“コロナの勝ち組”オイシックス・ラ・大地「シダックスを子会社」の次は?

オイシックス・ラ・大地の自然派商品の宅配(C)日刊ゲンダイ

【企業深層研究】オイシックス・ラ・大地(下)

成功した経営者は運を味方につけるといわれる。オイシックス・ラ・大地の創業社長の高島宏平もそのひとりだ。

若きベンチャー起業家は1973生まれの団塊ジュニア世代。東大に入学。大学院では情報工学を専攻し、在学中に起業した。大手プロレス団体のホームページの制作を受注したが、間に立った女性経営者がお金を持ち逃げしたため未完成のまま、“チーム高島”は解散する苦渋を味わった。

外資系コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。インターネットを使ったビジネスで起業すると決めていたが、何を扱うかは未定だった。

2000年6月、オイシックスを設立。ネットによる野菜の通販「Oisix(おいしっくす)」を立ち上げた。会社が軌道に乗るまで12年かかった。

野菜を仕入れるために、アポなしで農家に飛び込んで、門前払いを食らった。それでもあきらめず、農家を訪問し続けた。資金繰りがつかず、倒産の危機は幾度となくやってきた。

ようやく、リピーターの客がつきはじめ、13年3月、ネットによる野菜の通販という、これまでになかったビジネスモデルが評価され東証マザーズに上場できた。これが転機となり運が向いてきた。

■自然派食品宅配業界の最大手に

17年10月、有機野菜栽培のパイオニア、大地を守る会と経営統合。18年2月、NTTドコモの完全子会社の有機・低農薬野菜販売、らでぃっしゅぼーやを傘下に入れ、商号をオイシックス・ラ・大地に変更。自然派食品宅配業界の最大手にのし上がった。

給食事業を展開するシダックス(東証スタンダード上場)を子会社にし、業容の幅を広げた。シダックスは、志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業した。19年、投資ファンド、ユニゾン・キャピタルの出資を仰ぎ経営再建の途上にあった。

22年、オイシックスがユニゾンの持ち分をTOB(株式公開買い付け)で買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。

23年11月、志太勤が代表取締役を務める志太ホールディングス(HD)がTOBを実施。

このTOBにオイシックスも応募し、TOBは成立した。24年1月、オイシックスは志太HDの第三者割当増資を141億円で引き受け、合計でシダックスに66%出資するかたちとなり、実質的にシダックスを子会社にした。シダックスは3月末に上場廃止となった。

新型コロナウイルスの感染が広がり、定期宅配サービス、ミールキットの需要が爆発的に伸びた。会員数は48万人を突破(23年12月末)、コロナ前(21万人)の2.2倍に急伸した。

オイシックスは“コロナの勝ち組”の代表銘柄と呼ばれるようになった。

24年3月期の連結決算は、売上高は前期比28%増の1470億円、営業利益は26%増の42億円、純利益は94%増の35億円を見込む。子会社にしたシダックスの業績が次の期からオンされる。

高島の行く手に“物言う株主”が待っていた。英資産運用会社、ベイリー・ギフォード・アンド・カンパニーが9.30%を保有する大株主として登場。香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントはシダックス株式の9.74%を保有しており、高値での買い取りを要求してくるのは目に見えている。

外国の荒手とどう向き合うのか。ベンチャー起業家、高島宏平が本物の経営者かどうかが問われている。

このヤマを乗り越えれば、さらに大きくなれそうだ。 =敬称略

(有森隆/経済ジャーナリスト)

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