91歳の評論家 樋口恵子さん。捨てるコツが話題に上がる昨今ですが、どうしても手放せないものが2つあるそうです。話題の新刊『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』から、樋口さんの日常を教えていただきます。
※2023年11月13日に配信した記事を再編集しています。
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捨てるのはご勘弁
ありがたいことに、90歳を過ぎても外に出る機会が多々あります。そういうときは、 90は90なりのスーツ姿で参ります。髪の毛は前日に美容院に行って整えて。身だしなみには気をつけているつもりです。
今でも洋服はひと部屋分ほどあります。このごろは収入も減っているはずなのに、お金があんまり減りません。洋服を買わなくなった、正確には買いに行けなくなったからです。
あんなにバーゲンが大好きだったのに。以前はデパートやホテルに入っている高級ブティックでバーゲンがあると、よく足を運びました。
なじみのお店だと、私が訪れる前に私のサイズに合わせて、「これは樋口さん向き」というものをとっておいてくださって。バーゲンですから何割引きかで買えて、うれしかったものです。
でも、ここ10年ほどはもうぷらぷらとショッピングというのがなかなかできなくなりました。つまらないなあと思っています。
私に似たサイズの人が周辺にいますので、洋服はそういう方々に譲ったりして手放すことはいたします。
でも捨てることはいたしません。というより、捨てる能力がないのです。だから捨てる方を批判する気はまったくございません。むしろ「捨てられるなんて偉いなあ」と尊敬しています。
そして、洋服以上に手放せないのが本です。84歳で家を建て替えたとき、ある程度は整理しましたが、いまだどんどんたまるばかり。ご著書を送ってくださる方がたくさんいらっしゃるので、自分では買わなくても毎月増えていくのです。
歴史的に価値のある本もたくさんあるのですが、あまりにも量が多いので探すこともできません。そういう意味で「もったいない」という気持ちもどこかにあって、なかなか手放せないのです。
私なんかよりよっぽど学究的な物書きの方々だって、みんな涙をのんで、どこかで自分の資料と惜別している......そう思ってはみても、しょうがないですよ、これは。
家を建て替えるときに一度は整理したわけですから、「あとは勘弁」というところです。私亡き後はもうガバッと捨てていただくしかありません。
書籍紹介 『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』
樋口恵子著
主婦の友社刊
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老いのトップランナー・91歳の評論家 樋口恵子さんの痛快エッセイ。ボケるのが怖い人、老後の暮らしを心配している人、まだまだ夢をもって超高齢期を迎えたい人、親や祖父母世代が認知症になったらどうしようと悩む若い人、どんな世代にでも、男女差なく読んでいただきたい本です。社会学者・上野千鶴子さんとの「貧乏ばあさんの生きる道対談」、脳科学者・瀧靖之さんとの「ボケにくい!健脳対談」も収録。巻頭グラビアでは「91歳が安心して住める家実例」を紹介。
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※この記事は『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』樋口恵子著(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。