一覧表つき!国家公務員の「退職金」が2000万円あるのかチェック
2024年3月28日、新年度予算成立を受けて岸田総理が記者会見を行いました。
その中には、「物価上昇を上回る賃上げを定着させる」という内容のものもあり、本当に賃上げがされるの?と興味を持った方が多いかもしれません。
実際には業種や職種によって異なる給与事情。中でも、公務員は給与も安定しており、定年時にはまとまった退職金を受け取れることから安泰だというイメージがもたれています。
しかし実際はどうなのでしょうか。最新の統計では、国家公務員のうち「定年退職後も働きたい人」というは83.3%もいることがあきらかになっています。
今回は公務員として定年まで働いた場合、どのくらいの退職金を受け取れるのかについて見ていきます。
後半では、一般企業の退職金とも比較しているので、ぜひ参考にしてください。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
そもそも「国家公務員」と「地方公務員」の違いとは?
公務員とは、国や自治体に勤務し、営利を目的とせず社会作りを仕事としている人を指します。
さらに「国家公務員」と「地方公務員」に区分されており、それぞれの具体的な職種は下記のとおりです。
地方公務員は都道府県や自治体によっても給与水準が異なります。
そこで今回は、国家公務員における「 定年退職後の就労希望状況」の調査結果や退職金事情について見ていきます。
国家公務員の約8割が定年後も働きたい
人事院が一般職国家公務員を対象に調査を行ったところ、5233人から回答を得られています。
調査によると「定年退職後も働きたいと思った」に対する回答が83.3%でした。
働きたい理由としては「日々の生計維持のために必要」という声が最も多く、8割を超えています。
やはり物価高が進む中で、退職金と年金だけでの生活は厳しくなっているのではないでしょうか。
その他には社会との接点や生活のはり・生きがいを持ちたい」、「仕事を通じて社会や職場に貢献したい」などの項目も4割近い回答数がありました。
国家公務員の退職金はいくらなのか
ここでは内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」より、国家公務員の退職金の平均額を見ていきます。
常勤職員の「定年時の退職金平均」
- 受給者数:1万4283人
- 平均支給額:2112万2000円
うち行政職俸給表(一)適用者の「定年時の退職金平均」
- 受給者数:4086人
- 平均支給額:2111万4000円
定年時に支給される退職金は2000万円を超えました。
では勤続年数ごとに見るとどうでしょうか。
常勤職員の「定年時の退職金平均」※勤続年数ごと
- 5年未満:158万7000円
- 5年~9年:446万8000円
- 10年~14年:713万7000円
- 15年~19年:1159万1000円
- 20年~24年:1309万2000円
- 25年~29年:1663万2000円
- 30年~34年:1991万7000円
- 35年~39年:2303万8000円
- 40年以上:2234万7000円
うち行政職俸給表(一)適用者の「定年時の退職金平均」※勤続年数ごと
- 5年未満:84万8000円
- 5年~9年:451万8000円
- 10年~14年:675万7000円
- 15年~19年:1016万6000円
- 20年~24年:1352万4000円
- 25年~29年:1625万6000円
- 30年~34年:2037万円
- 35年~39年:2189万1000円
- 40年以上:2139万1000円
30年、35年と勤続年数があがるにつれて、2000万円が目指しやすくなるようです。
参考までに、常勤職員における「退職金ごとの人数(定年退職)」も見ておきましょう。
- 500万円未満:147人
- 500~1000万円未満:122人
- 1000~1500万円未満:287人
- 1500~2000万円未満:4422人
- 2000~2500万円未満:7891人
- 2500~3000万円未満:1207人
- 3000~3500万円未満:62人
- 3500~4000万円未満:12人
- 4000~4500万円未満:66人
- 4500~5000万円未満:26人
- 5000~5500万円未満:13人
- 5500~6000万円未満:4人
- 6000~6500万円未満:19人
- 6500~7000万円未満:5人
- 7000~7500万円未満:0人
- 7500~8000万円未満:0人
- 8000万円以上:0人
平均額は一部の大きな値に引っ張られる傾向があるとはいえ、ボリュームゾーンも2000~2500万円未満となっています。
このことから、2000万円以上の退職金は現実的な目安であるといえます。
ただし、今後も同水準が保証されているというわけではないので注意が必要です。
では会社員の退職金は2000万円あるのでしょうか。最後に見ていきましょう。
会社員の退職金はいくら?2000万円はある?
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」をもとに、ここでは会社員の退職金を見ていきます。
そもそも退職給付(一時金・年金)制度がある企業は74.9%だけでした。
退職事由ごとの退職金(2023年)
退職事由ごとの退職金は、学歴ごとに以下のとおりです。
【大学・大学院卒】
- 定年:1896万円
- 会社都合:1738万円
- 自己都合:1441万円
- 早期優遇:2266万円
【高校卒】
- 定年:1682万円
- 会社都合:1385万円
- 自己都合:1280万円
- 早期優遇:2432万円
勤続年数ごとの退職金(定年退職)
勤続年数ごとの退職金(定年退職)は、学歴ごとに以下のとおりです。
【大学・大学院卒】
- 20~24年:1021万円
- 25~29年:1559万円
- 30~34年:1891万円
- 35年以上:2037万円
- 合計:1896万円
【高校卒】
- 20~24年:557万円
- 25~29年:618万円
- 30~34年:1094万円
- 35年以上:1909万円
- 合計:1682万円
まとめにかえて
国家公務員と企業の退職金を確認しました。
そもそも企業では退職金の制度がないこともありますし、企業規模や業種などによってもその水準はさまざまです。
公務員より平均額が高い企業もあるものの、全体平均で見ると「公務員の方が安定している」という見方はあながち間違いではないのかもしれませんね。
一方で、当事者である国家公務員は「定年退職後も働きたい人」が83.3%もいます。
実際には退職金だけで老後生活を送るのは心もとなく、セカンドキャリアを考える人が多いことが浮き彫りになりました。
「退職金がいくらあれば老後が安心なのか」については、それぞれの生活環境や支出状況、家族構成によっても異なるでしょう。
また年金の目安額によっても必要額が異なります。
老後を意識し始めたとき、まずは「年金」「退職金」の目安額を知ることが重要です。
そのうえで、足りない老後資金の準備方法について、検討を始めていきましょう。
参考資料
- 首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見」
- 内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
- 人事院事務総局「令和5年 退職公務員生活状況調査報告書」