諦めかけた夢、あしなが奨学金が後押し 広島の大学生「同じ境遇の後輩の支えに」 申請急増も資金難、20日から募金活動

街頭で持つ募金箱

 親を病気や災害などで亡くした子どもの奨学金を募る「あしなが学生募金」が20日から、全国で始まる。街頭では奨学生たちがお願いに声をからす。その一人、広島市内の大学生男性(20)は、経済的な理由で大学進学を諦めかけた経験がある。「同じ境遇の後輩の支えになりたい」と力を込める。

 1歳で父を亡くし、双子の弟とともに母に育てられた男性。高校3年の時、弟と大学進学を巡って大げんかした。卒業後は就職するつもりで入った工業高校だったが、勉強が面白かった。「大学に行きたい」との思いが芽生えたが、それは弟も同じ。家計的にはどちらかが諦めねばならず、互いの夢を掛けたけんかだった。

 そんな中であしなが育英会(東京)の奨学金を知った。職員の励ましにも背中を押され、進学を決めた。今は「工業高校の機械科の教師になる」という目標に向け、勉強に励む。弟も大学で建築を学んでいるという。

 あしながの奨学金は高校、大学、大学院、専門学校に通う子どもが対象で、ニーズは高まっている。特に高校進学を控えた生徒からの申請は2024年度、1800人と過去最多になった。

 高校奨学金は23年度から返還不要の給付型に変更されて申請が増加。育英会の担当者は、尾を引く新型コロナウイルス禍の影響や物価高で「困窮家庭が増えていることも背景にある」とみる。一方で近年続く資金難のために申請者の半数以上の985人を採用できていない。

 奨学金は支援者の継続的な寄付や街頭募金で成り立っている。男性は「自分は進学して世界が開けた。『僕の可能性にはまだ先がある』と思える」と充実感をにじませる。だからこそ支援に感謝し、こう思う。「夢を諦める人を減らせるよう、力を尽くしたい」

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 募金活動の日程は、そごう広島店前と八丁堀交差点(20、21、27、28日)と広島パルコ前(27、28日)は正午~午後6時。JR福山駅南口(20、21日)は正午~午後5時。寄付の半分はアフリカの遺児の高等教育支援に充てる。

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