[社説]県議選まで2カ月 県民目線の政策論争を

 争点は、足元の暮らしから経済、福祉、教育、安全保障まで多岐にわたる。県民の声にしっかり耳を傾け、公約を具体的かつ分かりやすく訴えてほしい。

 6月16日に投開票される県議会議員選挙まで残り2カ月となった。4月16日現在で、13選挙区の計48議席に68人が立候補を予定している。

 県議会は現在、玉城デニー知事を支える県政与党が24議席を確保している一方で、採決に加わらない議長を除く野党・中立は23議席。1議席の差で拮抗(きっこう)している議会勢力の行方も注目となる。今年9月に2期目の任期を折り返す玉城県政の「中間評価」にもなる。

 名護市辺野古の新基地建設は引き続き争点の一つになりそうだ。玉城知事は国との法廷闘争で工事を止められず、国は代執行で工事を進めている。だが、大浦湾の海底に広がる軟弱地盤の改良は難航が予想される。完成は「早くても2037年」とされており、その間の普天間飛行場の危険性除去は不透明だ。不条理な基地負担に県民の不満は根強い。

 県内で急速に進む自衛隊の配備強化についても、議論が必要だ。

 防衛省がうるま市のゴルフ場跡地に計画した陸上自衛隊の訓練場を巡っては、生活への影響の大きさなどから住民が総反対し、政治が党派を超えて民意を支えた。

 国は計画を断念したものの、訓練場の建設自体を諦めてはいない。増える安全保障の負担にどう向き合うのか注視したい。

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 毎日の生活を見れば、食品や電気、ガソリン、バス運賃などの値上がりが家庭を直撃している。新型コロナウイルスの収束で経済は回復傾向とされるが、物価の高騰に賃金の上昇は追い付かず、人手不足も依然として深刻だ。「子どもの貧困」を巡っては困窮世帯の割合が増加しており、小中高校の現場では教員不足が続く。身の回りを取り巻く課題に実効性のある施策が求められている。

 県議会では昨年、9月定例会で本会議の空転中に、退勤後の職員2人が会派室内で酒を飲んでいた事実が明らかになった。議員は飲酒していなかったが、議案の採決が日をまたいだ深夜にずれ込むなど混乱を招いた。

 国政では政治資金パーティーの裏金事件を巡って、国民から政治に厳しい目が向けられている。政治不信を払拭する取り組みが地方議会でも求められている。

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 社会が多様化し、地方政治にも変化が迫られている。現在、県議会の女性議員の割合は15%とまだ少ない。候補者の多様性確保にも力を注ぐべきだ。

 県議選の投票率は1976年の82.28%をピークに低下傾向が続いている。新型コロナウイルスの感染拡大初期だった2020年6月の前回は、過去最低の46.96%と初めて5割を切った。また4選挙区では無投票だった。

 政治への関心が薄れている。危機感を持って、県民目線で政策論争を盛り上げていくべきだ。

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