【4月16日付編集日記】請戸川の夜桜

 浪江町の請戸川にある桜並木は約70年前、JR浪江駅前で酒店を営んでいた故金沢とみえさんの苗木の植樹が始まりとされている。堤防整備に関わった町民らの植栽も続き、現在の形になった

 ▼時間がたつにつれて樹勢が衰え、一時は病気などで花が咲かないような状態になった。心を痛めた商工会青年部OBらが「浪江桜の会」を設立して丹念に手入れした結果、桜はよみがえり、震災を経た後も多くの人を楽しませてきた

 ▼今シーズンの開花を前に、例年行われてきた桜並木の夜桜ライトアップの開催が宙に浮いてしまった。「人を呼び込むには続けたほうがいい」と立ち上がったのは、有志がマスク姿でまちの魅力をPRするご当地ヒーロー集団「なみえアベンジャーズ」だった

 ▼準備期間も短かく予算もなかったため、交流サイト(SNS)などでカンパを呼びかけながら点灯式を実施した。しかし蓋(ふた)を開けてみれば、心意気に打たれた人から支援が相次ぎ、わずか数日で十分な費用が集まった

 ▼復興が進み町並みが変化する中、請戸川沿いはかつての浪江の風景をとどめる貴重な場所となっている。それぞれの時代の町民に愛され、守られてきた桜並木は来年もまた花を咲かせる。

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