かわいらしい一面が話題になった千葉県警察の警察犬 年頭視閲から3か月…最近の活躍ぶりを聞いた

しっかりとした足取りで入場する警察犬たち【写真:千葉県警察公式インスタグラム(chibakenkei)】

鋭い嗅覚などを生かし、警察官の“相棒”として活躍する警察犬。普段は凛々しい姿ですが、ときに犬らしい一面を見せることがあります。そんなギャップが話題になったのが、今年1月に千葉県警察が行った年頭視閲での一幕でした。緊張感漂うなか、参列した警察犬が見せた振る舞いに、癒やされる人が続出。そこで、式典から3か月が経ち警察犬たちはどのように成長したのか、また普段どのような活動をしているのかなどを、千葉県警察広報担当にお話を伺いました。

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緊張感が漂うなかでのリラックスモードが話題に

千葉県警察年頭視閲とは、年の初めに警察官、パトカーや白バイ、特殊な警察車両などが一堂に会して行われる出動訓練式です。部隊の整列や行進などを千葉県警察本部長が視閲することで、厳正な規律の保持と士気の高揚を図ります。

その式典にはもちろん、選ばれし警察犬たちも参列します。厳かな空気が漂うなか、しっかりとした足取りで式場に入場する警察犬たち。決められた位置で整列をしますが、時間が経つにつれ、その様子に変化が……。

列の後ろのほうには、シッポを振って歩き回ったり、伏せをしたりと、姿勢を崩してしまう警察犬がいました。そのギャップある姿は、SNSなどで大きな話題に。担当者さんは当時の様子を「式典開始直後は、警察犬も緊張していました。しかし式典が進むにつれて、実際の出動現場とは異なることから、リラックスしている犬もいたようです」と振り返ります。

今年の年頭視閲に参列した警察犬は全員で12頭。警察犬の列の最前列と2列目にいた6頭は、千葉県警察が直接飼育している直轄警察犬です。一方、3列目以降の6頭は、犯罪捜査や行方不明者の発見活動を委託している、民間で飼育された嘱託警察犬だそう。

今年の年頭視閲の様子。あくびをしてリラックスモードに【写真:千葉県警察公式インスタグラム(chibakenkei)】

警察犬は知能が高く、特殊な訓練を受けて立派に現場で活躍していますが、根本は一般家庭で飼われている犬と同じだと担当者さんは話します。

「警察犬と聞くと、『大きくて怖い』というイメージを持つ人もいるでしょう。今回の式典では、一見怖そうな警察犬にもかわいい一面があるということを多くの人に知っていただける良い機会になったと思います」

ちなみに、千葉県警察年頭視閲で警察犬が参列するようになったのは、1985(昭和60)年以降だそう。始まった理由については、「過去の記録がないことから判然としません」と担当者さんはいいます。

日本で警察犬に選ばれている犬種は?

式典の様子を見ていて、その多くがジャーマンシェパードであることを不思議に思った人も少なくないでしょう。同県警では警察犬の犬種について制限を設けていませんが、適している犬種はあります。公益社団法人日本警察犬協会が警察犬として登録している、ジャーマンシェパード、ボクサー、ドーベルマン、エアデールテリア、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、コリーの7種です。

同県警の鑑識課に所属している直轄警察犬7匹のうち、6匹はジャーマンシェパードで、1匹はラブラドールレトリーバーです。また、今年の嘱託警察犬は、直轄警察犬と同じ2種のほかに、ゴールデンレトリーバーとドーベルマンが選ばれました。

嘱託警察犬に選ばれたジャーマン・シェパード【写真:千葉県警察公式インスタグラム(chibakenkei)】

ジャーマンシェパードが警察犬に選ばれやすい理由は、精神が安定していて、警戒心が強く、主人に忠実で勇敢さを兼ね備えているから。また、肉体的に嗅覚作業に優れているという特徴もあります。ラブラドールレトリーバーもシェパードと同様に、優れた嗅覚と従順な性格を持っています。

現場に出られるようになっても訓練は続く

最後に、同県警での警察犬の具体的な仕事内容をお聞きしました。警察犬たちは、事件現場や行方不明事案の現場において、人や物の捜索活動などを行います。実際に現場へ出られるようになるまでには、約1年の訓練期間が必要です。警察官の「待て」や「座れ」の指令に従わせる服従訓練を基本に、匂いを手がかりに犯人の逃走経路をたどる足跡追及訓練や、臭気選別訓練など、段階を踏んで警察犬としての能力を身につけます。

もちろん、厳しい訓練を経て現場に出られるようになってからも、訓練は続きます。直轄警察犬の一日は、午前6時の起床から始まり、食事を取ったあと、午前9時から訓練。健康状態や集中力に合わせて適宜休憩や食事を挟みながら行われ、午後9時頃に就寝します。もちろん、出動要請があれば昼夜問わず現場へ。こうした日々の鍛錬は、着実に実を結んでいるようです。

「最近の一番の活躍ぶりについては、行方不明者の捜索活動において、落水している不明者を発見し、ハンドラー(警察犬担当警察官)が人命救助した事例などがあります」

年頭視閲から3か月。警察犬たちは現場での経験や訓練に励みながら、日々成長し続けています。来年の年頭視閲ではどんな姿を見せてくれるか、楽しみですね。

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