【社説】愛媛・高知で震度6弱 防災意識、高めなくては

 17日夜に愛媛、高知両県を中心に大きな地震が起きた。今の震度階級になった1996年以降、四国で震度6弱が観測されたのは初めて。広島、山口両県でも沿岸部で震度4を観測し、地震の怖さをまたも認識させられた。

 死者が報告されていないのは不幸中の幸いだが、けが人は多いようだ。規模が同じ程度の余震も起きかねない。警戒を怠らないようにしたい。

 今回の震源は豊後水道で、震源の深さは39キロ。南海トラフ巨大地震の想定震源域内とはいえ、フィリピン海プレート内部で起きており、プレート境界より約10キロ深いなど、発生メカニズムが異なるという。気象庁が「この地震で直接、南海トラフの可能性が高まったとは言えない」と説明したのもうなずける。

 ただ、今回の地震の2時間前にインドネシアで火山が噴火している。台湾でも今月3日に大地震が起きたばかり。フィリピン海プレート周辺だけでなく、地球内部で何か新たな変化が起きているのでは、という不安も感じる。そもそも地震は正確に予知できないものである。

 政府は首相官邸に対策室を設置した。しかし、南海トラフの想定震源内や周辺での地震発生時に臨時開催する有識者の評価検討委員会は見送った。マグニチュード(M)は6・6でM6・8以上の基準値に満たなかったためだが、国民に情報を説明するには、しゃくし定規の感がある。

 私たちが住む地域も2001年に芸予地震、14年には伊予灘地震とM6クラスを経験している。大規模地震に備えた水や食料の確保、携帯トイレや充電器などの準備を、改めて確認しておきたい。

 今回、県内最大の震度4を観測した呉市では民家の古いれんが塀が崩れた。住宅の耐震性強化は一定に進んでいるが、安全基準を満たさないままの塀が全国各地に放置されている現状は改善すべきだ。

 災害時を想定したボランティアの受け入れ準備も心もとない。市町や社会福祉協議会が民間組織と連携して、支援を受ける態勢づくりが急がれよう。

 大地震の震源に近い原発の安全性確保には不安が募る。今回の震源地に近い四国電力伊方原発では、地震の影響で蒸気の水分を除去する加熱器のタンク弁が不調になった。四国電は発電機の出力が約2%低下したものの運転に支障はないと説明している。

 ただ、豊後水道に近い山口県上関町には原発や使用済み核燃料の中間貯蔵施設の計画がある。同町の離島の八島は伊方原発30キロ圏だ。地震の影響や発生時のトラブル公表に消極的な態度は許されない。

 石川県の北陸電力志賀原発では、能登半島地震の影響で原子炉圧力容器下部にある制御棒関連の部品が脱落していたことも判明した。運転停止中で北陸電は「安全に影響はない」としたが、不具合の判明は3月の点検である。

 それがおとといの原子力規制委員会の会合まで報告されなかったことは不誠実だ。原発を抱える電力各社は肝に銘じるべきだろう。

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