【鼎談】locofrank × HAWAIIAN6 × dustbox、聖域に再集結「俺たちはバンドマンという人生を選んでいる」

locofrank × HAWAIIAN6 × dustbox名義によるスプリットアルバム『THE ANTHEMS』が4月17日にリリースされた。この3バンドによるスプリットアルバムは2013年発表の『THE ANTHEMS』以来、約11年ぶり2作目。その間もメロディックパンクシーンを牽引し続けてきた三者だが、いずれもメンバーの交代劇や、ライブバンドにとって大きな打撃となったコロナ禍など、目の前に横たわる苦難を乗り越えながら自らの道を切り拓いてきた。

このインタビューでも語られているとおり、ツーマンやイベント共演はあれど、11年のうちに3バンド集結によるライブ<ロコダスト6>開催は数えるほどしかない。なれ合うことなく、それぞれの場所で、それぞれのやり方で切磋琢磨してきた。そのうえでの再集結が、『THE LAST ANTHEMS』という作品だ。ちなみに、アルバムに冠された“LAST”は、“最後の”を表す形容詞だが、この言葉は“最後に残った” “とっておきの”という意味も持つ。

各バンド3曲ずつ計9曲の真っ新な書き下ろし楽曲たちは、それぞれの持つカラーを前面に押し出しながら、互いを意識しつつ制作されたという。その意味では、『THE LAST ANTHEMS』だから成し得た新境地の揃い踏みであり、“ロコダスト6”というスキームがシナジーをもたらした結果だと言っていい。この作品には結成25年を超えて変わらぬ本質も進化する現在もある。BARKSでは、改めて三者の関係性を深掘りするとともに、11年ぶりスプリットアルバム制作やツアー<THE LAST ANTHEMS TOUR>の予感について、てバンドシーンの現在について、HAWAIIAN6のHATANO (Dr)、dustboxのSUGA (Vo, G)、locofrankの木下正行(Vo, B)にじっくりと語ってもらった。

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■『THE ANTHEMS』を経て俺たちは■仲良しこよし…とはならなくて(笑)

──3バンドが集結した3WAYスプリットアルバム『THE LAST ANTHEMS』が4月17日にリリースされました。その前に振り返りたいのが、2013年、3バンドによる『THE ANTHEMS』を発表したことでして。でも聞いてますが、ここで改めて。ライブハウスシーンで対バンする間柄の3バンドで話が膨らんで、スプリットアルバムを作ることに?

HATANO:あの当時自分が思っていたことは、メロコアブームみたいなものが起きて、“ジャンル寄せ”のようなものが世の中的に強い時代になっていったってことで。その前の時代のライブって、どんなイベントでもノンジャンルだったんですよ。ところがある日、メロコアブームってものが起きて、ジャンルがどんどんそっちに寄って、バンドビジネスみたいなのが盛んになっていた。自分が思い描いていたバンドっていう社会と、かけ離れていった気がしていたんですよ。

木下:わかります。

HATANO:でも、流行りというのは、いつか温度が下がっていくものじゃないですか。結果、下がって、“逆に、今、寄せたらおもしれーじゃん”と思ったんですよね(笑)。で、スプリットアルバムを作ろうと。“作るなら3バンドか4バンドかな。3バンドのほうが絞り込んだものができるかな”って。当時、まずlocofrankに話をして。dustboxとは距離が近い間柄でもなかったんだけど、活動ぶりはお互いに知っていたし、ライブも何度か観に行ってて。“この3バンドの中にdustboxがいたら、いい意味の違和感があっておもしろいな”と。ただ、dustboxに話をしたとき、ふたつ返事で「いいですね」とは言われなかったけど。

SUGA:もちろんいい話だから、“やったー!”という感じではあったんですね。でも当時、この3バンドは同じメロコアシーンにいたけど、対バン相手とかがそれぞれ違ってたから、別のところでやっていたというか。

▲HATANO (Dr / HAWAIIAN6)
──最初にlocofrankに話を持っていったということは、HAWAIIAN6と対バンする機会もかなり多い関係性だったんですか?

木下:いやいや、うちらも全然ですね。

SUGA:locofrankとdustboxでたま〜に対バンやってましたけど、うちがHAWAIIAN6と対バンするようになったのって2010年ぐらい。たしか『starbow』(2010年11月発表)のリリースツアーからなんですよ。その後、HATANOさんからスプリットアルバムを作るって話を聞いた記憶はありますね。「今、この3バンドでやるのはおもしろくねーかー?」みたいな話を。でも、俺はいつも「やりましょう、OKです」ってすぐに返事をしないんです。ちゃんと他のメンバーに確認してからなんで(笑)。

HATANO:あの当時、誰もが予想できなかった組み合わせだったはずで。それがおもしろかったんだよね。

──同じシーンに属しながら、異種格闘技に近い感覚もお互いにあったんですか?

HATANO:そうですね。別に俺らは大きなバンドでもないんで、例えるなら、“ちびっこ相撲の豊島区チャンピオン”と“ちびっこ相撲の越谷チャンピオン”、あと“大阪ちびっこ相撲チャンピオン”とかね(笑)。でも、バンドとして尊敬できて、なおかつ自分の街にちゃんと根を張っているバンドとやりたかったんですよ。地元を背負ってて、その意地も持っている。それでいてメロディックという縛りでやりたかった。

SUGA:今となっては“仲のいいバンドが集まった”と思われるかもしれないけど、『THE ANTHEMS』を作った当時、実はそうではなかったですから。ライバル視しながら、お互いにライブ活動をしていたので、けっこうバチバチ感もあった(笑)。

HATANO:当時、それぞれがそれぞれのやり方でやっていたから、全てが被ってなかったんですよ。それぞれのバンドを観に来ていた客層も微妙に違っていたし、やっている会場も被ってなかった。いろいろずれていたのがおもしろかったし、想定外だからおもしろい。それを形にしてみたいなと思ったのが、2013年の『THE ANTHEMS』だった。

──その後、3バンド合同の全国ツアー<locofrank HAWAIIAN6 dustbox ZEPP TOUR 2013>も行いました。その経験によって意識改革に近いことも起こりました?

木下:意識改革をしなければって考えは持ってなかったんですけど、交わりそうで交わらない3バンドが集まったことが、自分的にもlocofrankにもすごく大きかったですね。思っていた以上に刺激が強かったから。HAWAIIAN6とdustboxのライブはもちろん前から観ていたし、背中も追ってきたバンドでしたけど、中に入って一緒に交わったときの化学反応が凄まじくて。自分たちにとって新たなハードルにもなったし、新たな情熱も抱いたんです。第一関門といったらおかしいですけど、バンドやってきて良かったなという扉をひとつ開けられたタイミングでした。ターニングポイントだったかと言われれば、そうかもしれない。

──同じアルバムに参加した2バンドのステージをダイレクトに味わったことは、通常の対バンとは感覚も違ったんですか?

木下:そうです。それに1枚のCDアルバムを全員で作ったわけで、他のバンドには見えない努力やしんどい部分もあったと思うんです。けど、出来上がったときの充実感というか。自分たちのアルバムを作るのとはまた別の、ひとつのでかい達成感があったんですよ。“おもしろいことがしたい”から始まったことが、結果、おもしろくなった。でもこれは必然ではなくて、みんなが本当に楽しいと思って、楽しんだからこそ、楽しく終われたと思うんです。ただ、そこから11年という月日が物語るように、『THE ANTHEMS』を経て俺たちは仲良しこよしに…とはならなくて(笑)。あれがあったからこそ、そこが新たなるスタートで、“絶対にコイツらに負けねえ”って活動を、各々ができたと思うんですよ、11年間。

──ずっとバチバチ感とギラギラ感じゃないですか(笑)。

HATANO:そう(笑)。Hi-STANDARDがメロコアというバンドシーンのカルチャーを作ったじゃないですか。あれを間近で見て憧れた世代が、俺たちなんですよね。憧れたときにはすでにカルチャーとして出来上がっていて。でも、俺たちは先人がやったことの続きをやりたかったわけじゃない。憧れているからこそ、“自分たちにしかないなにかを残せないのか”って、みんな必死だったと思うんですよ。そのときに、自分がパッと思い浮かんだのが、スプリット作品で。当時、複数のバンドが1枚のオムニバスを作るなんてことは、どんどんタブーになり始めていたんです。で、“みんなが避けるなら俺たちは行く”と。その感覚を理解してくれる人は少なかったんですけど、locofrankとdustboxは理解してくれた。しかもメロディックというジャンルの貴重な仲間でもある。流行りが過ぎ去っていく中、“それでも俺たちはこれが好きなんだ”っていう、やっぱり“ちびっこ相撲チャンピオン”たちなんですよ(笑)。

──マインド的に、バンド同士だけじゃなく、世の中の流れとも闘っているという。

HATANO:切り拓こうと常に思っているかどうかだよね。それが個々の活動にも表れていた。例えば、大きな会場でたくさんの人を呼ぶとか、たくさんの枚数のCDを売ることが“いい結果”だというんであれば、ビッグネームだけ集めりゃいいじゃないですか。でも、誰もがそれを挑戦だとは思わない。ただの安パイですよね。切り拓くってのは、リスクがあるからこそおもしろいんですよ。

▲SUGA (Vo, G / dustbox)
──『THE ANTHEMS』を発表してからの11年間には、メンバーチェンジや歩みを止めようかと思ったことなど、3バンドには様々な事も起こりました。それでも常に闘うマインドやその炎は消えなかったですか?

SUGA:だから続いているんです。炎みたいなのが消えてしまったら、止まっちゃいますから。それに、なんとなくやるっていうのもできないですね、ここまでくると。

HATANO:『THE ANTHEMS』を作ってから何年もの時間を経て、もう、燃やすものなんか残ってないんですよ、心の中に。バンドを始めた当時あった、よく分からない情熱とか、よく分からない自信とか、あんなものは今、欠片も残ってないんですよ(苦笑)。

SUGA&木下:ははははは!

──若さという最高の武器が結成当初はありますからね。

HATANO:そう。移動中の機材車に乗ってるだけでワクワクして。みんなで景色見ながら、しゃべりまくって次の街へ向かうとか。そんな楽しい移動なんて、今はない(笑)。今、燃やしているものって、自分の限られた人生とか残された時間であったり、家族を置き去りにしてでもツアーに行かせてもらっている意味とか。そういう別のやりがいが燃料になっていて。それが今はおもしろいんですよ。“責任”という言葉は合ってないと思うんですけど、それに近い。いろいろなものを背負ってやらせてもらっているんだっていう気持ちがあるんです。

SUGA:昔は本当に、根拠のない自信と夢と希望と、よく分かんねえ大きなものを持ちながら、すごい気持ちで動いてましたもんね、20代の頃は。

HATANO:あれが“ノリ”ってやつだろうね(笑)。

SUGA:そうそう、ノリですよね。責任とかも別になくて、楽しけりゃいいっていう。

HATANO:今は自分のバンドメンバーじゃない仲間もいるし、その仲間に対する思いも変わってきたし。“あっ…これって人生なんだよね”って、ちゃんと向き合えている。俺たちはバンドマンという人生を選んでいる。いろんな人に支えてもらいながら、それをやらせてもらえているって、やっと理解できたんです。

■3バンドの共演はタイミングを選ぼうって■それぐらいこだわってやってきた

──2020年、ドラムの脱退によってモチベーションが下がってしまったのが、locofrankの木下さんですね。

木下:SUGAちゃんがさっき言ったように、ずっと消えない炎だと思っていたんですよ。だけど、あの時期俺は、実際に炎が消えたんです。locofrankをあの3人でやれないなら意味がないと思ったので、「もうやめます」って。周りにお伺いを立てるものでもないと思ってたから、まずギターの(森)勇介だけには言ったんですよ。次に、世話になった仲間に言いに行こうと思って、HAWAIIAN6とdustboxが神戸のライブ会場にいたから、そこまで会いに行ったんです。そうしたら、2バンドともすげーいいライブをやっててね。終演後、「俺はやりきりましたんで、バンドやめます」って2バンドに話したら、「やめさせねーよ、バカ」「なに言ってんだよ」って言われちゃって(笑)。

HATANO:木下はHAWAIIAN6とdustboxに順番に言って、順番に同じことを言われてた(笑)。

木下:そうそう(笑)。あの日あのとき、神戸に2バンドのライブを観に行ってなかったら、その言葉をもらえなかっただろうし。例えば電話口でそう言わたとしたら、俺はやめてたと思う。

──いいライブを観せてくれて、“ロコダスト6”のメンツから直接言葉をもらって、木下さんの心が再び燃え盛ることに?

木下:すんげーいいライブしてたんですよ、2バンドとも。酔っぱらってた俺がもう泣いちゃうぐらいに。

──木下さんがバンドをやめるって伝えるために会場に来ていたことを、HAWAIIAN6もdustboxも全員知っていたわけですよね?

HATANO:仮に知っていたとて、やることは変わらないじゃないですか。

SUGA:うん。

▲SUGA (Vo, G / dustbox)
HATANO:若い頃はバンドって、なにがあっても勝手に続くと思ってたんですよ。でも勝手に続いてるわけじゃないってことが、やっと理解できる年齢にもなっていたんで。例えば木下があのとき言った「やめたい」って言葉も、これだけ経験を積んできた大のオトナが吐いた言葉だから、散々悩み抜いたんだろうなってことも、察しがつくわけで。それを説き伏せる言葉より、“俺はこうだよ”って提示して、そこからなにかを感じてくれればいい。それでもやりたいのか、それでもやめるのか。やめたくてやめるヤツはいないんですよ。好きなことだからさ。

木下:HATANOさんも言ったように、バンドが嫌いなはずはない。locofrankが好きなんだけど、他のよく分かんないヤツを入れて燃やせる心は、今はないって判断をしたんですよね。それで、やめようって思ってしまった。だけど、「消えてないんだったらやればいいんじゃないの」とか、ギターの勇介からは「まだお前に隣で歌っててほしい」と言われて、その言葉が続ける決め手になりました。

──なるほど。

木下:HAWAIIAN6とdustboxがいてくれて、本当に良かったと思った。“よし、再びやってやろう!”と思ったんですけど、世の中はコロナ禍に突入したじゃないですか。なんやねん!ですよね(苦笑)。でも、この時間は、新しいlocofrankを作る大事な時間だって、プラスに考えようと思って、2020年からの3〜4年は踏ん張ってました。その間、dustboxもHAWAIIAN6も踏ん張ってましたけどね。

HATANO:俺、木下には言ったんですよ、「たぶんコロナ禍がなければlocofrankは解散していた」って。考える時間と、メンバーがぶつかる時間を作ってくれたんですよ、コロナ禍が。その期間がなくて、いきなりフルスロットルのライブが始まっていたら、後から入ってきたメンバーがついて来れたか分からない。俺は木下と付き合いが長いから、考えてることが手に取るように分かるので(笑)。木下は、好きなことを濁った気持ちでやりたくないタイプ。だからあの時期、「やめたい」って言い出したわけで。もう自分の心の炎は消えていると思っているのに、燃えているって演じながらやりたいくないんですよ。だから、このコロナ禍は木下やlocofrankにとっていい時間だったと思う。

木下:そうでしたね。結果論ですけど。

──連絡は取り合わなくても、お互い気にし合っている間柄でもあるんですね。

木下:いや、コロナ禍では連絡をクソ取り合いました(笑)。

SUGA:あの時期はお互いに2時間とか3時間とかしゃべったり。家から出られないし、やれることがなかったから(笑)。

HATANO:ZOOMの使い勝手さえ良ければ、毎日やってたと思う(笑)。タイムラグとかレイテンシーがなければ。

──寂しがり屋の3人ですか。

木下:そうですよ、結果(笑)。

HATANO:みんな、そうだったと思いますよ、あの時期は。

──孤独感を抱く方も多かったですからね。

HATANO:自分のことを再確認させてもらう時期だったわけだけど、結果俺たち、同じところにジッとしているのが苦手だったという。そういうことをやってこなかったからね。国からの緊急事態宣言発令で家の中にずっといようとしても、いつもハイエースに乗ってないと、落ち着かない(笑)。家の中にずっといるのは、曲作りに集中しているときぐらいなもんで。

SUGA:レコーディングとかしていない限り、ハイエースでどっかに行ってるから(笑)。

HATANO:あの時期は、“俺って、なにをやってる人だっけ…?”って考えにもなりましたよ。“あっ、そういやバンドだわ”って(笑)。

SUGA:お互いその確認をするために、電話をするっていうね(笑)。

HATANO:「俺たちってバンドマンだよね?」っていう話を(笑)。

──そういう遠距離恋愛みたいな電話をする中で、2021年8月31日に東京・LIQUIDROOMでライブイベント<ロコダスト6 2021>が開催されました。その数日前にdustboxのJOJIさんが新型コロナウイルス陽性となり、変則的なかたちでの実施となりましたが、6年ぶりの<ロコダスト6>を経て、自然発生的に膨らんだのが、今回の『THE LAST ANTHEMS』ですか?

木下:そうですね。

SUGA:コロナ禍で徐々にライブを始めていったとき、「たまには対バンしよう」って話があって。それも、どっちからともなく「そろそろ、なんかね」とか、そんな感じだったと思う。locofrankにも話したら、「そろそろ、いいね」って。コロナ禍の状況も徐々に解消されていくだろうし、世の中にいいニュースもない中で、みんなが楽しめることができればいいなって始めたのが、LIQUIDROOMの<ロコダスト6>。locofrank、dustbox、HAWAIIAN6って、イベントで顔を合わせることはあったけど、3バンドが揃ってのスリーマンは、『THE ANTHEMS』以降、<ロコダスト6 2021>までほぼなかったんですよ。

HATANO:実は、それぞれが“企画ライブやります”ってとき、このスリーマンにならないように全員が意識しているんです。お互いにツーマンで対バンすることはあっても、この3バンドだけで1日にやることはなかった。『THE ANTHEMS』以降、やらないようにしていたんです。

▲木下正行(Vo, B / locofrank)
──つまり、それだけ聖域に近いものが、3バンド合同の<ロコダスト6>にはあると?

HATANO:それぐらい自分たちは大事にしてきていて。この前、久々に札幌カウンターアクションでスリーマンをやったんですけど、事前に全員で確認と許可を取り合ったぐらいだったから(笑)。『THE ANTHEMS』以降、この3バンドが一緒になるときは、タイミングを選ぼう、会場も選ぼうって、それぐらいこだわってやってきたんです。フェスやイベントで複数のバンドがいて、その中に3バンドが入るってのはありですけどね。それだけ、この3バンドでやるときは自分たちもいっぱい夢を見てるんですよ(笑)。

──このタイミングでの『THE LAST ANTHEMS』リリースにも意味がありそうですね。

SUGA:<ロコダスト6 2021>のときも、今回のスプリットアルバムについては、具体的にいつやるかってことまで決めてなかったよね。

──なるほど。お互い連絡を頻繁に取り合いながら、徐々に『THE LAST ANTHEMS』の制作が決定したわけですか。スプリットアルバムに向けて曲を作ろうと思ったとき、普段とは曲への構え方や軸足なども変わりました? 歌詞も読ませていただきましたが、“はぁー! なるほど”と思ったんです。

SUGA:この3バンドで作る作品だから、どうしようかってメンバー内で話しましたね。もちろん自分たちらしさを出すのが一番のテーマですけど、自分らのアルバムを作るのとは別な感じで、話し合いをして曲を作りました、僕らは。ただ、それがなかなかできなくて(笑)。

木下:僕らもそう。自分たちの単独音源を作るのとは別の神経を使いましたね。なかなかないご褒美だと思って。“2バンドがどんな曲を持ってくるんだろう?”っていうワクワクもありました。

HATANO:勝手にプレッシャーを感じるんですよ。アルバムの9分の3は自分たちが持っていく曲だから、それは当然知ってるけど、あとの9分の6は分からない。それを楽しんでいるんだけど、自分たちの提示する9分の3が、9分の6の流れをちゃんと活かせる曲になっていたらいいよな…とか、そういう思いを勝手に抱くからプレッシャーになるんですよ(笑)。だけど、それがやりがい。プレッシャー=やりがい。どっちも素晴らしい。もう作り終えたから、そんなこと言えるんですけどね(笑)。

SUGA:そうだよね(笑)。やっている最中は、本当にできるのかよ?って(笑)。それぞれ個々にツアーをやっていたりしてたんで。

HATANO:今年1月、ツアーの合間に録りもやっていたんで。マジでできるのか?って、震えるぐらいのスケジュール(笑)。

──レコーディングは本当に最近なんですね。

HATANO:そう。

■別々に作った曲なのにストーリーがある■それって奇跡じゃないですか

──楽曲それぞれのテーマは違うと思いますが、歌詞の中身が相手に対しての手紙とか、頑張れエールも見え隠れする挑発にも感じられたんです。オーディエンスに対してというよりも、まずメッセージを向けたいのが、お互いのバンドのような。

HATANO:そんな美しい余裕はあったのか(笑)?

木下:まあ、でも意識するところはあるんじゃないですかね。仲間に向けてという意味では、どうしたって一番近い仲間を意識するだろうし、思い浮かべもするから。愛だ恋だというところも少なからず育んできた間柄というか、惚れた腫れたの感情だけではない愛を知る年齢になりましたから。俺も全曲の歌詞を読みましたけど、やっぱり20代や30代の頃とは違う歌詞を書くようになってるなと思う。年代が一緒だからこそ、ストレートに響くし(笑)。それが手紙かどうかは分からないですけど、バトンの受け渡しはしていると思いますね。

SUGA:僕は、いつも言葉遊びみたいな感じで作詞しているんですよ。語呂のいい言葉を、まずパズルみたいにハメていく。でも、そのときの感情はやっぱり入りますからね。制作期間にメンバーや仲間と話したことや、その時期に感じたものが自然に反映されると思います。

──再び3組が音源に集まったわけですが、目指す景色や方向も11年前とはまるで変わりました?

HATANO:そうですね。バンドはいつまでも続くものではないって理解できたんです。でも、続いているからおもしろい。続かないってことが理解できたから、初めて続いているってことに価値を見い出せたんです。放っておいても続くと思ってたときは、続いてることの凄さが分からないじゃないですか。ところが、いつか途切れちゃうかもってのがリアルにいる、それも自分たちのすぐそばに。だからおもしろいし、なくしたくないものは必死にやるんですよ。

▲木下正行(Vo, B / locofrank)
──HAWAIIAN6の「No Age」はそういったメッセージも入っていると感じました。

HATANO:そうなんですか(笑)。俺の考えですけど、曲というものは弾き語りできるべきだと思っていて。もともとそういう作り方でやってきたんですよ、HAWAIIAN6は。今回、「No Age」だけは俺がオケを作って、メロディのイメージは(安野)勇太に任せて。自分にはメロディのイメージもあったんですけど、今回は合作みたいにやってみようと思ったんです。

──それはどうして?

HATANO:『SOULS』(2002年8月発表)を作ってた頃は、メロディは全部俺が決めてたんですよね。でも、今は今で、今の自分らの作り方でいいんじゃないかなと思ったんです。足りなかった自分たちも含めて、これが今の自分たちなんですよ。目指すべきものがあと二歩先にあるなら、何ヵ月何年掛かるか分からないけど、そこまで行ってみたらいい。そこまで辿り着けなかったとしても、自分たちの気持ちさえ途切れなければ、バンドはいくらでも変わっていけるし、いくらでも成長できるから。全てが通過点だし、全てにワクワクしているんです。

──dustboxは楽曲アレンジ面で、あまり型にはまらない感じですよ。

SUGA:自由になりましたね。作曲にメンバーみんなの意見がしっかり入ったのがでかいと思うんです。今回、3曲に入魂ってことで、みんなでこねくり回したというか。

──アレンジ面での合作なんですね。

SUGA:どれだけ熱量を込められるかって、曲構成もしっかり話し合って作ったんです。気合い入ってましたね。作ってるときは大変だなって思ってましたけど、作り終えた今、苦悩したのも楽しかったなっていう。

──結果、dustboxの新たな一面がかたちになりましたよね、「Contrast」とか。で、バンドをやめる気持ちを最終的に止めたのが、森 勇介さんの「隣で歌っていてほしい」という言葉だったという話があったlocofrankですが、バンド感の高さが感じられる仕上がりだと思いました。

木下:新しいドラムの横川慎太郎も加入して、今回ひとり1曲ずつ作ったんですよ。歌詞もひとり1曲ずつ書いて。だから3曲3様になったと思うんです。新しくドラムが入って、まず必要というか必然だったのが、みんなのベクトルを一緒にするっていう作業で。どういう気持ちで歌っているのかとか、そういう意識の共有ができたときの曲作りでもあったんです、今回は。いいタイミングでの『THE LAST ANTHEMS』だったなと。

──バンドのキャリアが長くなると、腹を割って話をするってことを、ついつい忘れがちいになりますからね。

木下:言わなくても分かるだろ、みたいなね。キャリアが長くなると、自然に阿吽の呼吸が出来上がっていくものですから。でも俺たちは、一度それが許されない状況にもなったので。「バンドを新しく組みました」と言っても過言ではなかったから。バンドを始め立ての頃のような感じで、メンバー全員でひとつのことに立ち向かえるってのは、おもしれえなって思いますね。

──では、お互いの曲を聴いてみて、いかがでした?

木下:感じたことは一緒だと思うんですけど、蓋を開けてみたら、それぞれがそれぞれの色をちゃんと出しているって思いましたね。いいアルバムができたと思っているし、ずっと聴いていられるんですよ。完成前はワクワクと不安が入り混じっている感じでしたけど、今は“ほらー! できたやろ!!”みたいな気持ち。期待以上の仕上がりで、HAWAIIAN6とdustboxの曲を聴いたら、やっぱり良かったですね。

SUGA:改めて、このバンドたちとアルバムを作って良かったなと思う。聴いたときに“ウワ〜ッ、これだよこれ!”って思ったんで。悔しいと思う部分もあったり、純粋にいい曲だなと思ったり。“できねえとか言ってたくせに、いい曲を作りやがったな”と(笑)。

HATANO:1枚のアルバムとして、いいものができたなと思いました。続けて聴いていったときに、いいアルバムだなと素直に思えたんで。

SUGA:最初に各バンドごとに3曲ずつ聴いたんですね。そのあとに、スプリットアルバムの曲順どおりに9曲を聴くと、曲の印象がまた違って聴こえるんですよ。

──ストーリーが見えてくる曲順になっていますからね。

HATANO:それは意図してないけどね(笑)。

SUGA:でも、すげーおもしろかったです。何回も聴いちゃいましたから。

▲HATANO (Dr / HAWAIIAN6)
──4月25日から全7公演のツアー<THE LAST ANTHEMS TOUR>もスタートしますが?

HATANO:楽しみですね。自分たちが望む場所があって、ライブ開催を望んでくれる人たちがいて、こんな幸せなことはねえだろって、素直に思えるんですよ。初日がどうとか、ツアーファイナルがどうとかではなく、ライブ1本1本が最初で最後。何本目って考え方は昔から好きじゃないんですよ。1分の1を何回繰り返すかっていう。この歳になっても変わらずやれたらいいなってだけですね。

SUGA:いい作品ができたと思うんで。ここからお楽しみがいっぱいあるし、来てくれるお客さんも楽しみにしていてほしい。

──11年前のツアー<locofrank HAWAIIAN6 dustbox ZEPP TOUR 2013>とは雰囲気もまた変わるんでしょうね。

HATANO:11年前と比べて、演者のジャンプが低くなってる(笑)。同じようにお客さんも飛べなくなってますから(笑)。

──よくないな、言ってることが(笑)。

木下:肩も上がらなくなってます(笑)。

HATANO:その生々しさがいいんです。お互いに歳を取っても、まだ同じものに夢中になれている。いいことじゃないですか。いくつになってもあの当時のようなワーッという気持ちで会場にいてくれたら、それでいいんじゃないですか。ただ、あまりムチャをすると関節を痛めるぞっていう(笑)。

木下:こんな時代に、3バンドが集まってアイテムを出すわけですけど、1枚目を持っている人はCD盤を並べて、これが2作目かってことを味わってほしい。家で盤をわざわざデッキに入れて聴いてほしい。俺らが憧れていたあの時代のワクワク感…1回目は聴き流して、2回目は歌詞を読みながら聴いて、3回目は噛みしめて、みたいな。なんとも言えない時間を楽しんでほしいな。

SUGA:曲順もみんなで考えたし。アルバムにストーリーがある。それって奇跡じゃないですか。別々に作った曲なのに、全部が集まったときにストーリーも生まれるって。歌詞を読みながらゆっくり味わってほしいですね。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎野村雄治

■locofrank × HAWAIIAN6 × dustbox『THE LAST ANTHEMS』

2024年4月17日(水)発売
【CD】 XQDB-1027 ¥3,000(+Tax)
Released by IKKI NOT DEAD
1. If / locofrank
2. Contrast / dustbox
3. No Age / HAWAIIAN6
4. Ephemeral Magic / locofrank
5. Curse / dustbox
6. Ballad Of The Setting sun / HAWAIIAN6
7. Daybreak / dustbox
8. Reborn / locofrank
9. The Ocean / HAWAIIAN6

■ツアー<THE LAST ANTHEMS TOUR>

4月25日(木) 渋谷 Spotify O-WEST
5月10日(金) 名古屋 CLUB QUATTRO
5月12日(日) 大阪 Yogibo MRTA VALLEY
5月14日(火) 福岡 BEAT STATION
5月21日(火) 札幌 cube garden
5月24日(金) 仙台 Rensa
5月29日(水) 東京 Zepp DiverCity(Tokyo)

■locofrank × HAWAIIAN6 × dustbox 直筆サイン入りチェキ プレゼントキャンペーン概要

【応募資格】
・日本国内にお住まいの方
・X (Twitter)アカウントをお持ちの方
・BARKS編集部 X (Twitter)アカウントから投稿される応募用のポストをキャンペーン期間内にリポストした方
※必ずご自身のアカウントを“公開”にした状態でご参加ください。アカウントが非公開の場合は参加とみなされません。
※ダイレクトメッセージを受信拒否設定している場合、参加とみなされません。
【賞品名・当選人数】
・locofrank × HAWAIIAN6 × dustbox 直筆サイン入りチェキ
・2名様
【応募方法】
1. BARKS編集部 X (Twitter)アカウント「@barks_news」をフォローしてください。
2. BARKS編集部 X (Twitter)アカウントから下記キャンペーン期間中に投稿されるキャンペーン応募用の投稿をリポストしてください。
3. 上記で応募は完了となります。
※フォローを外すと応募権利がなくなりますのでご注意下さい。
【応募期間】
2024年4月18日(木)~2024年5月18日(土)23:59まで
※上記期間内にされたリポストが応募対象です。
【当選発表】
・X (Twitter) DMにて当選のご連絡と専用フォームのURLをお送り致します。
・専用フォームで必要事項を入力ください。
【賞品発送】
・配送は国内のみ、賞品は2024年6月中旬に発送予定です。
※やむを得ない事情により賞品の発送が若干遅れる場合がありますので予めご了承ください。
※ 以下のような場合には、ご当選の権利を無効とさせていただきます。
1. ご住所入力の不備により、賞品がお届けできない場合。
2. ご不在などにより、運送会社での保有期間を超えて賞品をお届けできなかった場合。
【ご注意事項】
・転売 (不特定多数への転売、オークションなどを含む)目的でのご応募は、ご遠慮願います。
【個人情報取扱い】
・お客様からいただいた個人情報は、賞品の発送及び、サービスの開発や、個人を特定しない統計資料、当該プレゼント/モニタにおける商品の発送、及びそれにまつわるサポートのために利用いたします。上記以外の目的で個人情報を利用する場合は、予めその目的を明示し、お客様の同意を頂いた場合のみ、個人情報を利用いたします。
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関連リンク

◆THE LAST ANTHEMS 特設サイト
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