【4月16日付社説】イランの報復攻撃/戦線拡大の愚は許されない

 イランとイスラエルの戦闘は中東全体を巻き込む恐れがあり、許されるものではない。国際社会には、両国に対してできる限りの働きかけを行い、戦線拡大を防ぐ責務がある。

 イランが、イスラエルを弾道ミサイルや自爆型無人機で大規模に攻撃した。イスラエル軍や米軍は、ミサイルや無人機の多くを迎撃したとしているが、一部の基地で小規模な被害が出たほか、少女1人が負傷した。

 イランは、1日に在シリアのイラン大使館が攻撃を受けたことに対する報復としている。ミサイルや無人機が撃墜されていなければ、被害はもっと大きくなったとみられる。イランの攻撃は厳しい非難に値する。

 イスラエル政府が、「報復する権利がある」として、反撃を示唆していることは大きな懸念材料だ。イラン側は、今回の攻撃を「限定的な作戦」と述べ、攻撃を継続しない考えを表明しているものの、報復があれば再度攻撃することを示唆している。

 イスラエルが今回の攻撃を理由に報復を行えば、イランの反撃を誘発することになる。報復合戦が続けば、戦線の拡大は避けられない。イスラエル、イラン双方に強い自制が求められる。

 イスラエルがイランやイスラム組織ハマスに対する強硬な姿勢を緩めなければ、国際的に孤立することは免れず、戦闘に拍車がかかる恐れがある。敵対する勢力への抑制を欠いた攻撃に対して、国際社会が強く反発していることをネタニヤフ首相は自覚すべきだ。

 国連安全保障理事会が緊急会合、G7首脳もオンラインで首脳会議を開き、対応を協議した。国連やG7はこれまで、イスラエルとハマスの戦闘に対して影響力を発揮できていない。国際社会が協力して、戦争状態の回避に向けて、有効な手だてを講じることができるのかが問われる。

 焦点となるのは、米国の姿勢だ。米国は、ハマスとの戦闘でイスラエルに対して武器供与などの支援を行い、国連安保理でも同国への非難決議などを拒否してきた経緯がある。イスラエルにとって唯一の後ろ盾ともいうべき存在だ。

 その米国がイランへの反撃に反対し、報復攻撃などを参加、支持しない姿勢を示しているのは注目される動きだ。米国が国際社会と協調する形で、イスラエルに強いメッセージを発信し続けることを求めたい。

 イランに対しても中東諸国を含めた国際社会が連携して、自制を促すことが重要だ。

© 福島民友新聞株式会社