琴石こいのぼり 今年で最後、最多の160匹 地元の近藤さん「支えに感謝」 長崎・五島

こいのぼりを眺めながら「今年で最後の元気なこいのぼりを多くの人に楽しんでほしい」と笑顔を見せる近藤さん=五島市富江町

 「琴石のこいのぼり」として親しまれている長崎県五島市富江町琴石集落のこいのぼりの掲揚が、13回目の今年で最後になった。活動の中心的役割を果たしていた同集落の老人会長、近藤洋市さん(80)の体調が優れず続けられなくなったためだ。高齢化が進む集落に活気をもたらしてきた風物詩。近藤さんは「寂しいが、最後にたくさんのこいのぼりで多くの人をお迎えしたい」と話す。
 掲揚は2012年に地域おこし協力隊員の発案で始まり、15年から住民が引き継いだ。同集落は富江町の中心部から約10キロ、住民18人の平均年齢は80歳を超える。今年は13日に地域の人たちが設置。同市社会福祉協議会富江支所職員も、作業に協力するなどして支えてきた。
 近藤さんは、準備や運営のほか、雨や強風のたびに、揚げ降ろしする管理も担ってきた。しかし、今年になって体調が悪化。医者から「重労働は難しい」と助言を受け「今年が最後」と決断した。
 こいのぼりは、これまでで最多の約160匹。3本のロープに結ばれた色とりどりの姿が新緑に映え、訪れる人の目を和ませている。母親と7歳、4歳の娘と初めて訪れた同市平蔵町の会社員、富永成美さん(34)は「娘ばかりなので、こいのぼりが珍しくてうれしそう。今年で最後と聞きとても残念」と惜しむ。
 近藤さんは「家族連れの人たちが毎年見に来てくれて、静かな集落がにぎやかになるのが住民の励みだった」と振り返った。「こいのぼりの寄付や、運営を支えてくれた多くの人に感謝したい」。子どもたちの歓声を聞きながらこいのぼりを静かに見上げた。
 掲揚は5月中旬ごろまで。

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