元城健)

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