[社説]国スポ見直し 負担直視し改革を急げ

 全国知事会長を務める宮城県の村井嘉浩知事が、開催自治体の負担が大きいとして「国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の廃止も一つの考え方」と述べたことをきっかけに、全国の知事から意見が飛び交い、議論が活発化している。

 国体は1946年、戦後の混乱期に国民に勇気や希望を与えようと始まった。スポーツ振興と普及、国民の体力向上や地方文化の発展などが目的だ。

 しかし運営の在り方について長年、自治体から見直しを求める声が出ていた。

 国と日本スポーツ協会、開催自治体の共催とはいえ、費用の8~9割を自治体が担っているのが現状だ。2025年開催予定の滋賀県の総事業費は500億円を超えるとされるが、ほとんどは自治体の税金で賄われる。

 膨大な費用を地元に背負わせるには無理がある。島根県知事が30年の大会開催について「血の小便を出してなんとかやれる」と話すように、知事らの訴えは切実であり、負担軽減へ早急に在り方を見直す必要がある。

 村井知事の発言後、各知事からさまざまな意見が出てきた。廃止に慎重姿勢を示す声のほか「国による人や予算の確保」「複数県でのブロック開催」「式典の簡素化」「複数年に1回の開催」など、大会改革に向けた提案が多い。

 盛山正仁文部科学相や林芳正官房長官も「持続可能な大会に向けて検討を進める」と述べている。知事らの声に真摯(しんし)に耳を傾けてほしい。

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 全国一巡の最後を締めくくった1987年の海邦国体で、沖縄は総合優勝を飾った。各施設の整備や選手・指導者の強化育成が、その後の県内スポーツを支える大きな力となったのも事実だ。

 しかし当時から、国体の肥大化を懸念する声があった。「開催地優勝」のため、他県から有力選手を集める慣習も指摘されていた。

 2002年の高知国体では、当時の橋本大二郎知事が簡素化を打ち出し、既存の施設使用で整備費用を抑えたほか、有力選手も集めなかった。10位の結果でも評価する意見があったものの、その流れは国体改革につながらなかった。

 これまで大会の在り方を内部で議論してきた日本スポーツ協会は、新たな検討部会を立ち上げて幅広く意見交換していく。知事会のアンケート結果も踏まえ、本年度内に新たな方針をまとめる考えだ。

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 国スポに限らず、地域の小さな大会からワールドカップやオリンピックまで、スポーツは多くの人を魅了し、時に勇気を与えてくれる。選手にとっては、努力してつかんだ勝利の喜びや負けた悔しさなど、一つ一つが大切な経験になるはずだ。

 人々の心と体に良い影響を与え、人生を豊かにしてくれるスポーツも、勝利至上主義や国威発揚と極端に結び付けば、本来の目的とはかけ離れたものとなる。

 国スポ2巡目の最後を飾る沖縄大会は34年開催予定だ。議論を深め、改革に取り組まなくてはならない。

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