万博へ「遠足」 交通・昼食・パビリオン予約など「あまりにも雑」と学校現場から不安の声 「未来社会を作る子どもたちに見てもらいたい」と吉村知事は言うが…

2025年の大阪・関西万博では、子どもたちを無料で招待する計画があるのだが、これを巡って、学校現場で波紋が広がっている。

ことの発端は、2023年8月、大阪府の吉村知事の発言。

大阪府 吉村洋文知事:こんな未来社会を作っていくんだ、ということが、まさに万博。これから未来社会をつくる子どもたちに、ぜひ見てもらいたい。

吉村知事が打ち出したのは、大阪府内の4歳から高校3年生までの子どもたち、100万人あまりを無料で招待する計画だ。

これを受けて、大阪府教育庁は、府内の学校に対して、「遠足」などの形で来場を希望する場合、5月末までに、来場日などを回答するよう求めている。

しかし、大阪府内のある公立小学校の校長は取材に対し、「子供たちが万博に行けたらいいなという気持ちだが、あまりにも雑というか、人集めをしたいとしか思えないようなやり方だ」と話す。

大阪府教育庁が各自治体の教育委員会などに配布した資料では、「どんなパビリオンが団体予約できるのか」という質問に対して、「詳細は未定です。団体パビリオン予約の指定は不可と聞いています」、つまり、学校側からパビリオンの指定はできないと回答している。

パビリオンの展示の内容すらまだ明らかになっていないにも関わらず、来場する希望日を回答せよという教育庁の方針に、校長は、「教育課程上、遠足に行く目的をしっかり持たなといけないため、何を学べるのかも分からない中で回答するのは難しい」と困惑している。

さらに、現場の教員から指摘されているのが、「児童・生徒たちを安全に引率できるのか」という問題。

混雑が予想される会場までの交通手段について、教育庁は、観光バスについては確保台数に限りがあり、特に、開幕から6月までのピーク時は、教育庁が確保する観光バスの台数は1日あたり10台と回答。

バスが割り当てられなかった場合、一般の来場者も利用する大阪メトロの地下鉄かシャトルバスの利用も視野に入れなければならないが、前出の小学校の校長は、「この駅で全員乗せて、この駅で全員降ろすというのが、いつも神経をはりつめるところ。混雑した中では、高学年であっても難しい」と話す。

そして、遠足の楽しみの1つ、「お弁当の時間」にも懸念が。

万博会場には、お弁当を持ち込めるが、屋根付きの休憩所は、小学生優先で人数制限がある。確保できなかった場合、ベンチなどで食べることになるが、大阪府教育庁は、「いずれも予約はできず、また屋根はないと聞いています。雨をしのげる場所はリングの下というご案内になりますが、リング下にベンチ等があるかは不明です」と回答している。

こうした中、大阪府内の教師らでつくる「おまかせHR研究会」は、大阪府教育委員会などに声明を提出。 声明では、万博には賛成でも反対でもないとした上で、無料招待について、「学校に強要するものではないという趣旨を各学校に周知してほしい」「児童や生徒の学びと安全を保障してほしい」と訴えている。

「おまかせHR研究会」に所属する大阪府内の公立中学校の教師は取材に対し、「昼食場所1つとっても、大人数を本当数人の大人で動かすので、入念な下見と調整が本来であれば必要と思うんですけど、その辺をどこまで考えていただいているのか。遠足とは本来、生徒同士の仲を深め、クラス作り、仲間づくりのきっかけになるものだと思っていますが、社会見学のように会場を見て回るだけでは、こうした遠足の役割を果たせないのではないかと懸念しています」と話している。

こうした懸念に対し、大阪府教育庁の担当者は、「懸念の声は真摯に受け止めなければならないと考えている。教育庁としてコントロールできる部分は、スピード感を持って調整したい」としている。

学校現場で波紋が広がっている、万博への子どもたちの無料招待事業。 子供たちにとって実りのある学びの機会になるためにも、大阪府教育庁には、現場の教員の懸念によりそった対応が求められる。

(関西テレビ記者・竹下洋平)

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