結果を出す営業の「名刺交換」とは? 押さえておきたい5つの基本

「名刺交換は営業活動の基本である」と聞いて否定する人はいないだろう。新社会人になって最初に教えられるマナーのひとつである。しかし、ここ最近“名刺交換のマナーがなっていない”営業スタッフと数多くお会いする。業績不振で研修費などがカットされているのも原因のひとつだ。とても重要なマナーなのにもかかわらず、軽視している人も多い。名刺交換のやり方ひとつで、他の営業スタッフと一気に差をつけることが可能だ。結果を出すトップ営業はそのことを熟知している。今回は結果を出す人の名刺交換について紹介させてほしい。

名刺交換を軽視している営業は多い?

私は大学で“営業の授業”を行っている。1コマ90分×15回の講義があるが、講義のひとつに「名刺交換」がある。冒頭で学生に名刺交換をさせてみると、見事に間違える。

  • 名刺を片手で渡す
  • 名前を名乗らない
  • つまむように持って渡す
  • 受け取るときも片手

ほかにもいろいろ変わったことをする。99%の学生は名刺交換について何も知らない。その後、名刺交換の基本を教える。すると全員がきちんとできるようになる。一気に“できる学生”に見えてくるから不思議だ。就活の際、まわりの学生がいい加減に名刺交換するなか、バシッと名刺交換ができたらどうだろうか? 人事担当の人に「この学生はやるな」と好印象を持ってもらえるだろう。

とはいえ、学生であれば、多少マナーがなっていなくても「知らないのだからしょうがないな」と大目に見てもらえるかもしれない。しかし、社会人となった場合はどうだろう。マナーの悪い名刺交換をされると「この人はダメだな」と思ってしまう。とくに営業職であればこの影響力は大きい。

苦戦している営業スタッフは名刺交換を軽視している。“名刺交換の時点で見切られている”などと想像もしていないのだろう。だから学ぼうとも修正しようともしない。

以前、設備機器のベテランの営業スタッフとお会いしたときのこと。胸ポケットから片手で名刺をつかみとり、無造作に「どうも、こういうものです」と出してきた。その瞬間に「別の会社の人にしよう」と判断した。もしかしたら、この営業スタッフは良い人かもしれない。しかし、これではとても話を進めようとは思わない。この営業スタッフは名刺交換で非常に損をしていることになる。

初対面の印象は出会いの一瞬で決まる。よく書籍などでは“15秒で決まる”などと書いてある。私はもっと早く決まってしまうと考えている。あなたがお客様の立場になったときのことを考えてみてほしい。名刺交換の瞬間に「この人は良い感じだ」もしくは「ダメだな」と判断していないだろうか。

「セールストークで説得すれば良い」と思うかもしれない。しかし、名刺交換の時点でゲームオーバーなんてことも少なくない。

絶対押さえておきたい名刺交換の5つの基本

名刺交換の基本は次のとおり。

この5つのポイントだけ押さえてもらえば良い。営業スタッフで名刺入れを使っていない人はいないと思うが、名刺入れの上にのせて両手で渡す人は案外少ない。このポイントだけでも「きちんとした人だな」という印象を与えられる。

名刺交換の際、「こういう者です」という人は論外。普通は「○○会社の営業担当の菊原智明と申します」と名乗るだろう。それだけでも良いのだが、何か印象に残るひと言を付け加えたほうが良い。

少し変わった名前なら“名前の覚え方”を追加する。私は“菊原智明”という名前だが、「“菊地さん、菊川さん”などとよく間違われます」と付け加えていた。そうすることで名前を覚えてもらえるようになる。

相手の名刺を受け取る際も、名刺入れの上で受け取るだけでも丁寧な印象を与えられる。その際、名前を見て「○○さんとお読みすればよろしいでしょうか?」と聞いてみよう。初対面ではお互いの情報がないため、話がはずまない。この質問ひとつで「この名前は群馬県には多いんですよ」などと話が盛り上がることもある。また名前の読み間違えも防げるし、何倍も記憶に残るものだ。

もし可能なら名刺に“顔写真”を入れるのも良い。顔写真があると、あとで名刺を見た際「この人とこんな話をしたな」と思い出してもらえる確率が上がる。会社の都合で顔写真が無理だとしても“こういった分野が得意です”とひと言を載せるか、言いながら渡す。これだけでも何倍も印象づけられる。トップ営業スタッフはこういった工夫を必ずしているものだ。

名刺交換を軽視している人は多い。そこで、きちんとした名刺交換ができれば「この人は仕事ができそうだ」という印象を与えられる。お客様との出会い、仕事関係の出会いは名刺交換から始まる。名刺交換でアドバンテージをとることで自然に結果がついてくる。

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