米国の臨界前核実験 ピースデポ調査・計33回と判明 「日本から監視続けて」梅林氏

オンライン会見で、米政府への情報公開請求で判明した事実を説明する梅林氏

 米国が1997年以降に計32回実施したと考えられてきた臨界前核実験について、NPO法人ピースデポ(横浜市)特別顧問の梅林宏道氏は、米国の定義拡大により、2007年に実施していた実験が後から1回とカウントされ、計33回になると明らかにした。米政府への情報公開請求で判明し、梅林氏は15日のオンライン会見で「日本からしつこく監視を続ける必要がある」と強調した。
 臨界前核実験は核分裂の連鎖反応が続く「臨界」に至らないよう、少量の核物質に衝撃を与えて反応を調べる。核爆発を伴わず、包括的核実験禁止条約(CTBT、未発効)に抵触しないが、条約制定の精神に反すると指摘されている。
 これまで一般的に米国の臨界前核実験は32回と考えられていたが、梅林氏は昨年の米政府の説明や報告書が「33回」となっている点に注目。昨秋に米エネルギー省核安全保障局(NNSA)へ文書公開を求め、先月までに回答を得た。
 梅林氏は開示文書を分析し、07年2~5月に「サーモス」と称する実験が行われていたことを新たに把握。当時は臨界前核実験に当たらないと判断されたが、梅林氏の分析では、米国が15年までに判断基準を広げ、サーモスが24回目に該当する。21年9月の「ナイトシェードC」が33回目の実験で、それ以降に新たな実験はないと確認した。
 梅林氏によると、米国は核弾頭の性能維持などのため、20年代末まで毎年2、3回程度の臨界前核実験を行う計画。地下核実験が可能な状況も維持しているとされる。梅林氏は核実験に関する情報が近年公開されにくいと危惧。「市民社会が動向を追跡し、警戒と反対を表明し続けることが核開発への歯止めとなる」と指摘した。

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