東大入学式 米田氏祝辞「あなた自身」の一歩が「社会」の一歩に

東大の2024年度学部入学式が4月12日午前、日本武道館(千代田区)で挙行され、約2930人の新入生が参加した。昨年に引き続き家族などの入場が許可され、オンラインの同時配信も行われた。同日午後には約3030人の新入生が出席した大学院の入学式も開催された。

【藤井輝夫総長 式辞】

藤井輝夫総長は学部入学式で、物事を多次元的に捉える姿勢の重要性や「構造的差別」の再生産と拡大を断ち切る必要性に触れ「世界の誰もが来たくなるキャンパスを創る」理念に向けて東大が行ってきた取り組みを紹介。多様な学問分野で分析を行う場合や学問分野を超えて他の分野と連携する場合に物事を多次元的に捉える姿勢が大切になることを述べ、解決すべき問題自体も心や多次元であることを認識しつつ、対話を通じて合意形成を目指す態度の必要性を述べた。学問においても生活においても多次元性に目を向けることを難しくする認知バイアスの存在を可能なだけ自覚し、調整する姿勢が重要だと説いた。東大の入学者の性別に大きな偏りがあると指摘し、20年にメンバーとなった30%Club Japanや21年に公開したUTokyo Compassで掲げている、学生および研究者の女性比率の向上という目標に言及。「状況ゆえに活躍できない少数派の女性の割合を30%にまで上げることが、公正な社会実現に向けた最初の目標となる」と述べた。

式辞を述べる藤井輝夫総長

【教養学部長 式辞】

真船文隆大学院総合文化研究科長・教養学部長は、教養学部が24年5月末で75周年、旧制一高の前身である東京英語学校から数えると今年で150周年になることに言及し前期教養課程の意義や「教養とは何か」についてのメッセージを贈った。前期課程の2年間で「『夢を語るためのボキャブラリー』を育んでください」と助言。あらゆる情報の真偽を自分の目で確認し、検証する健全な批判精神こそが「教養」の本質であるという石井洋ニ郎名誉教授の言葉を引用し、知識を蓄え、知識の能動的な実践および検証を通じて「教養」を身につけることこそが、前期教養課程の意義であると述べた。技術進化により「レイバー」が「ワーク」に変わり、「ワーク」が「プレイ」に変わりつつあるという伊藤元重名誉教授の言葉を紹介し、これからはAIと仕事を奪い合うのではなく、単純業務を任せることで生まれた自由を使い、人間にしかできない創造的な営みを行う新たな働き方が生まれる時代と主張。前期教養課程を「よく学び、よく遊ぶ」2年間にして欲しいと呼び掛けた。

来賓としてJAXA宇宙飛行士候補者の米田あゆ氏が登壇。ヨット部に入部したことが自身の大学生活での新たな一歩だったと紹介。「ファーストペンギン」を例に「個人的な一歩」の積み重ねが周囲の人々を刺激し、一人ひとりに挑戦する勇気を与えることで社会も新たな可能性に向かって前進していくことを述べ、「一歩を踏み出して挑戦を続けていってください」と新入生にエールを伝えた。

この他、東大校友会会長、宗岡正二氏が祝辞を述べた。入学生総代は文Ⅲの山際美愛(やまぎわ・みう)さんが務めた。

宣誓を行う入学生総代

東大は例年、創立記念日に当たる4月12日に日本武道館で学部・大学院の入学式を実施する。本年度の学部新入生は文Ⅰ423人、文Ⅱ373人、文Ⅲ497人、理Ⅰ1170人、理Ⅱ563人、理Ⅲ100人で計3126人。このうち女性は646人で20.7%。なお、外国人留学生は38人だった。同日午後の大学院入学式では修士課程2930人、専門職学位課程323人、博士課程1379人の新入生(うち留学生は大学院全体で896人)の門出を祝った。

式辞、祝辞の全文はいずれも東大の公式サイトで閲覧できます。

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