39歳元パラグアイ代表MFが楽しむ“地域リーグ”…古巣NECナイメヘンを応援するオランダ5部クラブでサッカー人生謳歌

2010年W杯の日本戦でPKを沈めたエドガル・バレート(右)[写真:Getty Images]

元パラグアイ代表MFエドガル・バレート(39)は、今なお“地域リーグ”でサッカー人生を謳歌する。

エドガル・バレート。名前を聞いてもピンとこないが、この顔は覚えている…という方も多いのではないか。

パラグアイ代表通算60キャップを誇り、2010年南アフリカW杯ラウンド16の日本代表戦にも出場した知る人ぞ知るセントラルハーフ。日本列島が涙したあのPK戦でも、パラグアイ1人目のキッカーとしてネットを揺らしている。

クラブキャリアはレッジーナやアタランタ、パレルモなどに所属したイタリア歴が長く、セリエA通算264試合出場。5年間所属のサンプドリアでは一時期ながらも吉田麻也と共にプレーした。

そんなバレートは2020年夏、イタリアに別れを告げ、エールステ・ディヴィジ(オランダ2部)のNECナイメヘンへ移籍。

NECナイメヘンはバレートにとって特別なクラブ。2004年に19歳で欧州最初のクラブとして加入した古巣であり、20年の2度目となる加入では1部昇格へと導いたのち、22年夏に契約満了で退団。そこでプロキャリアが終わっている。

ただ、実は現役引退を宣言しておらず、現在も母国パラグアイに戻ることなく、プロキャリア最後のクラブとなったNECの本拠地、オランダ・ナイメヘンに自宅を構えているのだ。

今年7月に40歳を控えて何をしているかというと、NECと同じくナイメヘンを本拠地にするアマチュアクラブ、フーフトクラッセ(オランダ5部)のSVオリオンで現役生活を続けているのだ。

“フーフトクラッセ”は、日本でいうところの地域リーグ1部(例:関東サッカーリーグ1部・九州サッカーリーグ)。64チームが16チームごとの4組に分かれて覇権を争い、もちろんライセンスが付与されれば昇格権も与えられる熾烈な戦いだ。

そんな環境に身を置くバレートをオランダ『Voetbal International』が取材。選手全員が自らより若く、そしてNECナイメヘンの“サポーター”だというSVオリオンで、どんな日々を送っているのか。

「息子のトレーナーに紹介されてね。このクラブでプレーすることになったんだ。少年たち(選手)は全員がNECのサポーターなんだよ。10人くらいはシーズンチケットも持ってるし(笑)」

「ここにいる選手のほとんどは毎日懸命に働いて生計を立てている。練習で彼らに『もっと走れ!』とか言えないよね」

NECナイヘメンを熱心に応援する周囲の選手たちにとって、贔屓クラブに2度所属した39歳バレートは崇拝の対象。チームメイトのミシェルさんいわく、「ロッカールームでオナラ禁止」という珍ルールがバレート加入に伴い誕生したという。

かといって、特段気を使われていることもないようで、「ここで僕はただのエドガルだね(笑) “バレートさん”ではないみたいだ」と笑う。

チームメイトのロエルさんは「エドガルが加入後2回目の全体練習で、選手全員の名前を覚えていた のは嬉しかったな。彼も僕らと同じく、使用済みのボトルを洗ったり、皆のシャツを洗濯したりする」と、W杯まで戦ったバレートのパーソナリティを明かす。

SVオリオンに所属することで給料は発生しないようだが、バレートは愛着を持つオランダ・ナイメヘンで、そのサッカー人生を楽しんでいる。

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